男子四人、特訓を開始する
評議会の翌日、教頭先生に評議会の結果を報告すると共に、7不思議の調査を行いたい旨を相談したら、あっさりOKが出た。何故だろう?
ということで、生徒会室に戻ってきて、いつもの三人で打ち合わせを行うことにした。
「普通、こういうのって許可が下りないもんじゃないの?」
「いやにあっさり出たな。」
「反対する空気すらなかったね。」
「よほど生徒会に信用があるか、王族の権力だな。」
「そうじゃないと思うけど・・・それで、誰を参加させる?」
「殿下さえいれば、後は持っている権力で誰も断れないさ。」
「良く考えたら、これって生徒会だけでやらなくても良いんだよね。例えば騎士団に応援してもらうとか。」
「安全を考えたらそうだが、わざわざこんなことで動いてくれるか?」
「そこは殿下が命令すれば動くよ。」
「ドウェイン、いいのか?親父さん来るぞ。」
「アッ!やっぱり騎士団は止めよう。」
「結局、誰で行く?」
「まあ、生徒会役員で行くしかないだろうな。」
「先生も誰か来た方がいいよね。夜中に学校で活動するんだから。」
「じゃあ、ジェームズ先生がいいんじゃない?いざと言うときは魔術で戦えるし。」
「そうだね。先生とローランド殿下がいれば、かなりの戦力だよね。」
「副会長たちも行くのかい?」
「希望すればね。」
「金髪縦ロールは来るぞ。」
「僕、あの人苦手だなあ。いつも上からだし、教室でも怖いし。」
「でも、誘わないと後が面倒だよね。」
「仕方無いな。参加の打診くらいはしないとダメかな。」
「それとドウェイン。調査の時はそのギブス外しとけよ。」
「いいけど、どうして?」
「夜中にそんなもんがギシギシ鳴ってたら気味悪いだろう。」
「そう言われればそうだね。うん、外すことにするよ。」
「それと殿下、俺たちも本番に向けて特訓しといた方がいいんじゃないか。」
「剣と魔術両方かい?」
「そうだな。幽霊か何だか知らねえが、歯向かって来るかも知れねえからな。」
「じゃあ、今日から早速、ドウェイン君と一緒に鍛錬しようか。」
「一緒に鍛錬してくれると僕も嬉しいなあ。やっぱり、一人じゃ辛い事もあって・・・」
ということで、放課後の訓練場。
ローランド殿下も引っ張って来た。
「鍛錬なら、ドウェイン君に従った方がいいね。」
「相手が幽霊なら魔術の方が有効かも知れないけど、人体模型は物理が良いかもしれない。だから、両殿下は魔術、僕とニコラス君は剣術主体の鍛錬でどうかな。」
「じゃあ、取りあえずそれで行こう。」
二人づつペアになって訓練を開始する。
「でも、ローランド殿下にまで手伝ってもらって申し訳ないね。」
「まあ一応、俺も副会長だしな。でも、できれば女の子と肝試しの方が良かったな。」
「言うと思いましたよ。夏の交流会には肝試しもあるみたいですよ。」
「いいねえ。楽しみだ。」
そう言いつつ、二人で魔法の発動訓練を行う。
ニコラス君とドウェイン君の二人も実戦形式の打ち込みをやっている。
「俺が火でミッチェル殿下が水か。まあ、良いバランスだな。」
「ジェームズ先生は風だったよね。」
「俺は苦手だけど一応土だし、ドウェインは風だったな。」
「そうだよ。」
「一応は四属性揃ってるんだな。」
「闇と光はいないけどね。」
「闇はダメだろ。除霊ならきっと光だと思うぞ。」
「でもルシアさんは生徒会じゃないし。」
「教会の仕事ってことで受けてくれないかな。」
「包丁が飛んでくるんだぜ。聖女様に何かあったら責任問題だ。」
「でもさあ、幽霊って本当にいるの?」
「そうだよね。みんな幽霊の存在を信じて疑ってないような空気だったよね。」
「魔法や魔族がいて死霊術さえあるんだ。幽霊くらいいてもいいだろ。」
「確かにそうだね。」
「それで、七不思議のどれから攻略するの?」
「説教する校長が一番安全じゃないか?」
「俺は説教なんてまっぴら御免だぜ。」
「じゃあ、フラワーチャイルドにする?」
「いや、あれはトイレに引き込まれるって聞いたぜ。あれと包丁は危険だ。」
「じゃあ、勝手に鳴るピアノにする?」
「まあ、音が鳴ってるだけなら、そう危険は無いかもな。」
雑談しながら魔法を発動させていたが、そろそろ魔力的に限界が近付いてきたので鍛錬を終了する。
「それにしてもローランド殿下の魔法制御の技術って凄まじいよね。」
「そう言ってもらえると嬉しいね。」
「さすが魔法大国って感じだよ。でも、何でウチに留学することになったの?」
「ああ。去年開かれた王宮のパーティーで私の婚約者が別の男と関係を持ってねえ。俺が逆上して相手の男の髪の毛だけを燃やす騒ぎを起こしてしまったからだよ。」
「ほとぼりを冷ます感じ?」
「だと思うよ。急に決まったからね。」
「でも意外だなあ。浮気なんて笑って許しそうなのに。」
「そうだよな。互いに好き勝手できるチャンスなのに、馬鹿だよな。」
「ということは、今の殿下はそのときの反動なのかい?」
「反動というよりは、秘めたる才能が開花したって感じ?」
「俺はやっぱり妻一筋じゃねえとな。」
「ああお疲れ。ニコラス君もブレないよね。」
「多くのご令嬢を楽しませるのは、男の甲斐性ってもんだ。」
「いいや、一人の女性を愛し続けることこそが、男の甲斐性だ。」
「なかなか言うねえ。未来の宰相様。」
この二人、似ているようで何かが決定的に違うよね。
そんなことを思いながら初日の鍛錬を終わる。
そして、第一回の調査が5月25日に決まった。




