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青春のゴミ拾い

 さて、音楽室の怪を究明してたら6月になっていた。


 生徒会も遊んでばかりはいられない。

 ちゃんとやるべき事をやってこその余興だ。

 ということで今日は6月14日。毎年恒例の市内清掃活動である。


 これは、貴族学校の活動を市民に知ってもらうとともに、貴族の奉仕活動を学ぶ目的もある。

 生徒会執行部のみなのか、クラスの委員も含めた活動かは年ごとに異なるようだが、今年は正副学級委員長のほか、風紀委員や図書委員と引率の教師合わせて45名で、市内の目抜き通りであるローガン通りを清掃する。

 時間は朝8:00から正午までの予定である。


「では、今日は生徒会恒例行事の市内清掃活動です。人通りも馬車も多いですので、事故の無いよう、また暑いので水分の補給も忘れずにお願いします。」


 それぞれ3人一組で、実際にゴミを拾うグループと回収したゴミを河原に運ぶグループに分かれて作業を開始する。河原に運んだゴミは燃やして処理だ。

 現代なら許されないだろうが、有毒ガスを出すようなゴミも無い時代だし、火も水も魔法でどうにかなる。

 私は会長なので引率の先生同様、各グループの巡回指導だ。


「ようし、町中のゴミを回収してやろうぜ!」

 ここはニコラス君とドウェイン君+ウチのクラスの図書委員のグループ。

 いつもながら熱いリーダーだ。


「おーっほっほ!二人とも、高貴な私の手を煩わせること無く、最高の成果を上げなさい。」

「はい・・・」

 我がクラスの副委員長と風紀委員、気の毒だなあ・・・

「さてレディ、まずはそちらのカフェでスイーツどうかな。奢るよ。」

 頼むから仕事してくれ。



「まずは本通りをちゃちゃっと片付けるんだ。ゴミは裏通りの方が多い。」

「でもニクラス君、そこまでしなくていいんじゃないの?」

「だが、街が綺麗になると住民の心も明るくなるじゃないか。」

「あなたち邪魔ですわ。お退きなさい。」

「何で俺たちが譲らないといけねえんだ?」

「生徒会貢献度No1は、高貴なこと私一択ですわよ。そして、その勢いのままに来年度は副会長の座を射止めますのよ。ですから万年雑用係は引っ込んでなさい。」

「面白い。その勝負、乗ってやろうじゃねえか。」

「七不思議の時のようにはいきませんわよ。」

「そのドリルも不思議だな。それでサイクロンを起こせないのか?」

「ドリル?そのようなものどこにあるのかしら。」

「頭から生えてるじゃないか。立派なのが二本も。」

「こ、これっ?あなたにはこれがドリルに見えるのですか?これだから学の無い男はいけませんわ。」

「何言ってんだ。ドリルじゃねえなら竜巻サイクロンだろ。」

「失礼ね。毎日この髪型を維持するために朝早く起きて、3時間もかけてセットしておりますのよ。」

「その時間を他の事に使えよ!」

「そこの二組、いい加減に清掃を始めてください。」

 先生の指導により、ようやく作業を始めてくれる。


「しかし、ゴミは少ないけど馬糞多いね。」

「まあ、食べ物は大事にするからな。生ゴミは少ない。」

「でも、この人数で清掃すると、これだけの距離でもあっという間だね。」

「普通のゴミを拾ってるようじゃダメだ。これじゃゴミ回収量首位に立てねえ。」

「オホホ、手段を選ばないなんて卑怯ですわね。」

「口先だけで働いてねえお前にだけは負ける訳にいかねえ。」

 いつの間に、ニコラス君とゴールドバーグ嬢はライバル関係になってしまったんだろう。


「では皆さん、あそこの汚らしいおジジイを捨ててしまいなさい。」

 全国のおじさんが凹んでしまうからやめなさい。


「じゃあドウェイン、俺たちはあのみすぼらしい爺さんの銅像を撤去しちまおうぜ。」

「ダメダメ。それは建国の英雄、シェルダン将軍像だよ。」

 頼むからゴミを回収してくれ・・・


「そこの店主、ゴミを回収して差し上げます。何でもいいからここに持ってきて下さる?」

 最早、目的を見失っている。

 しかし、ローランド殿下を含む3組以外のグループが真面目に清掃してくれたお陰で、通りはゴミ一つ落ちていない状態になった。


「やっぱり清掃活動って効果あるんだな。」

「そうだね。普段何と無く歩いていると気付かないけど、こうしてビフォアアフターを見ると一目瞭然だよね。」

「オラオラ、どいたどいた!」

 ニコラス君が荷馬車を引いて登場した。

 運搬専属の人、いたはずだけど・・・

「とにかく全部載せろ。」

 みんなの協力で荷台はゴミで一杯になる。


「よし、縦ロール。これが俺の成果だ。圧倒的だろう?」

「まあ!卑怯にも程がありますわ。それに私たちのゴミもそこに乗っているじゃありませんこと?」

「さあ、知らねえな。さあ行くぞ!ドウェイン、乗れ!」

「はいはい・・・」

 軽い鞭の音とともに荷馬車は急発進する。

 そして対向する馬車や人を躱して猛スピードで走り去っていく。

 さすがは馭者を目指しているだけあって超一流の腕前だ。


 しかし、何かいろいろ違うなあとは思った一日だった・・・


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