孤児院訪問
3学期が始まって最初の生徒会主催行事である。
これは、市内に4箇所ある孤児院を2班に分かれて2日かけて訪問するというものだ。
生徒会役員は引率で、これに1・2年生の希望者が参加する。
内容は子供の世話や昼食などの手伝いなど、いろいろである。
私の方にはいつものニコラス君とドウェイン君がいて、これに14名の生徒がいる。
もう一班はオリヴィア先輩やローランド殿下ら4名が16名の生徒達を引率して、別の地区の孤児院を訪問中である。
「ここが一番大きな孤児院だよね。」
「毎年、生徒会長はここに来るって話だったよな。」
「すごく多いけど、何人いるんだろうね。」
「乳幼児から12才まで、164人との事ですわ。」
「ところで、縦ロールはこんな所に来て何の役に立つんだ?」
「高貴な者の義務ですのよ。それにこう見えて私、幼い頃より慈善活動の経験は豊富なの。」
「さっき聖女様と並んでたが、ニセモノ感がハンパなかったけどな。」
「あら、節穴なのに、何が見えたのかしらね。」
「まあまあ、子供たちの前なのでその辺にしませんか。」
何でこの二人をセットにしたんだろう・・・
取りあえず、昼食準備に5名ほど行かせ、残るメンバーで子供の面倒を見る。
「ほら、良い子はあんな危ないおじさんに近付いてはいけませんことよ。」
「おじちゃんかおがこわい~!」
「ほら見てみろ。あのババァ、頭にウンコを二つ付けてるぞ。」
「ウンコ!ウンコ!」
「まあ!お下劣極まりありませんわね。貴族ならせめて伏せ字にしていただきたいものですわ!」
子供ってこういうネタ好きだよね。
「でも、お二人は本当に仲が良いように見えますが。」
「この者は私とミッチェル殿下の恋路を邪魔する下劣な輩に過ぎませんわ。」
「でも正直、殿下より似合ってるように見えます。」
「おいドウェイン。俺はジュリア-ナ一筋だって言ってるじゃねえか。」
「だって僕、会ったこと無いし・・・」
「俺も一度しか会ったこと無いけどな。」
「しかし、ゴールドバーグ嬢がこれほど面倒見が良いとは意外でした。」
「まあ、殿下まで私の事をそのように見ておられたのですか?」
「コイツは性格こそいろいろアレだが、取り巻きの多さは伊達じゃないと思うぜ。」
「まあ、珍しいこと。」
「ニコラス君はいつも忖度しないからね。」
「そうさ。そのウンコも含めて正直な感想だぜ。」
「やっぱり取り消しますわ・・・」
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アタシの立場上、孤児院訪問だけは参加せざるを得なかった訳だけど・・・
「やあウォルフォード嬢、お近づきになれる機会をいただけて光栄だよ。」
「あの、慈善活動ですので、そういうのはちょっと・・・」
何で軽薄王子と一緒なのかなあ・・・
まあ、正統派王子に近付いた途端、過酷な運命が待ち受けてるけど・・・
「まあそう邪険にしなくてもいいんじゃない?俺は女性には優しいんだから、そんなに警戒する必要は無いさ。」
いやむしろ、何故みんなコイツに警戒心持たないのか、そっちの方が不思議よ。
「殿下、私は調理のお手伝いをしますので、これにて失礼いたします。」
「いや、俺も調理担当なんだよね。」
「殿下ができるのですか?」
「ああ、アウトドア全般得意だからな。任せとけ。」
しまった。裏を搔いたと思ったんだけど・・・
「ほう。聖女様って意外に包丁の使い方上手いじゃないか。」
「元平民ですので。」
「ルシアさん。私もマリリンも限りなく平民に近い立場だけど、殿下は身分で人を区別しないの。そこは、分かってあげて欲しいの。」
知ってる。コイツの価値観、見た目全フリだよね。
「でも、殿下はいつも沢山のご令嬢方を侍らせておりますよね。それは男性として不誠実なのではないでしょうか。」
「何だ、聖女様はそんなことを気にしているのか。友愛だよ。」
下心だよ・・・
「友愛を説くなら、殿下の周囲にもっと男子生徒がいてもいいと思うんですが。」
「もちろん俺は来る者を拒みはしないさ。だからミッチェル殿下やニコラスなんかとはよくつるんでる。他の男子が寄ってこない理由なんて知らねえよ。」
どうしてアタシが悪い雰囲気になってるのかわかんないけど、かなり嫌な気分になりながらも、昼食を調理し、子供たちとともにいただく。
「おうじさま、とってもおいしいよ!」
「ありがとう、おうじさま。」
「おお、偉いな。沢山食べて早く大きく、強くなれよ。」
「うん、大きくなる。」
「くまさんに負けない!」
「子供には好かれるのね。」
「女性にもな。バレッタの王族はそういったことを重視する。」
「そうやって沢山のご令嬢をたらし込むのね。」
「別にたらし込んでるつもりはないぜ。」
「どうだかねぇ・・・」
まあ、無理矢理襲ってる訳じゃ無いみたいだから、Jよりはマシだと思うけどねえ・・