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ドウェインの決意

「毎日熱心なこって。」

「ああ、ニコラス君に殿下まで。」

 放課後の訓練場。生徒会活動のない日は、いつもここにドウェイン君がいる。


「剣術大会も近いから。」

「親父さんからノルマでも課せられているのか?」

「もちろん、優勝以外は追加でしごかれることになってる。」

「心配するな。俺たちが対戦相手になった場合は負けてやるから。」

「ありがとう。恩に着るよ。」

「まあ、ガチでやってもドウェイン君には勝てそうにないけど。」

「そんなことは無いと思うよ。」

「腕も首もスゲえ太いじゃないか。普通の生徒なら剣を使わなくても勝てるんじゃないか?」

「一応、剣術大会だから・・・」

「そのためにエリート騎士養成ギブスも装着してたんでしょ?」

「まさかあれが校則違反だとは思わなかったけど、外せてよかったよ。恥ずかしかったし。」

「そうだな。見た目は最悪だったな。」

「その代わり、家ではスプリングの数を倍に増やして鍛えてるよ。」


「しかし、アレって筋力は付くが科学的に正しい鍛え方なのか?」

「スピードはダウンしそうだね。」

「仕方無いよ。ウチの家は父上にとっての正しさが優先されるから。」

「少なくとも、学者に必要な筋肉量はすでに手に入れているよな。」

「多分、どの学問でもシックスパックは必要無いはずだよ・・・」

「それ、親父さんに伝えたのか?」

「うん。父上を倒したら学者を目指してもいいって。」

「良かったじゃないか。」

「いや、父上に勝つなんてまだ30年は無理だよ。」

「倒せばいいんだろ?」

「僕の父上、一応は騎士団長だからね。僕なんかより遙かに強いんだよ?」

「だが、30年も待つわけにはいかねえんだろ?」

「だから毎日特訓してるし、今度の剣術大会で生徒相手に負けてる場合じゃ無いんだ。」


 そうして再び剣を振り始める。

 ミッチェルもニコラスも、付き合わざるを得ない空気に思わず剣を取る。


「しかし、実戦はともかく試合なら騎士団長と良い勝負するんじゃねえかな?」

「甘いよニコラス君。鍛錬バカを舐めちゃいけないよ。」

「そんなにか?」


 ニコラス君がドウェイン君の前に立つ。模擬戦をするようだ。

 二人は分かっていたかのように同時に動き出し、剣を打ち合う。

 毎日鍛えているドウェイン君はもちろんだが、ニコラス君だって中々の動きだ。

 何か、どっかで見たことのあるような動きだけど。


「ニコラス君、動きが本格的だよね。」

「そりゃ10年やってたからな。」

 5歳の時から鍛錬してたのか。宰相家ってスパルタなんだな・・・


「でもッ、僕だって負けてないよ!」

「ああ、あれだけ勉強して、これだけ鍛錬できてりゃ、大したもんだっ!」

 互いに息が切れるまで打ち込んだ後、倒れ込む。


「ハァハァッ!青春じゃねえか!」

「まずは、ニコラス君に圧勝できないと・・・」

「そう簡単にやられはしねえぜ。」

「二人ともお疲れ。さすがだね。」

「そうは言うが、聖剣振ってる殿下が一番強いんだからな。」

「あれは聖剣が強かっただけで、剣術そのものは二人にとても敵わないさ。」

「上級生にだって有力選手はいるんだろ?」

「騎士を目指してる生徒はいるからね。」

「剣術大会勝ち上がるのも大変そうだなあ。」

「それでもドウェインが優勝候補なのは揺るがねえと思うぜ。」

「そうだね。まずはお父上を納得させるだけの実績が必要だからね。頑張ってよ。」


「しかしさあ、別に親父さんを倒せばいいんだろ?」

「そう簡単に言わないでよ。」

「別に倒すだけなら、不意打ちでも暗殺でもよかねえか?」

「それ、単なる殺人事件だよ・・・」

「それに、タイマンって誰が決めたルールだよ。」

「騎士道なんじゃ・・・」

「強さってのは単純な力で推し量れるものじゃねえんだ。勝つための作戦を立て、実行する勇気も必要だぜ。」

 まさか、ニコラス君が力以外の方法を説くとは・・・


「まあ、それだけ努力して乗り越えろっていう意味なのは分かるよ。」

「そうかあ?無理難題言って自分の意のままに我が子の道を決めてるようにしか見えねえぞ。」

 何か、今日のニコラス君、一味違う・・・


「まあ、闇討ちしたくなったら、いつでも手を貸してやるから安心しな。」

「考えておくよ。」

「もちろん、殿下も参戦してくれるよな。」

「へっ?私もかい?」

「そりゃそうだろ。殿下ならもみ消せるし。」

「かなり騎士道に反してるよね。」

「学者になるならいらねえだろ?馭者にもいらねえけど。」

「た、確かに・・・」

「二人とも、励ましてくれてありがとう。とにかく、父に立ち向かってみるよ。」

「その意気だよ。」

「うん、絶対勝つ!」


 何か、いい感じに吹っ切れたようで、久しぶりに彼らしい笑顔になったような気がする。

 ニコラス君は、いかにも悪だくみしてそうな笑顔だけど・・・


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