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面会日

 今日は休日ですが、お妃教育のため登城しております。


 半年ぶりの登城となったブレンダも、これまでの遅れを取り戻すべく、頑張ってくれるそうです。

 そうして馬車を降りたのですが・・・


「ジェニファー様、本日はミッチェル殿下たってのご要望により、午後のティータイムを同席していただきます。」

「待って下さるかしら。そのようなお話は聞いておりませんが。」

「はい。今朝、殿下からご要望があったものでございます。」

「急におっしゃられましても私、困りますわ。」

「そうは言われましても、月一回はこのような場を設けることになっております。それほど驚くようなことではないと思いますが。」


 確かに、以前はミッチェル殿下と親睦を図るための面会日が設けられておりました。

 私の記憶ではここ数年、ジェニファーの方から殿下にしつこく言い寄り、この面会日以外にもほぼ毎日のように押しかけ、お茶にお誘いしていたはずです。

 そして、さすがの殿下もウンザリしたのか、こういった面会の場は自然消滅してしまいました。

特にこの2年ほどは、あからさまに避けられていたと思います。


 ですので、こちらから願い出ない限り、このような場は設けられないと高をくくっていたのですが、どうしましょう。


「大変申し訳ございませんが、本日は所用があり、殿下のご要望にお応えできかねます。」

「まあ!いくらあなたでも、殿下の要望を断るのはいささか失礼ではありませんか?」

 確かにこの方のおっしゃるとおりです。

 特に、今までの私ならあり得ない行動パターンですから困惑もしているでしょう。


「おっしゃるとおりですが、何卒、殿下と再度調整頂き、今日の所はお暇いたしたいのですが。」

「分かりました。お伝えはいたしますが殿下もご多忙の身。これを逃せば次がいつになるかは分かりませんので、そのつもりで。」

 いいえ、金輪際無くて結構です。と言いたいところですが、きっとそうはならないでしょう。

 殿下のお人柄なら、私のことを心配して下さっている可能性すらあります。


 そんなこんなで、今日の授業は気もそぞろでした。

 まあ、ジェニファーは元々あまり優秀でも真面目でも無いので、講師の先生方もあまり気にしている様子ではありませんでしたが・・・


 その後、殿下のお付きの方を通じて、本日のティータイムは同席しなくて良いとの知らせが来ました。

 もちろん、これは好ましい行動ではありませんし、噂好きな女官辺りが不仲説を面白おかしく吹聴するのかも知れません。

 また、父や王妃殿下からお叱りを受けるかも知れませんが、こちらも我が身は惜しいのです。

 できれば、婚約解消したい私の意図を汲み取って頂きたいと思う次第です。


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 本日、ジェニファー嬢が登城しているということでお茶に誘ってみたが、断られてしまった。

 まあ、今日の今日というのは唐突だったとも言えるが、学校での彼女を見るに、たとえスケジュールが空いていても断ってくるような予感はあった。


 確かに、私は前世とは比べものにならないくらいイケメンになっているし、本物の王子様なのだが、前世で積み重ねて来た安西敏郎の経験から、それほど自惚れているわけではない。

 とは言え、王家と国内随一の貴族家の婚約というのは非常に重いはずだ。

 それに、政略結婚であっても、できることなら仲が良いに越したことはないはずだ。


 ミッチェルの記憶を辿っても、むしろ彼女の方が忌避される対象であり、こちらは追いかけられる側だったはずだ。

 そして、この変化は私がここに来てから起きたものだ。


 一体、彼女に何があったのか。そして、私がミッチェルになったことで何かが変わってしまったのか。

 そしてそれは、改善が可能なことなのか。良く考えなくてはならない。


 可能性としては、彼女の気持ちが変化した、あるいは冷めてしまったということが考えられる。

 これは、こちらが彼女を避け続けたことも一因だろう。


 次に、所謂恋の駆け引き、という可能性だ。

 つまり、今の彼女の行動が演技である可能性だ。こちらなら、それほど心配する必要はない。

 こちらがアプローチさえ諦めなければ、関係が破綻することはないだろう。


 問題は、彼女が私を好きでなくなっている場合である。

 これは、婚約して5年以上経つが初めてのことであり、変化があまりにも突然だった。

 学園生活が始まったことによるものか、安西が醸し出す雰囲気が生理的に受け付けられないものだったのか。それはさすがに凹むなあ・・・

 いずれにしても、一度彼女と話をしてみないことには始まらない。

 それは、婚約関係にある者同士、避ける訳には行かないし、お互いもう立場ある成人だ。


 問題解決能力も問われているだろうし、不仲説なんて流れたら最悪の場合、権力闘争に発展する恐れだってある。きっと彼女もその認識はあるだろうと信じたい。

 こういう時には陛下に相談すべきなのだろうが、まずは自力で解決する努力が必要だろう。


「明日、短い時間でもいいから話し合う時間を作ろう。」

 そう呟いて一日が終わる。


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