ナンパに明け暮れる二人
さて、清掃活動も終わったし、後片付けも終わった。
今日は生徒会も無いから、今日親しくなった3年のルイス・ファーマン嬢とマリリン・チェーザー嬢を誘って街に繰り出す。
「今日は何と素晴らしい日なのでしょう。」
「そうですわね。ローランド殿下とこうしてお近づきになれるなんて。」
「私もお二方に喜んでいただいて光栄ですよ。さあ、次はあの店に入りましょう。」
入るのは王都ブランドンでも一番の高級宝飾店。
「まあ、目移りしてしまいます。」
「確かにいい物が揃っていますが、お二人の輝きには負けていますね。」
「まあ、お上手なこと。」
「まあ、多少負けていても、お二人の美貌でカバーできるとは思いますが。」
「さすがに、それは褒めすぎでございますわ。」
「いやいや、そのようなことはございません。美しさ、若さのみならず、学級委員長と副委員長に推されるだけの高い知性、人望と家柄まで申し分ありません。」
「それは・・・確かにそうかもしれませんが。」
「そんなお二方とこうしてお知り合いになれたのですから。私も心が弾んでおります。」
「殿下、今度私が主宰するお茶会に是非、ご参加いただきたいのですが。」
「もちろんよろこんで。」
「こちらの真珠、控え目でとても美しいですわ。」
正直、宝石はよく分からんが、気に入っているなら買ってあげようか。
「では、マリリン嬢にはこれをプレゼントするとしましょう。」
「よろしいのですか?」
「今日の出会いに感謝して。」
「まあ、それは嬉しいですわ。」
「では、ルイス嬢にはこちらのダイヤなどいかがでしょう。」
「嬉しいです。」
よし、二人の目には既にハートが浮かんでいる。
ルイス嬢にはお茶会に誘われたから、今夜のお相手はマリリン嬢かな?
「では早速買いますので、着けてみてください。」
二人はイヤリングを着け、意気揚々と店を後にする。
「次はどこにまいりましょう。」
「そうですね。今日は外で大変な仕事もしましたし、少し休みがてらお茶でもいかがかと。」
「はい。どこまでも付いていきます。」
カフェに入ってお茶と菓子を注文する。
こういったものに目が無いのは、時代を問わず万国共通だ。
そしてローランドは、最初の店で買ったリボンとここに来る途中で買った花を取り出し、器用にコサージュを作ってみせた。
「では、お二人に。」
「まあ、殿下は本当に器用ですこと。」
「こんなもので良ければ、いつでも。まあ、ほかに道具があれば、ドレスに付けられるようなものも作れたのですが。」
高校時代によく作ったなあ、などと思いつつ、ルイスにはダリア、マリリンにはミモザのものを渡す。
もちろん、花言葉も問題ないと思う。
「本当に光栄ですわ。」
運ばれて来た菓子を食べながら、楽しい憩いの時間は過ぎる。
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「ねえ君たち、僕とお茶しない?」
「先生、私たち生徒ですよ?」
「たまにはいいじゃないか。それに、みんなの様子や悩みを把握するのも教師の大事な仕事だよ。」
「じゃあ、奢ってくれるならいいよ。」
「じゃあ、アタシは1時間銀貨1枚で手を打つわ。」
「あっ、それアタシも追加!」
「おいおい。相談に乗ってお金を払うのかい?」
「だって先生ならお金いっぱい持ってるでしょ。」
「いや、君たちが考えているほど教師の給料って高くないんだよ?」
「でも~、普通は奢ってくれるよね~。」
「まあ、奢りはするよ。」
「ジェームズ先生、何をされているのですか?」
「これはこれはクレア先生、生徒の指導に向かうところですよ。」
「生活指導ですか。それとも進路指導ですか?」
「その両方に加えて悩み事相談ですね。」
「それなら私がやります。少なくともジェームズ先生よりは経験がございます。」
「えっ?クレア先生が相談乗ってくれるの?」
「じゃあ私もクレア先生にお願いしちゃう。」
「おいおい。僕が先約だったじゃないか。」
「だって~、ジェームズ先生って何か頼りないし。」
「クレア先生、行きましょう。最近評判のお店、知ってるんです。」
「じゃあ僕も一緒に。」
「ジェームズ先生。先ほど魔法学のネルソン先生が期末テストの設問についてお話があると探しておられましたよ。」
「そんなの明日でいいじゃない。」
「先生の受け持ちクラスは遅れているとネルソン先生が嘆いておられましたよ。」
「はあ・・・」
「テスト前までの授業の進捗予定も含めて、早めにご相談された方が良いと思いますよ。」
「先生なのに相談しないといけないとか、ダッサ!」
「じゃあ早くいきましょ。じゃあね~、ジェームズ先生。」
何か、上手く行かない・・・




