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余韻に浸る間もなく

 私たちは今夜に向けてきちんと準備をしてきたつもりだ。

 互いの魔法の効果範囲を把握した上でのフォーメーションはもとより、全員が帯刀している。


「じゃあ、廊下で迎え撃とう。」

 私たちは直ちに動く。剣を構える前衛は私とニクラス君で、ジェームズ先生、ローランド殿下、ゴールドバーグ嬢は後衛から魔法を放つ。

 武器を所持していないマーク卿も魔法で助力してくれるようだ。


「殿下、相手の横に避けながら剣でヤツを薙ぎ払って下さい。俺がヤツを止めます。」

「それは危険じゃないかい?」

「俺たちで止めなきゃ、後ろが無防備になる。」

「分かった。じゃあ、私は相手に当たったら背後に回るよ。」

「じゃあ、それで行こうぜ。」

 ついに人体模型が廊下に現れた。3階の理科室から来たもののようだ。

 そして、迷い無くこちらに走ってくる。


「じゃあ殿下、危険だけどよろしく。」

「でも、このまま有無を言わさず戦闘に入っていいのかなあ。」

「こないだ縦ロールは有無を言わせてもらって無かったぜ。」

「それもそうだな。」

「借りは返さねえとな。」

 二人は剣を構える。

 さほど広くない廊下だ。前衛は二人が正解だった。


 今だ!

 私はそう感じた瞬間に動き出す。

 人体模型も構わず走り込んでくる。

 私の剣は見事に無防備な相手の背骨にヒットし、後ろに回る事が出来た。


「喰らえ!日野2トンアタック!」

 ニコラスが相手にタックルをかますと、両者後ろに弾け飛ぶ。

 私は咄嗟に剣を振りかぶり、頭蓋骨に叩き込む。


 カタカタと骸骨が音を立てる顎がガタガタ鳴っているのか喋っているのかは分からない。

 ただ、頭蓋骨は割れるように大きく陥没している。


「殿下、離れて下さい。魔法を撃ちます。」

 その声に、ニコラス君と私はその場を離れる。

 刹那、後衛の四人から同時に魔法が繰り出される。


 確か、水は火を打ち消すということだったが、今回は魔法をぶつけ合っている訳では無い。

 良い感じにそれぞれの魔法が人体模型にヒットし、燃えながら天井に、そして床に叩きつけられる。


 だがヤツも怯まず立ち上がり、身体が燃え上がった状態のままニコラス君の方に走り始める。

 ここでマーク卿の水魔法で火が消され、ニコラス君が相手の足を払う。

 こっちに膝下の骨が飛んで来たが、構わずヤツに近付き、後ろから袈裟懸けに斬りつける。

 足を失った人体模型は何とか立ち上がろうとするのだが、上手くいかないようだ。


「よし、チャンスだ。」

「一斉に行くよ。」

 もうこうなったらワンサイドである。

 ローランド殿下やゴールドバーグ嬢も剣を抜きまさにめった打ち。

 特にご令嬢は先日の恨みもあるのか、とても嗜みとは思えない力強さでヤツを粉々にしていく。

 そして完全にヤツの動きは止まった。


「制圧完了かな。」

「しかし、バラバラどころか粉々になったな。」

「弁償かな・・・」

「王家がなに貧乏ったらしいこと言ってんだ?」

「確かに、ご夫人のドレスを考えたら安いものだけど・・・」

「でも、魔法はあまり効かなかったですわね。」

「幽霊なのに物理で倒せるなんて・・・」

「まあ、これで二つ目も解決だな。」

「解決、なのか?」

「で、後片付けどうする?」

「そりゃあ、後方支援の役割だろう。」

 まさかケント先輩に掃除させられる訳も無く、ドウェイン君がやってた。

 そして、何日か後の教室にて・・・


「ミッチェル殿下、ローランド殿下、ゴールドバーグ様、ニコラス様、ドウェイン様、祖父がお世話になりました。」

「ああいいよ。その後マーク卿の様子はどうかな。」

「はい。昨日はお墓参りに行ったそうです。父もあれほど晴れ晴れとした祖父の顔は初めて見たと喜んでいました。」

「それは良かった。もう音楽室で謎のピアノの音が鳴ることもないだろうしね。」

「理科室の人体模型も無くなってしまいました。」

「まあ、貴族学校に必要なもんでも無いしな。」

「どっちかって言うと、あっちの方が悪質だったよな。」

「そうですわね。お下劣極まってましたわ。」

「ゴールドバーグ嬢も勇敢でしたよ。」

「おーっほっほ!私ほど高貴な者になりますと、女でも勇敢なのでございますわ。」

「さすがは学級委員長だ。」

「七不思議の解明には、これからも頼って下さいまし。」


「次は何が良いかな。」

「階段の鏡なんかどう?」

「あれは鏡を睨んだ自分の姿ってことでいいんじゃないか?」

「じゃあ、校長?」

「俺は説教喰らうなんて嫌だぜ。」


 朝の教室に明るい笑い声が響く。


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