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ローランドルートのクリスマス

「殿下、さすがに私はお邪魔だったのではないでしょうか。」

 今日はクリスマスイブ。

 私はジェニファー、マルガレーテの二人とともに、ロマンティックな夜という、何とも不慣れな時を過ごしている。


「いや、マルガレーテ殿下にもいて欲しい。これからずっと三人なわけだから。」

「では、イブとクリスマスを毎年交互にどちらかと過ごすというのはいかがでしょう。」

「結婚すれば、いや、お互い子供ができたらまた三人一緒になるだろうね。」

「それもいいですね。」


「殿下、ジェニファー様、ありがとうございます。」

「それにしても、クリスマスらしい、静かな夜だね。」

「はい。とてもロマンティックでいい夜だと思います。」


「みんなもいい夜を過ごせてるかな。」

「ニコラス様のところはとても賑やかで、またドウェイン様とアナベル様がタジタジになっておられると思いますよ。」

「対照的だもんなあ。早く爵位をあげて別居させてあげなきゃ。」

「そうですわね。」



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「さあキャロ、ジュリー、飲め飲め。」

「まあニコラス。これではまるで庶民の酒場ではありませんか。」

「いいじゃねえか。酒は飲んで騒ぐもんだぜ。」

「せっかくのロマンティックな夜ですのに。」

「ロマンスは似合うヤツに任せとけばいいんだよ。なあドウェイン。」

「えっ? せっかく目立たないようにしてたのに。」

「もしかして、ロマンスか?」

「少なくともニコラス君よりは似合ってるよ。」


「そのいかつい顔と太い腕と首でか? やめとけやめとけ。お前だってどっちかって言うとこっち寄りだ。」

「そんなあ・・・」


「でも、ニコラスと私の父なら、ロマンスになるかしら。」

「陰険な夜になると思うぜ。」

「僕たちの周囲であれば、強いて言えばジェームズ先生かなあ。」

「ありゃ今頃、クレア先生に説教喰らってるだろ。」



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「今日この夜を、君と迎えられたことが何より嬉しいよ。」

 静かな部屋にグラスが合わさる音だけが響く。


「もうすぐ付き合い始めて半年かしら。」

「そうだね。僕は今まで半年で捨てられてきたから、そろそろ愛想尽かされちゃうかも知れないけど。」

「あら? 生涯賭けて借りを返すんじゃなかったの?」

「もちろんだよ。僕は今まで散々間違ってきたけど、今度は間違わない。いや、また間違うかも知れないから、その時は叱咤して欲しい。」

「激励もするから心配しないで。」


「でも、クレアみたいな魅力的な人がどうして今まで独身だったんだい?」

「女で教育者って言うと、殿方が離れていくのよ。」

「だからといって、何も僕で無く」

「ジェームズ。」

「はい・・・ごめんなさい。」

「クリスマスは、そうじゃないでしょ。」

「そうだ。そうだよね。」


「でも今日のお酒、いいの準備してくれたのね。合格よ。」

「プ、プレゼントもあるよ。」

「もう・・・でも、今日だけは遠慮無くもらっておくわ。」



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「初めての二人きりの夜に、乾杯。」

 少しの沈黙が初々しい。


「まさかローランドとこんな静かな夜を過ごすとはね。」

「俺だって本気で騒ぐ時と愛をささやく時は使い分けるさ。」

「他のご令嬢が見たら嫉まれそうだけど。」

「まあ、多少はな。」


「それで、全員と別れるつもりなの。」

「もう決めたことだからな。」

「別にアタシはハーレムが絶対ダメって言ってるんじゃないの。ローランドだって王族なら側室を持つだろうし、そのくらいは分かってるわ。」

「意外だな。お前はそういうことは潔癖だと思ったんだけどな。」


「違うわ。それはローランドが本気に見えなかったからなの。囲うなら生涯愛情を注いで。責任を取って。臣下や民に後ろ指を指されるようなことはしないで。ただそれだけなのよ。」

「それなら全員と別れて正解だったな。」

「やっぱり遊びだったの?」


「俺は遊び半分で生きてきた男だ。それ以外はできないと思ってた。だが、お前と一緒に居て初めて分かったんだよ。だから、今まで遊び半分だったことは許してくれ。」

「分かったわ。その代わり、アタシをハッピーエンドにしてね。」

「ああ、もちろんだ。」


 こうしてそれぞれの夜は更ける。


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