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最終話:みんなのスペシャルな恋路の果て

 そして、更に時は過ぎて6月になった。


「ジェニファー、とても綺麗だよ。」

「ありがとうございます。お父様、お母様。」

「ほらバーバラ、泣いてばかりいないで、この子の晴れ姿を十分見てやってくれ。」

「ええ、もう感無量で・・・」

「お母様・・・」

 母子はしっかりと抱き合う。


「お父様、お母様、たくさんのご心配とご迷惑をお掛けしましたが、ジェニファーは今日、王家に嫁ぎます。今日まで本当にありがとうございました。」

「いいの、いいのよ。母さんはあなたが幸せなら、それだけで・・・」

 母はそれだけ言うのが精一杯だった。


「私も感無量だよ。お前の晴れ津方を見ることができただけでもう、何も言うことは無い。」

「でも、王家にも公爵家にも大きな傷を負わせてしまいました。」

「その分、これから両陛下と殿下にご恩返ししないとな。」

「はい。全力で頑張ります。」

「うむ。そろそろ時間だ。殿下にもご披露せねばな。」


 ジェニファー達は控え室を出て、聖堂に移動する。


「ジェニファー、とても綺麗だよ。」

「殿下、ありがとうございます。殿下もとても凜々しいですよ。」

「朝から緊張しっぱなしだけどね。」

ジェニファーはミッチェルの耳元でささやく。


「二度目でも緊張されるのです?」

「そりゃね。でも、エスコートとかは任せて。多分、大丈夫だから。」


 そして、聖堂内に両陛下を始めとする王族や宰相、大臣を始めとする首脳、ローランド殿下を筆頭とする来賓やニコラス君達頼りになる友人たちの前で神に祈り、指輪を交換して永遠の誓いを立てる。

 儀式は滞り無く終了し、参列者の方に向き直る。


「皆、本日我らが二人の婚儀に参集してくれて感謝する。明日の立太子を経て正式に王太子夫妻として社会にデビューするが、国のため、民の為に労を厭わず、良き人として貢献していくことを妻共々ここに誓う。とは言え、我ら二人はまだ指揮を終えただけの若輩者。これからも足りぬところあらば叱咤激励してくれるとありがたい。」


