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盗賊の噂

 さて、剣術大会が終われば次は文化祭の準備で忙しくなる。


 各クラスごとに出し物を行うが、生徒会役員はそれとは別の出し物を展示する必要がある。

 我が1年A組は何と、あの有名なミュージカルに挑戦するそうだ。

 そう、日本人なら誰もが知るあの名作だ。


そして、他のクラスは飲食やアクセサリーの出店などを行うようで、芸術や詩歌、学術などの真面目な出し物を予定しているクラスが無い。

 個人的には、もう少し真面目に取り組んだ方がいいと思う。



「ところで、生徒会は例年、どのような出し物をしてるのかな。」

「そうですね。昨年は王都の歴史、一昨年は王国の地方産業についてパネル展示を行いました。」

「生徒会は真面目なんだね。」

「この人数で通常活動の合間に準備しますので、なかなか手の込んだ出し物は難しいですね。」

「その点、今年はテンコーとミントがいるから、少しの労力でかなりの事ができるな。」

「僕はイリュージョンを存分に披露したいよ。」


「どんなことができるんだ?」

「もちろん、あの13階段を再現できるし、中庭の噴水だって水と光のオブジェに出来るし、暗くなれば花火だって自由自在さ。」

「何かスゲえな。」

「お化け屋敷だってできるよ。」

「ミントもやりた~い!」

「ミントは姉さんや友達を沢山連れてくればいいんじゃない?」

「やるやる~!みんな喜んで来てくれるよ~!」

「じゃあ、常設は13階段からのお化け屋敷で、開始直後と正午に噴水、二日目の最後に花火でどうだい?」

「任せてよ!」


「じゃあ、場所は旧校舎ってことで申請しておこう。」

「お化け屋敷やるのにピッタリの雰囲気だな。」

「俺たちは何もしなくて済むし、楽だな。」

「そうだな。お化け屋敷の大道具と受付くらいかな。」

「大道具も小道具も、BGMだって僕が今まで使ってきた物で十分だよ。」

「さすがだな。」

「音楽はやっぱりあのチャラララララ~ンか?」

「さすがにオリーブの首飾りじゃないよ。」

 この曲もあるんだ・・・


「しかし、うちのクラスの出し物も攻めてるよね。」

「原作者と宝塚の許可は必要無いんだろうか?」

「あの縦ロールがマリー・アントワネットなんだろう?」

「まあ、似てるよね。」


「ところで、話は全く変わるけど最近、街で盗賊が出没してるって噂になってるけど、知ってる?」

「聞いたよ。何でも殺しも辞さない凶悪犯だってね。」

「予告状を出して金品を狙い、最後は犯行声明まで出すってことで、みんな戦々恐々としてるよ。」

「そりゃあ、ドウェインの親父さんも忙しいんじゃ無いか?」

「うん。昼夜問わずそれに付きっきりだよ。」

「なら、口うるさくなくていいじゃないか。」

「それが、先日の剣術大会で怒られちゃって、鍛錬2割増しの罰を受けてる最中だよ。」

「何だよ、優勝して罰って・・・」

「殿下の騎士なのに殿下に勝つなんて不敬にも程があるって。」

「無茶苦茶な言いがかりだな。」

「そうだね。私からもアレン殿には申し入れておくよ。」


「それもそうだが、その窃盗って犯行声明の仲で王族批判と市民の蜂起を訴えているらしいぜ。」

「そうらしいな。」

「でも、やってることは強盗でしょ?説得力無いよ。」

「だが、彼らの目的はそのための資金集めじゃないかって噂だ。」

「そりゃ何だか放っておけないね。」

「それってさあ、騎士団より先に捕まえたら、ドウェインの親父さんに貸しを作れるんじゃねえか?」

「でも危険だよ?」

「俺たちの実力ならそうでもねえだろ。」

「ミントやテンコーまで駆り出せば、結構いけるかもな。」

「どうだドウェイン。親父さんに勝てるチャンスだぜ。」

「ついでに倒してしまえよ。」

「おっ!いいな。どさくさに紛れてやっちまおうか。」

「あの、僕の父を闇討ちしないでよ・・・」


「どうだい、殿下。」

「危険な事はどうかなあ。」

「生徒会活動じゃなく、大人の貴族としてだよ。」

「確かに、それなら放っておく訳にもいかないなあ。」

「ミントとテンコーはどうだい?」

「やる~っ!追っかけっこならまかせてよ。」

「凄いイリュージョン見せてあげるよ。」

「何か、文化祭の出し物からとんでもない方向に話がそれたなあ。」

「相手は10人近くいるみたいだぜ。」

「そりゃ私たちだけじゃ無理だよ。」

「正面から喧嘩売る訳じゃ無いから大丈夫だぜ。」

「俺の魔法なら問題無く一網打尽にできるさ。」


「それで、次の犯行予告って知ってる?」

「そりゃお前が親父さんに聞けば教えてくれるさ。」

「じゃあ、危なくなったらすぐに騎士団に知らせて撤退ってことで。」

「分かったぜ、殿下。」


 ということで、ニコラス君とローランド殿下に押し切られる形で盗賊討伐が決まってしまう。

 そして、ドウェイン君からの情報により、次の犯行予告は3日後、10月15日の夜に市内の高級宝飾店を襲撃するとのことだった。

 その日は建国祭で、街は夜遅くまで喧噪に溢れることになる。


 確かに騎士団の警備も大変だろうが、盗みって予告して成功するものなのか?


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