学期末試験、再び
季節はもう12月。
年末は学校も城でも何かと忙しいが、まずは勉学である。
もちろん、こちらもそこそこはやっているつもりだが、せめて5番以内にはいたい。
そして今日は、試験対策など絶対にしていないであろう、ニコラス君のため、生徒会室で勉強会を開いている。
「みんな済まねえが、俺には向いてねえんだよ。」
「知ってる。でも冬休みも補習なんていやだろ?」
「いや、もういいんだ。」
「ニコラス君、諦めちゃダメだよ。」
「そうだよ。諦めたらそこでノーサイドだよ。」
「ノーサイドならいいんじゃないか?」
「いいけど、まだ始まってもないからね。」
「いや、冬休みは補習でいいよ。」
「ニコラス君、何か元気ないね。」
「ああ、実は冬休みを利用して、ジュリア-ナがこっちに遊びに来る予定だったんだが、この国までの街道の安全が保証できないってんで、来られなくなっちまったんだ。」
「ああ、急に戦争の気配がしてきたもんね。」
そうなのである。
先日のローランド殿下襲撃未遂事件は、大きな波紋を呼んでいるのだ。
特に2度も第一王子が狙われたバレッタ王国の怒りは凄まじく、ウィンスロット王国だけではなくファルテリーニ王国まで巻き込んで、ロフェーデ王国を叩き潰すべきという強硬論が主流になりつつある。
ファルテリーニからここに来るためには、ロフェーデを必ず通ることになるので、ジュリア-ナ嬢が来られなくなったのも無理は無い。
「だからといって、ここで勉強を頑張っておいかないと、来年度はB組になってしまうよ。」
「いや、順当ならDだな。」
「僕、ニコラス君と違うクラスはヤダよ。」
「ドウェインはいいヤツだよな。」
「まあ、いずれにしても諦めるのはまだ早い。」
「とにかく、全教科プラス20点を目指そう。」
「おいおい、100点超えちまうじゃねえか。」
「その半分も超えてないから安心して。」
「前途多難だなあ。」
こうして、神学、地理、歴史を次々に復習していく。
「しかし、50点程度じゃ、Bクラス落ちは間違い無いな。」
「でも、ニコラス君は実技科目がとても優秀だから、まだ望みはあるよ。」
「俺は別にどのクラスでもいいんだぜ。」
「殿下の側近が側にいない訳にはいかないでしょ?」
「心はいつも寄り添ってるぜ。」
「ニコラス君、キモい・・・」
「何言ってるんだ。いつもあなたに心をお届け、っていうのはウチのキャッチフレーズだぞ。」
どこだよ・・・
「まあまあ、先ほどから聞いていれば、粗野で下品なニコラスが無駄な抵抗をしているのですね。」
「黙れババア。」
「ニコラス、見苦しいですわよ。」
「お前はいいよな。何もせず毎日偉そうにふんぞり返ってただけなんだろう?」
「確かに、妾の時代にこの学園はございませんでした。しかし、少なくともあなたよりは努力を怠らず、そして、あなたより勉学の成果を活かした生涯でしたわ。」
「その割に昇天してないじゃないか。」
「まあ!あなただってしていないクセに。」
「俺は珠里亜や和子に会わないといけないからだ。」
そんなにジュリア-ナ嬢に会いたいのか・・・
「ああご先祖様、できれば勉強に集中させていただけると有り難いのですが。」
「馬の耳に念仏とは正にこのことです。無駄な抵抗はお止めなさい。」
「ハッハッハ!念仏と説教は大嫌いだぜ!」
「でも、今のままじゃマズいよね。」
「ヴィヴィアン殿下、ニコラス君の代わりに試験を受けて頂くわけにはいかないでしょうか?」
「ドウェイン君、それって替え玉受験みたいなこと?」
「みたいっていうか、そのものだけど。」
「あなたたち、コレにそれだけの価値があるかどうかは、冷静になって考えた方が良いわね。」
モナ・○○の服を脱がせてたご先祖様に諭されてしまった・・・
「しかし、彼のみならず、国の将来を考えると、ここは頑張り所と存じます。」
「ならば妾がこの者に取り憑いて、24時間強制的に勉強させましょう。」
「殿下、コイツ浄化してもらっていいか?」
「まあまあ、試しに一日だけお願いしてみよう。」
「そうだね。効果があれば続ければいいんだし。」
「おい、他人事だと思って随分思い切るな。」
ご先祖様にお任せした結果、ニコラス君の目の隈は日に日に濃くなり、取り憑かれた雰囲気が良く出てた。
その分、ニコラス君らしからぬ出来ではあったようだ。