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これも青春の1ページ

「あ~あ、文化祭はいいけど、演劇なんてかったるいなあ。」

つい本音が口を突く。


 本当はイリアちゃんたちとお店巡りしたりお化け屋敷入ったりしたいのに、こんなお遊戯会みたいなことしなくちゃいけないなんて。

 誰よ、演劇を提案したの・・・


 演目は超有名なミュージカル「バラックのバラ」、通称バラバラ。

 男装の麗人と幼なじみたちを中心に繰り広げられる、切なくドラマチックな悲劇ね。


 でも、王妃マリーがゴールドバーグ様っていうのは絶妙なキャスティングだけど、後は何?ジェニファーは王妃の従者だし、殿下たちが生徒会でいないから、主要キャストはモブオールスターズよ。

 まあ、アタシだってチョイ役の革命戦士だから、エラそうなことは言えないけど・・・


 ちなみに、ストーリーは詳しく無いけど流れは何となく知ってるつもりよ。

 そして幕は上がる・・・



「私は何故、顔も知らない殿下と結婚しなくてはならないのかしら?見知った殿下は二人もおりますのに。」

 うん?そんな台詞だっけ?

「ウィンスロット、バレッタともに高貴な私に釣り合う大国なのに、たかがフランスごとき小国、どこかの公爵令嬢で十分でございますわ。ねえ、ジェニファー?」

 アンタ侯爵令嬢でしょうに・・・


「畏れながら、フランスも十分な大国かと存じます。」

「まああなたならさしずめ、ヤシの木が生えているような島の部族で十分ですわね。」

 何の話?

 ここで一旦幕が閉じて、場面が変わる。

 何とかフランスに嫁いではくれたみたい・・・


「まあ、この国には女性騎士がおりますのね。」

「お初にお目に掛かります殿下。私は近衛のカミラ・ド・エルドリッジでございます。」

 ああ、権利者の許諾を得てないのね・・・まあ、無理よね。

 そして、運命の舞踏会のシーン・・・


「そちらの麗しい殿方はどなたかしら?」

「妃殿下にお会いできて光栄でございます。私はハンス・フォン・フェルゼン。スウェーデンで伯爵位を持つ者でございます。」

「まあ!そうでしたの。でも、伯爵位では高貴な私の愛人にしかなれませんわね・・・そうですわ!カミラ!あなた、この方と結婚なさい!」

「あの、妃殿下・・・」

「このカミラはこう見えて女性です。それに伯爵家の出身。丁度釣り合いますわ。」

「殿下のお心のままに。」

「あの、カミラ殿はそれでよろしいのでしょうか・・・」

「妃殿下のお心は自由でございます。」

 何か、違う・・・

 そして舞台は代わって近衛士官の詰所。


「カミラ、どうして・・・」

 ヤケ酒をあおるアンドリュー


「私たちの人生は、他の誰かの物語によって変わる。おお‼︎いっそこの胸をえぐりとってくれ‼︎」

 そこに入ってくるカミラ。

「おい、アンドリュー!貴様の酒癖の悪さ・・・おい、これ以上飲むな!!飲むなアンドリュー‼︎飲むな〜っ‼︎」

 いや、いくら何でもそんなシーン無いでしょ・・・


 そして、舞台は変わってアンドリューが下町に繰り出し、そこで民衆の苦しみを知り、仲間を募って革命を起こそうという流れになる。

 長く待たされたけど、やっとアタシの出番ね。


「私たちはどんな困難にも立ち向かう力を持っている。しかも私はもう何も失う物がない。やられたらやり返す、破れかぶれだ!」

「おう!」



 そして宮殿内での戦闘シーン。

 かつての同僚を容赦無く斬り捨てていくアンドリュー。

 そしてついに玉座の間に国王夫妻、カミラ、フェルゼン伯爵ほか貴族たちを追い詰めた。


「上級国民の諸君。君たちはすでに包囲されている。大人しく抵抗を止めなさい。」

「アンドリュー・・・あなた、何故・・・」

「八つ当たりだ!」

「あら、よく見たらあなた、カミラの従者じゃありませんこと。どうしてこのような乱暴狼藉が働けるのかしら?」

「民が王家に抑圧されていることに深い憤りを感じたのだ。多くの民は困窮の中で今日のパンすら無い!」

「あら、パンが無いならケーキを皆さんに差し上げますわ。ゴールドバーグの財力を侮らないでくれるかしら。」

「し、しかし、浪費と失政の責任は取るべきでは無いか!」

「そうですわね。高貴な身分である以上、その責任から逃げる訳にはまいりませんね。」

「そうだそうだ!そのとおりだ!」

 アタシの台詞、これだけ・・・


「ではボージャック侯爵夫人これへ。」

 一人のご夫人が引き出されてくる。


「民の血税を浪費し、王家に責任をなすりつけたのは全て彼女です。彼女に責任を取らせます。」

 いやいや、最高責任者に責任がなくなっちゃったよ・・・


「では、彼女を処刑してもよろしいでしょうか。」

「それは・・・そうですわ!あなたたち二人、結婚しなさい!アンドリューもロレッタも子爵家ですから釣り合いますし、彼女は私の遠縁ですわ。」

 いや、ボージャック夫人役のロレッタさんは確かに子爵令嬢だけど、アンドリュー君は名前が同じなだけで配役された犠牲者だからね!


「あ、あの、いえ・・・分かりました・・・」

「お嬢様の仰せのままに・・・」

「これで一件落着ですわよ!オ~ホッホッホ!」

「あの、妃殿下。一つだけよろしいでしょうか。」

「何ですの?フェルゼン伯爵」

「それがし、別にカミラ殿のこと、何とも思っていないのですが・・・」

「まあ!愛してもいないのに 危うく結婚させてしまうところでしたわ。フェルゼン、ごめんなさいね。じゃあカミラ、彼と別れなさい。」

「はい。全てはマリー様のお心のままに。」

 うわぁ、結局みんなバラバラだよ・・・

 こうしてクラスに一組のカップルが誕生して舞台は幕は閉じた。


「それにしても凄かったね。先が読めなくて驚愕の連続だったよ。」

「そ、そうだね・・・常識ある人からすればそうだよね・・・」

 そりゃ、台本を忠実に演じてた人とクラスの力関係を振りかざしてる人が混在してるんだもん。

 最後はみんなほぼ、アドリブだったし・・・


「ルシアちゃん、明日も頑張ってね。」

「うん、アタシは大丈夫なはずだけど・・・」

 きっと明日は明日の風が吹く。

 いや、絶対に同じ日は訪れない。

 何か公開お見合いみたいな流れになったけど、ゴールドバーグ様ってまさにあれ、ボージャックブジンね・・・


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/ 


 何とか事故もなく無事に二日間の日程を終えた。

 私は生徒会メンバーと共に最後の花火を見上げている。


「みんな、いい思い出づくりができたかな。」

「少なくともドウェインの顔は明るいな。」

「殿下、ニコラス君、ありがとう。」

「アナベルさんも来年からよろしくね。」

「はい。」

「ミントもテンコーもご機嫌じゃ無いか。」

「そうだね。不祥事スレスレの事件はあったけど、概ね上手くいったよ。」

「毎日やりた~い!」

「来年はみんなをもっと驚かせるように頑張ろう。」


 これも、青春の1ページ。


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