新生徒会発足
その後、生徒会役員候補を再検討した結果、もう一人の副会長はローランド・グレゴリー王子、監査には2年生のクリフ・フォースブラッド伯爵令息が選ばれた。
そして、本来の投票日の翌日、5月1日全校生徒の前でお披露目となった。
「この一年間、生徒会活動にご協力頂き、誠にありがとうございました。私たち三年生はこれで後進に道を託し、卒業後を見据えた勉学に励むことになります。そして、これからの一年、この学校の舵取りをする新役員を代表して、ミッチェル殿下にご挨拶いただきます。」
「皆さん、この度は慣例により王族である私が生徒会長を務めることになりました。1年生が会長ということで、戸惑う声もあるかとは思いますが、前生徒会長を始め、歴代役員の方々が築いた伝統を汚すこと無く、健全な学校運営に邁進したいと思いますので、皆さん、ご協力の程、よろしくお願いします。」
場内から拍手が起こり、新旧役員が壇上で互いに握手を交わすと、さらに拍手は盛り上がる。
新執行部のお披露目が終わり、生徒会室に戻る。
私以下、新しいメンバーは前日にようやく全員の顔合わせができた程度であり、十分な準備ができなかったが、生徒会を去る方々にお茶とお菓子で簡単に慰労する。
「会長、お疲れ様でした。」
「殿下、ありがとうございます。しかし、これからは殿下が会長ですので、私の事はゴードンとお呼び下さい。」
「では、ゴードン先輩、一年間お疲れ様でございました。」
「殿下にそう言っていただけるなんて光栄です。本当にいい時に会長ができたなと思います。」
「それは照れくさいですね。でも、ご卒業されてもパーティーなどでお会いすることも多いですし、今後とも、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、良いご縁だったと思いますし、入学時にお伝えしておけば、もっと余裕をもって新執行部を組織できただろうと思うと、申し訳ないような気もします。」
「いえ。いずれこうなったのでしょうから、お気になさらないで下さい。」
「それとオリヴィア、ケント、経験者としてしっかりやってくれよ。」
「もちろんです。」
「それと、グレゴリー殿下。急なお話を承諾頂き、ありがとうございました。」
「いやあ、さすがにまさかとは思ったけど、クラスメイトも多いし、何とかやってみるよ。しかし、留学生でも役員になれるんだねえ。」
「むしろ副会長で申し訳ない。」
「いいよ。私が会長になる訳にはいかないし、気にしないよ。」
「では、このメンバーで一年間、よろしく。」
「それで会長、早速ではありますが、新入生を交えての懇親会を開催する必要がございます。」
「そう言えば、そういった行事は無かったですね。」
「はい。例年、新執行部が行う最初の行事と位置付けられています。」
「この時期になると、一年生も落ち着くだろうというのが理由です。」
「じゃあ、早速忙しいんだね。普通のパーティー形式でいいのかなあ。」
「そうですね。全校生徒が集まりますので、ダンスは会場の広さから無理ですが、立食形式で2時間程度行います。」
「出し物は特にないのかな。」
「昨年はありませんでしたね。その分、料理は多めに準備する必要があります。」
「そうだね。食事メインの懇親会だからね。」
「料理の準備は例年、食堂にお願いしています。」
そういったところは学校っぽいな。味は期待できないが・・・
「しかし何だな。食事を準備するだけじゃ。盛り上がりに欠けるな。」
「そうだね。僕だって忙しい方が鍛錬をサボれるしね。」
うん?何だか雲行きが・・・
「俺もパーティは派手な方が好みだな。」
「グレゴリー殿下もですか?」
「ローランドでいいぜ、ミッチェル殿下。」
「ああ。それじゃあ、一旦、各自持ち帰って、それぞれ案を考えてきてくれ。」
「そうだね。今個々で全部が決められる訳じゃ無いね。」
「じゃあ、庶務のニクラス君に料理を注文してきてもらおう。オリヴィア先輩、付き添いをお願いしたいのですが。」
「お任せ下さい。」
「それと殿下、各クラスの委員もそろそろ決まるでしょう。一度、委員会を開催した方が良いと思います。」
「なるほど。それは私が主体で考えて見るよ。それと、今年度の予算は配賦済みなのかな。」
「ええ、年度末に予算提示されています。」
「さすがはケント先輩。では、今回の資金の準備もよろしくお願いします。」
「分かりました。」
「しかし、いろいろやることがあるんだね。」
「年案スケジュールは前執行部が作成した案がありますが、概ね昨年度同様です。」
よく見たが、市内の清掃ボランティアとか孤児院訪問とか、いかにもっていうイベントが盛りだくさんで、とても忙しいことがよく分かる。
この合間に一般性とからの要望聴取や苦情処理をしたり、委員会を開催するのだ。
「特に夏休みの交流会が少し大変ですね。」
「生徒会役員は夏休みがあまり無いのです。」
「パーティーするの?」
「ブランドン郊外に学校所有の合宿所がありまして、そこで2泊3日の交流会を行うのです。」
「ってことは、お見合いみたいなものか?」
「そうですね。そういう目的の生徒もかなりいると思います。」
「そりゃあいいね。」
「ローランド殿下はバレッタ王家がお相手を決めるのではないのですか?」
「そんなん無視だよ。俺は自分で納得した相手じゃないと嫌だね。」
バレッタの王室って随分自由なんだなあ、と思いつつ初日を終える。