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新入生歓迎パーティー

 さて、生徒会は新役員選出後、慌ただしく活動を開始した。


 新入生歓迎を入学したての私が旗振り役として準備するのは違和感しかないが、まだほとんど交流の無い上級生との顔つなぎは、単なる学校行事というだけでなく、将来の政治や社交にも繋がる大切なことだろう。


 そして5月8日、ついにパーティー当日を迎えた。

「本日は生徒会主催の歓迎パーティーに集まってくれておりがとう。新入生にとってはこの一ヶ月、新しい環境に慣れるために苦労したと思うが、上級生、そして学校関係者と親睦を深め、さらに円滑な学校生活を送れるように、そして先輩方には新優勢を知り、さらに親睦を図っていただければと思う。それでは、夜の一時、お楽しみあれ。」

 こうしてパーティーは華やかに始まる。まあ、料理は食堂のアレだが・・・


「さすがにこの人数となると、立食でも少々窮屈ですね。」

「そうですね。四百人ほど入っていますからね。」

 生徒会役員は、舞台下に追いやられている。


「まあ、俺は腹が膨れればそれでいいいがな。」

「ニクラス君は全く味に頓着しないよね。」

「食事で大事なのはガッツリ食えることだぜ。」

「まるで軍人みたいだな。」

「ところで、ローランド殿下の姿が早速見えなくなってますが。」

「彼は必ずご令嬢と一緒にいる。彼を探すなら男子を見ていてはダメだ。」

「別の意味でダメですね。」



「お嬢さんたち、私もご一緒させていただいても?」

「こ、これはローランド・グレゴリー殿下。こ、光栄に存じます。」

「キャーッ!殿下よ!」

「私たちの所に来てくれたわ!」

「君たちのような麗しのご令嬢にお近づきできて、私も嬉しいよ。君たちの瞳に乾杯。」

「キャーッ!すてきー!」

 一人倒れた・・・


 あの一帯だけはハートやらバラの花が乱れ飛んでいるかのようだ。

 実際、アニメなら飛んでるはずだ。少なくともご令嬢たちの目はハートだ。

 何て思ったら沢山のハートが本当に飛んだ。多分、殿下の魔法だろう。

 天才魔術師は自称じゃなかったらしい。


「殿下、是非、私とダンスを!」

「お嬢さんたち、さすがに全員とは無理だけど、曲数が許す限りできるだけ多くの人とお相手するからね。」

「キャーッ!」

「ありゃあ、何かの見世物かい?」

「一応、生徒会副会長だよ。」

「ちょっとやり過ぎ感あるね。」

「会長、そろそろダンスのお時間となります。」

 そう、今回の行事、エスコートは無いがダンスはある。

 エスコートが無いのは、学内の行事であり、招待客がいないからだ。

 ニコラス君やドウェイン君のように、婚約者が学外の生徒や、まだ婚約していない生徒も多いからだ。

 でも、親睦を図る目的でダンスは行われる。


「じゃあ、私も婚約者殿を探さないといけないな。」

 どうやら私が彼女に避けられているだろうことは察しが付く。

 しかし、ここで彼女と踊っておかないと、不都合も多い。そう思って会場内を見渡すが、彼女の姿が見えない。

「どこ行っちゃったかなあ。」

「まさかの欠席?」

「まあ、生徒会行事だから強制ではないけど、さすがに欠席者はいないんじゃない?」

「手分けして探すか?協力するぜ。」

「申し訳ない。頼むよ。」


 ニコラス君とドウェイン君にも協力をお願いして彼女を探していたら、柱の陰になるような位置にいた。

 この学校でも二人の王子を除けば一番高位の家柄を誇る彼女が、壁の花にすらなっていないというのも不思議な話だ。

 第一、隠れていても他の生徒は彼女の存在を把握しているだろう。

 あんなに注目されている柱が可哀相だ。


「ジェニファー嬢、ここにいましたか。」

「はい。殿下にわざわざ足を運ばせてしまい、申し訳ございません。」

「そろそろダンスが始まります。是非1曲、お願いしたいのですが。」

「分かりました。でも、体調が優れませんので、すぐにお暇できればと存じます。」

「体調が悪いなら無理しなくていいよ。じゃあ、ダンスの代わりに少し水でもいただいた方がいい。立っているのが辛いのであれば、馬車まで送るよ。」

「そこまでして頂く訳にはまいりません。」

「ブレンダさんだっけ?従者の方は?」

「明日から当校予定です。」

「そうか。じゃあ、そこまで送らせてよ。残念ながら主催者なんで、公爵家まではお付き合いできないけど。」

「いえ、いくら何でもそこまでしていただく訳にはまいりません。」


 そんな押し問答をしつつも、彼女を会場の外まで誘導することに成功し、上手く馬車に乗せた。


 役員選挙の時もそうだったが、こちらが遠慮していたら、彼女は私から遠ざかる一方なのだ。

 私自身、王族ということ以外にこれといったセールスポイントの無い人間なので、好かれなかったり嫌われたりすることはあるし、そんなのは前世で痛いほど経験がある。


 しかし、王子と公爵令嬢の婚約関係は、そんなことを行っていられるような軽い物ではないことも知っている。

 このくらいはマナーとして必須なのである。


「でも、これじゃあいけないよなあ・・・」

 会場を去る馬車を見送りながら、そんな言葉がつい、出てしまう。

 そして、会場に戻るとダンスが始まっていた。


 婚約者と踊らない以上、他の方とも踊らない方がいいだろうと思い、先生方に紛れて見物する。

 最も目立つ中央で踊っているのはローランド殿下のペアだ。

 そして、ニコラス君とドウェイン君は二人で踊っている。いいのかそれで・・・

 教師陣の中ではジェームズ先生と地理のヘレン先生がペアで踊っているだけで、他の先生はお酒に興じている。


「お疲れだったね。」

「いやあ、さすがに6曲踊りっぱなしは疲れるね。。」

「何かコイツ、ギシギシ五月蠅いんだよな。」

「ああこれ?エリート騎士養成ギブスだよ。バネの抵抗を利用して、筋力を付けるんだ。」

 こりゃまたえらい古いところからネタ持ってきたなあ。


「ドウェイン君、そんなものいつも着けてるの?」

「昨日からだよ。最近僕が反抗的だからって、父が自作したんだ。足にも着けてるよ。」

「そりゃあ大変だねえ。」

「いつか父より強くなって、父が身動きできなくなるくらいの凄いギブスを作って装着させてやるんだ。」

「いい目標ができたじゃないか。」

「それにしてもローランド殿下、元気だねえ。」

「本当に女友達100人ゲットしてしまうかも知れないな。」


 こうして、新執行部初のイベントは無事終了した。


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