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親睦、深まる?

 さて、2泊3日の合宿訓練。

 初日は行進訓練と他のパーティーとの対戦形式による連携確認を行った。


 行進はダンジョン攻略というよりは、卒業後に軍に所属する者も多いために行われるものである。

 そして対戦形式というのは、実際に戦う訳では無く、剣を持つ前衛と魔法を使う後衛の配置や攻撃手順の確認といったところだ。

 交互に敵役になるのだが、見たことも無いのにやらされたモンスター役は、とてもコミカルで面白かった。


 ちなみに私は、聖剣が主要武器なのにもかかわらず、王子という身分のために後衛に配置されてしまった。

 まあ、前衛がドウェイン君とニコラス君なら問題ないはずだが・・・


 そして、このパーティーにはもう二人、隠れキャラがいる。ミントとテンコーである。

 彼らはすっかり私たちに懐いてしまい、たまには外で自由行動もいいだろうということで連れてきた。


 戦力にはならないだろうから、反則ではないと思う。


 今は一日の予定が終わり、テント設営と夕食の準備である。

 メニューはキャンプの定番、カレーと決まっているが、調理は各班の生徒が行う。

 それにしてもこの世界、カレーとコメもあるんだよなあ・・・


「しっかしまあ、この一画だけやたら賑やかだよな。」

 そう、私たちの陣取った場所のすぐ隣にローランド殿下とゴールドバーグ嬢の取り巻きご一行様がやって来た。

 その結果、ここだけ女子率がやたら高くなっている。


 しかも、その他の班は私たちに遠慮して遠くに場所を取ったみたいだ。


「まあ、カミラ嬢の班は仕方無いとして、ローランド殿下は何もここにテント張らなくてもいいんじゃない?」

「いくら俺がパリピといっても、一人でテント設営はできないだろう?」

「そういう・・・」

「いいぜ、俺が手伝ってやるぜ。」

「さすがニコラス。」


 結局、男子4人で3張りのテントを設営した。

 じゃあ、料理は女性陣がやるかというとそうではない。

 貴族女性に料理を期待する方が間違っている。


「へえ、ローランド殿下もニコラス君もジャガイモの皮むき上手いね。」

「そういうミッチェル殿下もニンジンの皮むき上手いじゃないか。」

「とても王族には見えないね。」

「そういうドウェインが一番下手っぴじゃねえか。」

「剣術とは違うよ・・・」

「さすがに肉を切るのは得意だろう。」

「いや、切ったことないから・・・」

「実践も大事だぜ。」


 そうして、その辺の石でかまどを作り、学校から運んできた薪と鍋をセットする。

 火と水は魔法で準備して、カレーライスは出来上がる。


「さあ、みんなで食べよう。」

「殿下方のお料理なんて、畏れ多いことですわ。」

 ご令嬢方が集まってくるが、何と華やかなんでしょう。

 何せ男子4人に女子10人の集団である。

 私とドウェイン君は隅っこで大人しくしている。


「まあ、とても素晴らしい出来映えですわ。」

「さすがはキャロライン様、お料理も完璧でございますね。」

「当然ですわ。オッホッホ!」

「お前、火を付けただけじゃ無かったっけ?」

「監督はしておりましたわよ。」

「ミントも食べた~い!」

 何か、妖精も飛んで来た。


「キャーッ!この可愛い生き物は何ですの?」

「アタシは鏡の妖精、ミントだよ!よろしくね。」

 ミントはたちまちご令嬢に囲まれる。

 そういや、女子ってこういうの好きだよな。


 それに、最近のミントは人前が平気になったようで、放課後はいつも生徒会室でお菓子を頬張っている。


「この子はどこで見つけられたのでございますか?」

「階段の踊り場よ。七不思議の一つをこの私が解決したのでございますわ。」

 そうだったっけ?


「殿下、僕も紹介してもらっていいかい。」

 私の隣に黒い影が現れる。


「そうだね。みんな、彼はピート・テンコー。旧校舎の階段を増やしてた張本人だ。幽霊だけど人に危害を加えたりしないから安心して。」

「ピートです。プリンステンコーと呼んで下さい。」

「いや、その呼び方はきっとマズいと思うよ。それに長いし。」

「影でいいんじゃないか?」

「いくら何でもそれってあんまりじゃない?」

「うん、気に入った。僕はそれでいいよ。カッコいいし。」

「確かに、男の子はそういうの好きだよね。」


 ミントとテンコーはメンバーそれぞれと挨拶を交わした。

 一応、他の生徒にはまだ秘密ということにしておいたが、彼女たちの様子を見ると公表しても差し支えないように思える。


「ところで、酒は無いのか?」

「あるぜ、殿下。」

「さすがニコラス。本当にお前は頼りになるヤツだ。」

「ローランド殿下は何がお好みなんだい?」

「酒なら何でもいいが、ビールか酎ハイがあればご機嫌だぜ。」

「残念だな。町中探してみたが、エールと原材料不明の蒸留酒しか無かったぜ。」

「そうなんだよな。」


「ところで、未婚の男女が同じテントで同衾するのって問題にならないのかなあ。」

「ダンジョンの中でそんなこと気にしてられないだろう。」

「そりゃそうだけど・・・」

「一応、先生が夜中に見回るらしいよ。」

「そりゃそうだろうね。」

「そういや、今回は肝試し無いのか?」

「学校の正式な行事だからね。」

「俺たちだけでちょっと行ってみないか。」


 うん?もう酔ってる?


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 今日は朝から憂鬱だったわ。

 そう、2学期の数あるイベントの中でも最大級に厄介な合宿訓練が始まるからよ。

 攻略対象と四六時中一緒なんてゲームなら好感度大量ゲットのチャンスだけど、アタシにとっては悪夢でしかないわ。


 一昨日、軽薄殿下からパーティー入りのお誘いを受けたけど、もちろんお断りしたわ。

 冗談じゃないわよ。


 ということで、アタシはイリアちゃんと彼女を通じて親しくなったタニア・フレット男爵令嬢、ミリガン・ショート男爵令嬢の4人でパーティーを組んだわ。

 後の一人は決まってるんだけど、野営なんてできないからって仮病を使って欠席しているの。


 意外だったのは、ジェニファーとブレンダが欠席してたことね。

 殿下たちは4人でパーティーを組んでるから、ジェニファーの分を空けているんだと思うけど、本来なら彼女とアタシがあそこに入るはずなんだよね。


 ジェニファーの動きが読めなくて正直、困惑してるけどまあいいわ。

 今のところ、攻略対象と親しくなるつもりなんて無いからね。


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