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クラスの中心

 さて、入学後一ヶ月を過ぎ、新入生たちも新しい環境に慣れてきた。


 貴族同士、付き合いもあっただろうから、ある程度知り合いはいたのだろうが、地方暮らしを主体にしている家の出身者や下位貴族の出身者などは、自分の立ち位置を見定めるのに苦労したことだろう。

 そんな中、生徒会の役員改選も終え、各クラスの委員選出と相成った。


「では諸君。クラスから学級委員長及び副委員長、風紀委員、図書委員を選出する必要がある。誰か立候補する者はいるかね。」

「先生、図書委員って何をするのでしょう。」

「蔵書の管理や貸し出しなどだね。実際の仕事は各クラスの委員が交代で行う。」

「毎日じゃないのですね。」

「開館時間は昼休みのみだが、時折、放課後に書棚の整頓を行っているから、その時だけは帰りが少し遅くなるな。」


「風紀委員は毎日仕事があるのでしょうか。」

「生徒会が行う風紀強化週間以外は、毎日教室内をチェックし、特に学生として相応しくない身なりや行動をしている者を先生に報告してくれればいい。他の生徒も、何か気になることがあれば風紀委員に報告するといい。」

「分かりました。」


「先生、学級委員長は家柄で選ぶのでしょうか、それとも成績で選ぶのでしょうか。」

「どちらでもない。家柄だと他の生徒にチャンスがなくなるし、成績だとB組やC組の委員が格下ということになってしまう。」

「では、人徳ということでよろしいのでございますね。」

「そうだね。キャロライン君は随分自信ありげだが。」

「もちろんでございますわ。そして、委員長に立候補させていただきますわ。」

「そうか。では、委員長から順に決めて行くことにしよう。キャロライン君のほかに、誰か立候補者はいないかね?」


 誰もいない・・・

 ゴールドバーグ嬢は侯爵家出身だし、1年生はまだ試験をしていないので、誰が成績優秀者なのか互いに知らない。

 そんな中で、既にクラスでもかなり目立つ存在である彼女はかなり有力なのだが、その彼女より影響力が高いはずのフレミング嬢も手を上げない。

 先日の生徒会副会長辞退といい、どうしちゃったのだろう。


「誰もいないのかね?例えばジェニファー君とか。」

「いいえ、私には荷が重いと存じます。」

「うん、では、学級委員長はキャロライン・ゴールドバーグ君とする。」


 という感じで次々に決まっていく。

 いや、ゴールドバーグ嬢のパートナーとなる副委員長だけは誰も希望者がおらず、難航したが・・・

 そして、その後の授業の合間・・・


「お~ほっほっほ!やはり家柄と人望と美貌。この三拍子が揃っていたのは私一人でしたわね。」

 あんな笑い方する人、ホントにいたんだ。


「さすがはキャロライン様でございます。」

「私もキャロライン様を信じ、お慕いしておりました。」

「そうね。美貌と身分を併せ持つ才女なんて、神は何て不公平なのでしょう。」

「全く、神も嫉妬する実力と才能です。」

「このままいけば、来年は生徒会入りも固いわね。」


 嫌な予感しか無い。

 そして彼女は、あろうことかジェニファー・フレミング公爵令嬢の元に歩み寄っていく。

 ホント、頼むから止めてくれ。


「あら、こんな道端に石ころが転がっていまあすわね。」

 我が許嫁は静かに読書をしている。

「家柄しか誇るところのないどこかのご令嬢も、近頃は負けをお認めになられたのか、随分大人しくなりましたわね。」

「・・・・」

「まあ、ぐうの音も出ないようですので、余計なところでしゃしゃり出なければ、Aクラスに在籍することくらいは認めても良いでしょう。逆に公爵家のご令嬢がBクラスでは、我が国の品格が・・・あら失礼。シャレにならないようですのでこれにて失礼いたしますわ。ごめんあそばせ。」


 私は思わず二人の方に歩き出す。するとゴールドバーグ嬢もすぐに気付いたらしい。

 私と目が合った瞬間、さすがにマズいと思ったようで、彼女とその取り巻きたちは足早にその場を去る。


 しかしまあ、彼女の取り巻きを数えたら、ざっと6人もいた。

 このクラスは30名なので、グループとしてはかなり大人数だし、女子に限ると圧倒的多数だ。

 ,間違い無く彼女がご令嬢の中心人物だろう。

 揉め事に発展しなければいいんだけどなあ、と思いつつジェニファーに話しかける。


「大丈夫だったかい。」

「殿下、ありがとうございます。私なら大丈夫です。」

「そうか。何かあれば私を頼ってもらって構わないから、一人で抱え込む必要はないよ。」

「はい。ありがとうございます。でも、あのくらいはよくあることですので。」

「そうか。」

 彼女はとても落ち着いていて、心配は無さそうだ。

 これ以上会話が続かないことを悟った私は、みんなの元に戻る。


「何か、女子ってスゲえな。」

「でも、他の生徒達はみんなドン引きしてるよ。」

「俺もさすがにアレはねえな。」

「ローランド殿下ですら無理ですか?」

「俺は意外に相手を選んでるんだぜ。中身も大事だからな。」


「しかしあの二人、少し注意して見ておかないといけないね。」

「僕はあの空間に入って行く勇気がないよ。」

「お前が一番強そうだけどな。」

「でも、あれは尋常じゃ無いライバル心だったよ。」

「そうだね。騎士同士だったら間違い無く決闘になってたね。」

「だが、殿下は婚約者だから、守ってやらねえとな。」

「分かってるよ。できるだけ目を離さないようにするよ。ところで、ローランド殿下は婚約者がいないって話は聞いたけど、意中のご令嬢はいないの?」

「とにかく今は親しい女友達をたくさん造る時期だな。それは俺が王になった時の外交カードでもあるしな。」

「じゃあ、バレッタにはいないの?」

「いない。まあ、ここでいい子が見つからなければ、バレッタに帰って考えるさ。」

「随分気楽だねえ。」

「心配しなくても、ミッチェル殿下の婚約者だけには手を出さないよ。」

「俺のジュリア-ナにも手を出すなよ。」

「知らねえし。その前に紹介しろよ。」

「俺だって一度しか会ったことねえんだよ。」


 まあ、コイツらがまだまだだっていうことは分かった。

 それと、クラスの中心がゴールドバーグ嬢だってことも。


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