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美術室の怪

 最近、乗りに乗っている生徒会は、残る七不思議の解明にも力を注いでいく。

 残る三つの謎のうち、安全性を考慮して美術室を片付けることとした。


 ミントやテンコーに聞いたが、美術室にも間違い無く何かいるらしい。

 動く肖像画とは、世界的に余りにも有名な「あの御方」が描いた「あの御方」である。

 そして、夜でなくとも平気で動くそうだから、私たちは放課後の美術室にいる。



「今まで襲われたって話は無いんだよね。」

「聞いた事はありませんわ。」

「でもさあ、ミントやテンコーが何かいるって言ってるのなら、もうそれを公式見解にしても良いんじゃ無いか。」

「動く肖像画は確かにありましたって事を認めるんだね。」

「ああ、被害が出てないのなら、それでいいじゃないか。」

「そうだね。すでに人体模型が動いたのを見た後で、今さら絵の中の人物に動かれても、インパクトは無いね。」

「これを一番最初に調査するべきだったね。」

「じゃあ、調査終了するか。」

 私たちが美術室を出ようとすると。


「そこの痴れ者、待たれよ。」

「おっ?出やがったか?」

「先ほどから聞いておれば妾を馬鹿にしおって。」

 どうやら女性のようだ。

 さすがにもう幽霊に慣れたか、ドウェイン君ですら落ち着いている。


「妾って何だよ。それに言葉すら分からねえ。」

「別にそなたのような無教養な者との会話など、望んではおらぬ。」

「お~ホッホッホ! あなた、私と気が合いますわね。」

 いつの間にか私たちも多士済々になったもんだ。


「私の名はキャロライン・ゴールドバーグ。侯爵家の者よ。そして、こちらにおわすは第一王子のミッチェル殿下、そしてこちらがバレッタ王国第一王子、ローランド殿下であらせられるわよ。」

「なるほど、妾の名はヴィヴィアン・アーネット。そこのミッチェルは確か、5代後の子孫かの?」

「そう、なのですね。」

「信じられぬなら、後で系図を確認してみると良い。6代王ジョンの王妃こそ妾じゃ。」

「ああ、ケチなやつか。」

「此奴、先ほどから不敬よのう。」


「この山賊みたいな男はニコラス・ラトリッジ。一応、この国の宰相のご子息ですわ。」

「ああ、あの生意気なチビ眼鏡の子孫か。態度だけは随分デカくなったのじゃな。」

「口の減らねえ婆さんだな。」

「お黙りなさい。ミッチェル、成敗なさい。」

「私の側近なのですが・・・」

「あら、随分平和な国になったものね。でも、王になるつもりがあるなら、人付き合いはもう少し考えた方がいいわね。」

「ニコラスは大変良き者でございます。」

「馭者くらいなら、そう言えるかも知れませんわね。」

「さすが良くお分かりで。うちのチビ眼鏡にも一言言ってやって欲しいものです。」


「ところでご先祖様。何故こちらにおられるのでしょう。」

「暇だったのです。ここにはエリック・アッシャーもおりましたので、暇つぶしに丁度いいと思ったのよ。」

「エリック氏とはどのような方でしょうか。」

「ここの初代校長よ。私の教え子なのよ。」

「・・・あの、もうここにいないんですけど・・・」

「あら、この学校をずっと見守るなんて大きなことを言ってたのに、口ほどにもありませんね。」

 良かった。事なきを得そうだ。


「それと、知らぬこととは言え、大変失礼な言動をしてしまい、誠に申し訳ございません。」

「まあ、それについては謝罪を受けますが、以後、注意するように。」

「はい。」

「それと、何やらインパクトが小さいと言っておりましたが、これも訂正しなさい。」

「はい。訂正いたします。」

「ところでヴィヴィアン。その絵でできる事ってどんなことなんだ?」

「ニコラス君。一応丁寧モードで喋った方がいいよ。」

「いざとなれば聖女様呼べばいいんだから、いいじゃねえか。」

「成仏させるのは、いや?いいのか・・・」

「そこで何をゴチャゴチャ言っているのですか。よろしい、では見せてしんぜよう。驚くなかれ!」


 ご先祖様は「あの御方」をウィンクさせたり、走ってフレームアウトさせたり、服をはだけてセクシーポーズを決めてくれたりした。


「どう?絵画をここまで操る技術は他の低俗な者とは一線を画してるでしょ?」

「確かにそうだが、俺はテンコーの方が凄いと思うぞ。」

「僕をそこまで評価してくれてありがとう。」

「お前ならこの女を鎖で拘束できるんじゃないか?」

「できるよ。でも、公序良俗に反する絵になるよね。」

「インパクトあるな。」

「まあ!失礼な!じゃあ、試してご覧なさい!」

 というと、「あの御方」は高笑いをしつつ絵の奥に駆けだす。

 しかし、テンコーが出した蔓が彼女の足首に巻き付き、もんどり打って派手にコケた。


「な、何と言う陰湿なワザを!」

「女性や小さなお子様に十分な配慮はしたはずだが?」

「ご夫人の足を引っかけておいて言う言葉ではありません!」

「テンコー、確かにお年寄りは労る必要があったな。」

「そこは反省します・・・」

「若き王妃に向かって年寄りとは失礼な!」

「何百年前だよ!」


 こうして不毛な口論は日が暮れるまで続いた。

 その上、テンコーの弟子になることが決まり、またしても生徒会室の住人が増えてしまった。


 誰だよ、インパクト無いなんて言ったの、あれさえ言わなければ・・・


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