表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/128

新入生チェック

 さて、入学式も終わり、新入生たちはそれぞれ帰宅、あるいは寄宿舎に帰るのだが、ここで新たに入った人材をチェックしないといけない。


 午後からは在校生の始業式があるが、若手でまだクラス担任ではない僕には、比較的時間の余裕があるのだ。

 もちろん、他の教員に見つかるとパシリと化してしまうが。


「いいねえいいねえ。アニメでないのが惜しいくらいみんな可愛いねえ。グフッ、グフッ・・・」

 校舎から出てくる女子生徒を、近くの木にもたれかかって観察する。

 前世の僕なら不審者だが、超絶イケメンの今なら涼しげな魅惑の大人だ。

 そう思って眺めていたら、いましたよ、ピンクブロンドの女の子が。


 ええ分かりますよ。

 きっとあの子がスペ体質のヒロインでしょう。

 彼女が王子様ルートに入るなら、さすがに分が悪いですが今日は初日。

 まだ僕にもチャンスはあるはず。


 そう思うけど、なかなか声をかける決心がつかない。

 超絶イケメンにジョブチェンジしても、中身はただのオタク大学生に過ぎないのだ。


 そうしているうちに、残念ながら彼女はどこかに去ってしまった。

「まあ、まだチャンスはあるさ。他に有望な子を探さないとね。」

 僕はそのまま一年生の教室がある方向を目指す。

 これでも一応教師なんだから、怪しくは見えてないと思う。

「まあ、推定ヒロインちゃんを除けば、ハイレベルながら、どんぐりの背比べかな。」

 

 むしろ、ある程度顔の造形や髪型がパターン化されているようで、アニメならともかく、実写でこれは違和感というか、不気味さすら感じてくる。

 そりゃ、モブなんだから仕方無いんだろうけど・・・


「不気味の谷だっけ?それは慣れて行くしか無いね。」

 そう、この世界に身を置いてすぐに感じた違和感。でも、乗り越えられると思っている。

 僕にとっての彼女たちは3Dではなく生身の人間なんだから。


「それに、在校生だって僕のうっすらした記憶の中だけの情報だからね。併せてチェックだね。」

 一通り校舎を徘徊した僕は、始業式のため、大講堂に向かう。


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 さて、俺は今中庭の噴水前にいる。

 何か知らねえけど、ここに来るといいことがあるような気がしたんだ。

 特にはっきりとした理由は無い。


 目の前には、これから在校生の始業式があるらしく、多くの先輩方が中庭を歩いている。

 いいねえ、この眺め。


 さて、とにかく誰でもレベル高いんだから、声かけてみようと立ち上がった時に異変を感じた。

 足が動かないし声も出ない。一体、何が起こっちまったっていうんだ。


 そして、新入生は帰宅し、在校生が始業式を行っている間、俺様は動かない足と格闘する羽目になった。


 こう言っては何だが、俺の故郷バレッタは別名魔法大国と呼ばれる国で、俺だってそこそこの実力を誇る魔術師だ。

 でも、この状況を打開する策を知らないし、この力が魔力なのかどうかも分からない。

 場合によっては、俺を狙った暗殺かも知れないし。


 そんな焦りを抱えながら、何とかあがいていると、一時間ほどして突然金縛りが解け、辺りの音が聞こえてきて、日常が戻ったことを実感する。


 講堂の方から先輩達がぞろぞろやって来るが、最早ナンパなんて気分じゃなくなった俺様は、足早に寄宿舎へ帰る。

「さすがは魔法すら存在する不思議な世界だな。あそこに誘い込まれたことも、拘束されたことも意味が分からん。」


 まあ、それは追々調べて行く事にしよう。

 俺だってこの世界にきて、まだ2週間経っちゃいねえんだからな。


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 私は帰って来るなり、寝台に倒れ込む。

 こんなはしたない事は、公爵家の令嬢としては避けるべき振る舞いだろうけど、今日ばかりは仕方無い。夕食までの時間は人払いして、休ませてもらおう。


「お嬢様、大変お疲れのご様子ですが、お茶にいたしますか?」

「メアリー、ごめんなさい。疲れているので、少し寝かせていただいてよろしいかしら。」

「畏まりました。では、入室しないよう、他の家人に知らせておきます。」

「あるがとう。お願いするわ。」


 そうして着替えもせず、そのまま眠る。

 予想以上に精神的疲労が溜まっているようだ。

 一人になれた安心感からか、深い思考などできないまま、スッと眠りに誘われる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