 弟と妹のエスコートで聖堂を出た後、オープンの馬車でパレードを行った後、城内で披露宴が行われる。


「結婚おめでとう。」

「ローランド殿下、ありがとうございます。殿下も冬には挙式ですね。」

「ああ、こちらも順調だよ。ただ、仕事はやったことない事だらけで大変だけどな。」

「でも、お二人の仲はここまで伝わってきてますよ。」

「まあ、王宮も国民も、ムッツリな俺しか知らなかったからな。あまりの変貌ぶりに大騒ぎだ。」


「確かに、この世界に来て両陛下に会ったの初めてだったんでしょ?」

「ああ、絶句してたぜ。全て聖女様の教えの賜、で乗り切ったけどな。」

「ホント、ローランドは無茶ぶりばかりで疲れるわ。まあ、お陰でアタシの素が早速バレて、却って楽だけどね。」

「私たちもあなたの素は転生の事実が分かるまで知りませんでしたから。」

「いいわねえ。綾音お姉様は素が上品で。」

「いいえ、元のジェニファーの記憶も大きいと思いますわ。」


「ところで、マルガレーテ殿下との挙式はいつなんだ?」

「丁度一年後だよ。」

「そうか、確かに丁度いい頃合いだな。」

「ああーっ!ルシアちゃんとローランド君だ~」

「あら、ミントちゃんたち、久しぶりね。」


 20人を超える妖精達が主賓席の周りを飛び交うと、見慣れていない出席者からは大きなどよめきが起きる。


「なになに~、ルシアちゃんたち、またここに住むの~。」

「ゴメンね。すぐに帰っちゃうけど、たまにはバレッタにも遊びに来てね。」

「うん。テンコー君に運んでもらう~。」

「ああ、イリュージョンでひとっ飛びさ。」

 向こうではご先祖様が父に説教かましてる・・・

 フラワーさんは、クレア先生と何か揉めてる・・・


「ああ、やっと挨拶できるぜ。」

「ニコラス君達もありがとうね。」

「元父がうろついてるんで、なかなか主賓席に近付けなかったんだよ。遅くなってすまんな。」

「ははは、そろそろ仲直りしたら?」

「いや、近々暗殺してやろうかと思ってる。」

「やめてよ。僕の師匠なんだから。」

「ドウェイン、いい師を持たないと長い人生、苦労するぞ。」

「その言葉、そっくりそのままニコラス君に返すよ。」


「二人は来年の挙式だよね。」

「アナが卒業したらすぐに式を挙げるんだ。」

「ニコラス君は二人同時なの?」

「まあ、どっちも侯爵令嬢で差を付ける訳にはいかねえからな。」

「ジェニファー殿下、取りあえず、おめでとうございますと言っておきますわ。」

「ありがとうございます。キャロライン様。」

「ようやく私のライバルに相応しい、堂々たる振る舞いが板に付いてまいえいましたわね。」

「おいおい、未来の王妃様に失礼じゃないか?」

「ニコラス、高貴な物にはそれに相応しい振る舞いが求められるのですわ。」

「その通りですね。ジェニファー様、これからもご指導のほど、よろしくお願いしますわ。」

「よろしいですわ。生涯を賭けて、殿下の一番近くで、殿下をお支えいたしますわ。オーッホッホ!」


「ではキャロ、旦那様のことは、このジュリアーナにお任せを。」

「それとこれとは別ですわよ。半分、半分だけお願いしますわ。」

「仲がよろしいようで。」

「ずっとこれだぜ。眠りに落ちる瞬間まで口が動いてるんだ。」

「その全てに反応してそうなニコラス君も相当なものだと思うよ。」


 この後、ジェニファー、マルガレーテ殿下の二人とダンスを披露し、明るく華やかなパーティーは最後まで笑顔と祝福に溢れた。



 そして今日は初めての結婚記念日だ。

「おめでとうジェニファー。そしてありがとう。」

「私の方こそありがとうございます。」

「すっかり王子妃としての風格も出てきたね。」

「マルガレーテ殿下には敵いませんけど。」

「彼女は生粋の王女だからね。」


「彼女との婚礼も、ついに来週ですしね。」

「ああ、それで、彼女はここに来ないのかな。」

「今はお菓子を一生懸命控えているそうですよ。」

「ああ、せっかくのドレスだもんね。」

「また、皆さんにお会いできまあす。」

「ああ、みんな元気そうだし、楽しみだね。」


 ジェームズ先生とクレア先生が結婚し、すぐにお子さんもできた。

 何より驚いたのは、先生が5年ぶりの論文の中で、異なる属性魔法の反発現象を利用した魔力増幅法を発見、提唱したことである。

 やればできたんだなあ・・・


 そしてニコラス君はキャロライン夫人、ジュリアーナ夫人と結婚し、王都でも評判の賑やかな夫婦となっている。

キャロライン夫人は我が妻をよく補佐してくれるし、ニコラス君も騎士団第二大隊長として、早くも頭角を現している。


 私の出張時はいつも護衛をしてくれる頼りになる男だ。

 ドウェイン君もアナベル夫人と初々しい家庭を築いた。

 本人は実父との同居も爵位継承も嫌がっているが、まあ、仕方あるまい。


 バレッタ王国では新王太子夫妻と愉快な仲間達が、喧嘩するほど仲がいいを実践してる。

 聖女様も今ではバレッタの聖女として、国民の熱い支持を受けている。


 ミントやテンコーたちも、普段は学校で暮らしているが、休みの日にはよく遊びに来る。 陛下はご先祖様が苦手なのか、逃げ回ってるけど。


 そんな感じで、みんながそれぞれの幸せを掴むことができた。

 この世界は、「私のスペシャルな恋路を邪魔する方は、速やかにご退室願いますっ!」という名前らしいが、誰の邪魔も、誰も退室することなく、理想のエンディングを迎えることができたと思う。


 そして、元日本人も、その仲間も、共に協力しあってこれからも幸せであり続けると思う。

 そう、いつまでも。



-完-

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