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試験結果発表

 期末試験も無事終わり、7月も下旬に差し掛かった。


 この時期になると、校内は夏休みが近いあの軽やかで明るい雰囲気に包まれる。

 でもその前に、一つの試練が生徒達の前に立ちはだかる。

そう、期末試験結果発表だ。


 試験は学科、実技が行われたが、その各教科ごとの順位と男女共通試験の総合順位が正面玄関ホールに貼り出される。


「ドウェイン君凄いね。総合3位だよ。」

「うん。暗記が多い教科に足を引っ張られちゃったね。」

「殿下も4位は立派じゃねえか。」

「そうだね。何とか面目は保てたかな。」

「ニクラス君は驚きの55位だね。」

「ああ、C組も視野に入ってきたな。」

「マズいんじゃないの?」

「俺は別に構わねえな。親父だって早く俺に見切りを付けた方がいいだろうし。」

「それにしても、フレミング様凄いね。ダントツのトップだよ。」

 確かに驚いた。

 私の記憶ではそれほど勉強ができるという評判は聞いてなかったし、お妃教育の進み具合もあまり芳しくないと聞いていた。

 ここ最近の彼女は大きく変化したらしいが、こんな所にもその一端が窺われる。


「殿下、なかなかやりますねえ。」

「これはローランド殿下。殿下も5位ですよ。」

「あんだけ遊んでばかりなのに、やるもんだなあ。」

「まあ天才肌ってヤツ?」

「殿下は紙一重で僕の父とは逆なんですね。」

「何だそりゃ?」

「まあとにかく、これで交流会の準備に集中できるよ。」

「そうだな。俺も夏休み最大のイベントを楽しみにしてるよ。」

「ローランド殿下は純粋に楽しんでますよね。」

「ああ、生徒会で無ければもっと楽しめるんだけどな。」

 そんなことを話していると・・・


「皆さん、聞いて下さるかしら。」

 つめかけた生徒達が声の方に振り返る。


「今回の試験結果、何かおかしいとは思いませんこと?」

 見ればゴールドバーグ嬢とゆかいな仲間達がいる。


「何が始まるのかなあ。」

「ドリルを使った余興でもするんじゃないか?」

「皆さん、今回の試験結果で何かおかしい所があることに気付かなかったかしら?」

 周囲がざわめき出す。


「どうして成績首位があの方なのかしら。」

「私はお城でのフレミング様の評判を知っておりますが、それと今回の結果があまりにもかけ離れておりますわ。」

「優秀であらせられるミッチェル殿下やローランド殿下を差し置いて、これはあり得ないと思います。」

 ゆかいな仲間達もゴールドバーグ嬢を援護する。


「確かに、言われてみればそうかも。」

「うん、私も父上に聞いたことがあるが、とても首位を取るとは・・・」

 周囲の声もどうやら懐疑的なようだ。

 さすがにこれはマズいと思い、ジェニファー嬢を探すが、なかなか見つからない。


「もし、この栄えある貴族学校の試験に間違いや不正があってはいけませんわ。」

「当の本人に説明いただかないと納得出来ませんわ。」

「皆さんもそう思いませんこと?」

「確かに、そうかもな・・・」

「話を聞くだけならいいんじゃないか。」

「という声がありますが、フレミング様、いかがでしょう。ここにおられるなら逃げずに反論すべきだと思いますわ。」

 うん。とっても分かりやすい。昔の少女漫画的展開だ。

 彼女が人混みの中から現れたので、私も彼女の元に向かう。


「逃げずに現れたことについては褒めて差し上げますわ。では、どのような手を使ったのか、説明いただけますこと?」

「私は不正など、一切しておりません。」

「お認めになられた方が楽になれますわよ。皆さん、疑念を持たれている訳ですから。」

「皆さんが私のことを決して好意的に見ていないことも、これまで殿下の婚約者として必ずしも相応しい振る舞いで無かったことも事実です。でも、誓って試験に不正はございません。」

「前半部分は多少、評価が甘いとしても当たっておりますわね。しかし、後半部分は何も説明がありませんわね。」

「やっていないものの証拠などございません。」

「証拠が無いのであれば、巧妙な手段を使って不正を行ったということですわね。」


 ジェニファー嬢は何も答えない。

 これ以上の弁明はしない考えのようだ。

 しかし、恐らくこの世界では、沈黙が承服を意味するだろう。


「ゴールドバーグ嬢、それは少し乱暴な言い方ではありませんか?」

「まあ殿下。さすがはお優しい婚約者でございます。でもよろしいのですか?不正を野放しにしてしまって。」

「彼女が不正をしたという証拠は何一つ無い。」

「でもおかしいとは思いません?あのフレミング様が学年首位なんて。」

「彼女はこの学校に入学して変わった。確かにこの成績の急上昇には驚きもあるが、普段の彼女の授業態度やクラスでの様子はA組の者なら皆知っているはずだ。」

「確かに、普段のフレミング様の雰囲気は、優等生のそれだな。」

「僕も、あのフレミング様に負けたなら、仕方無いと思うよ。」

 さすがはニコラス君とドウェイン君だ。


「それに、彼女はマナー、ダンス、魔術といった実技でも高い成績を収めている。これは一人づつ公開方式で試験したものだから、みんな実際に見ていたと思う。その上でおかしいと思うかい?」

 周囲は再びざわめき出すが、風向きが変わったことは感じられる。


「努力は嘘をつかない。みんなこれから彼女に追いつき追い越せるよう、互いに切磋琢磨しようじゃないか。」

「さすがは殿下。」

「そのとおりですね。」

 どうやら糾弾の空気は無くなったようだ。

 私はジェニファー嬢をエスコートしてこの場を後にする。


「殿下、ありがとうございました。」

「大変だったね。でももう大丈夫だよ。」

「お手数をお掛けしてしまいました。」

「しかし凄いね。首席なんて大変な栄誉だよ。」

「私なんかでは勿体ないことでございます。」

「私はジェニファー嬢が首席は妥当だと思うし、この成績を続けていれば、皆もそのうち分かってくれるよ。」

「ありがとうございます。励みになります。」

 彼女は静かに立ち去る。

 そう、何の自慢もせずに、ただ静かに。


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


「うわぁ・・・ここでヒロインを嵌めるイベント来ちゃうんだぁ・・・」

 アタシはイリアたちと成績発表を見に来てた。

 ホントはイベントが起きそうだったので来たくなかったんだけど、イリアたちがどうしてもって言うから見に来たの。


 そしたらクラスの中心、キャロライン様がジェニファーを断罪するイベントに遭遇したって訳ね。


 あれって本当は、ジェニファーがアタシにイチャモン付けるイベントなんだけど、確かにアタシは王子様ルートに入ってないし、ジェニファーは異常に大人しいし、どっちかって言うとキャロライン様の方が悪役っぽいし、普通なるならこうだよねって感じだけど、シナリオからあまりに離れすぎていて何だかコワい。


 それに、アタシが何もしなくても、似たようなイベントが起きるのも何だかコワい。

 このままジェニファーがアタシの代わりにヒロインしてくれるなら、アタシも楽になるんだけど、それってゲームシナリオ的にはバッドエンド一直線なんだよね。


 残念ながらジェニファーにはヒロイン属性も周囲の人望も無いし・・・


 どうするかは夏休み中に考えよう・・・


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