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ジェームズ、奮闘する

 さて、僕がジェームズとしてここに来て、もう半年が経っちゃったよね。


 僕はこの超絶イケメンの見た目と教師を勤める魔術のエリートとしてこの世界に降り立った。

 そう、この時代ではかなりハイスペックな部類に入るはずで、確信は無いものの、スペ体質の攻略対象の一人に転生しているはずだ。

 だから、たかちゃんの人生第二ラウンドの成功を全く疑ってなかった。

 ところが、これまでの所、ジェームズはお世辞にもモテているとは言えない。


 確かに、王侯貴族が当たり前にいるこの学校において、子爵家出身で家督を継がないというのは僕の弱点と言えるだろう。でも僕は、教員に採用されるくらいの魔法エリートだし、この年齢ですでに、魔法研究の画期的な論文を発表しているほどなのである。

 魔法界隈では若手のホープなのである。

 それほどのポテンシャルを秘めている僕が今一つ光っていない最大の理由は、ローランド殿下の存在である。


 その身分もそうだが、ジェームズにとって天敵とも言える陽キャで、狙いを付けた生徒は片っ端からかっ攫って行ってしまう。

 今や、学内の女子はあらかたヤツが唾を付けた状態である。

それだけじゃ飽き足らないのか、こないだレイチェル先生まで肩を組んで歩いていた。


 まあ、あんな野放図な悪食が長続きするとは思えないため、ヤツに捨てられた傷心を救済してあげる作戦も有効だろうが、それっていつなのか?


 そんな僕はまだ諦めた訳では無い。

 ただし、学校だけでなく、広く市中にまでその活動範囲を広げ、全方位戦略を採るべきだと考えたのだ。


 やって来たのは繁華街。さすがにここはいつでも人が溢れている。

 今流行のカフェに着くと、何と中からルシアたんが出てきた。隣にいるのはB組のイリア・オズボーン嬢だ。二人ともまだローランドの毒牙にかかっていない、聖域の住人だ。


「おや?ルシア君も今日はお休みなのかい?」

「あっ!先生。こんにちは。では。」

「ああちょっとちょっと!」

「はい。何でございましょう。」

 何か、機械が喋ってるみたいな口調だ。何かヘコむ・・・


「たまには教会のお勤めの無い日もあるんだね。」

「滅多にございません。今日はその滅多にない貴重な一日です。」

「君の光属性魔法を是非研究したいんだけど、付き合ってもらえるかな?」

「私はこれでも一応聖女ですので、お付き合いは無理です。」

 いやいや、それじゃゲームシナリオが成立せんでしょう!


「まあ、付き合うというのは単に研究に時間を割いて欲しいという意味なんだ。」

「少し、考える時間をいただいてもよろしいでしょうか。」

「考える必要があるかなあ。それに冬休みも近いじゃないか。」

「新年は礼拝など、行事が立て込んでおります。」

「そちらのイリア君も同席して構わないんだよ?」

「考えておきます。それでは、失礼いたします。」


 そう言うと、彼女は足早に去ってしまった。

 感触としては全く脈無しだ。

 むしろ、なろう系で言うところの転生者並にヒロインとしての役割を放棄している。

 まあ、かくいう僕だってそうなんだろうと思うから、偉そうなことは言えないけど。


 気を取り直して飲み屋が建ち並ぶエリアに場を移す。

 陽キャとはほど遠いたかちゃんにとって、飲み屋は完全アウェーであるが、もうそんな選り好みをしている場合では無い。

 いやむしろ、こういう所の女性と渡り合うことで、僕自身が成長し、強くなれるのでは無いかと思ったりする。


 まだ、時間的には夕方であるが、比較的高級そうな店に入る。

 店内は典型的な酒場って感じではあるが、昼間からたむろしているようなたちの悪い酔っ払いはいなさそうな店だ。


「あら、初めてのお客様かしら?」

「ええ。」

「何がいいかしら?」

「ホットミルクで。」

 アニメだと、ミルク頼んでる主人公、いたよね。

 カウンターテーブルに肘を突いて、ニヒルな大人を装っていると・・・


「あらお兄さん。お一人かしら。」

「ええ。」

「隣、よろしいかしら?」

「どうぞ。」

「マスター、彼女にいつものを、私から。」

「畏まりましたわ。」

「ありがとう。ジェントル。」

「ジェームズと言います。魔術師です。」

「まあ、軍人さん。どうりでこの時間なのにと思いましたわ。私はエリー。夜の街の住人よ。」

「これはこれは、エリー嬢。よろしく。」

 さすがは夜の街だ。もちろんたかちゃん未体験ゾーンではあるが、それを含めての全方位戦略だ。

 それに、大人の余裕とは、こういった女性との経験から得られるものも多いはずだ。


「ジェームズ様はとても目力が強くて素敵だと思います。」

「いや、それほどでも無いよ。」

「それに、かなりお若いですよね。」

「まあ、まだまだ青二才ですよ。」

「そろそろ外も暗くなりますわ。」

「じゃあ、ミルクの時間は終わりかな?」

「お付き合いいただけます?」

「ええもちろん、私でよろしければ。」


 ほら、ローランドのヤツがいなければざっとこんなものなのだ。

 この後、シンディとヒラリーという二人の常連客も加わり、たちまち両手に花となった。

 そして、三人で朝まで過ごし、大人の階段を4階くらいまで昇った。


 やはり、あの学校がちょっとアレだった訳である。


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