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絶望の淵で

「ニコラス、私なら大丈夫ですわ。ここから下がりなさい。」

「そういう訳にはいかねえ・・・ってお前、自慢のドリルが焦げてるぜ。」

「そんなことは些細なことですわ。ジュリアーナさんと一緒に逃げなさい。」


「お前はどうするんだよ。」

「高貴な立場の者がおめおめと逃げ出す訳にはいきませんわ。」

「そりゃ俺だって同じだろ。」

「あなたは勘当されて子爵家の次男に過ぎませんわ。」

「そういう問題じゃねえだろ。」


「それに、あなたはこの世界にとって重要な人なんでしょう。どうやら私はそうでないようですけど。」

「私も残りますわ。相棒を信頼してもらいたいものですわね。」

「おいおい、嬉しい事を言ってくれるが、俺はお前たちを守るのが生きる使命だぜ。」


「三人とも大丈夫か。」

「ああ、俺よりあっちのドウェインの方が余裕無さそうだ。」

「分かった。あっちは俺に任せろ。」

「ああ、恩に着るぜ。」


「もう終わりか? 少しだけ話をする時間を設けてやろう。少しは寿命が延びたんだから感謝しろ。」

「別に俺たちの寿命はお前に左右されてないぜ。」

「私が本気を出せばお前たちなど一瞬で消し炭にできるのにか?」

「そう言うヤツに限ってできた試しは無いけどな。」

「ニコラスといいお前といい、口が減らんヤツだ。ならばお前たちから消してやろう。心配しなくても主役は最後まで生かしておいてやるよ。」



「ジェニファー嬢はここにいて。私も前に出る。」

「殿下、なりません。行くなら私が行きます。」

「いや、君はルシア嬢とここにいるんだ。」

「でも・・・」

「仲間と婚約者を失う訳にはいかないからね。」

 私は掛け出し、こちらに走ってきたルシア嬢とすれ違う。


「ミッチェル殿下。」

「ルシア嬢はジェニファーと一緒に安全な所に逃げて。」

「待って下さい。殿下は。」

「私は主役じゃ無いが、立場は一番上なもんでね。」

 私はより近いドウェイン君の方に駆け出す。


「大丈夫かい、ドウェイン君、マルガレーテ殿下。」

「うん、何とか生きてるよ。」

「ドウェイン様が私を庇って・・・」

「二人とも大丈夫だから。」


「取りあえず、消し炭第一陣は全員前に出てきたようだな。じゃあ、心置きなく50%の力を出させてもらうよ。」


 ゴッドスピードが両の手を握りしめて力を込めると、背中から黒いオーラが出てくる。

 同時に強い風が吹いてきて立つのも困難になる。


「どうだね。本気を出せば国一つくらいは蒸発させることができるが、敢えてセーブしてやってるんだよ。」

 そういう間にもオーラはどんどん広がり、外の光は遮られる。


「さあ、絶望を感じながら死ぬが良い。私の黒歴史、ここに終わりを告げる。」

「ローランド!」

 振り向くと、ルシア嬢がローランド殿下の元に駆け寄っている。

 そして、ここにはジェニファー嬢が駆け寄ってきた。


「どうして・・・」

「私は今まで保身のためだけに生きてきましたが、私がこのような事態を招いたようなものです。せめて、責任は取らせて下さい。」

「いや、臣民の命は私の責任なんだけど・・・」


「おいおいルシアちゃん。逃げろって」

「ローランド、死んじゃダメ。アタシがローランドを選ぶからローランドもアタシを選んで!」

「おい、何言ってんだよ。」

「いいから! 今すぐアタシに愛をささやいてっ!」

「そんな愛の告白、初めてだな。」

「いいから早くっ。」

「分かった分かった。ルシア、お前の気持ちは分かった。このローランド、その気持ちを受け止めよう。」

「ありがとう。好きよっ!」

「グッ、アアッ、何だ、何故だ・・・」

 先ほどまで広間を覆っていた黒い帳が急速に薄く小さくなってきている。


「ルシアさん、お願い。ニコラスを。」

「ええ、任せて。」

「ミント、テンコー、掩護を頼む。」

「ミッチェル殿下、俺も手伝うぜ。」

「ローランド殿下、ありがたい。」

「何だ、力が抜けて行く。どうして、こんな・・・」


「残念だったわね、ゴッドスピード。アタシがルートに入ったからにはもう、勝手な事させないわよ。」

「な、何を、そう言うことかっ!」

「愛の力の前にひれ伏しなさい。エターナルフラッシュシャワーッ!」

 広間が一気に元の明るさを取り戻す。


「消し炭になるのはあなたの方よ。シールドアップシャドーッ!」

 ジェニファー嬢からも闇魔法が発動される。

 どうやら直接ぶつかってないので、二つの魔法は打ち消し合わないようだ。


「グッ! グヌヌッ、何のこれしき・・・」

「これで終わりだ! 聖剣フルンティングッ!」

 いや、別に剣の名前を言わなくても良かったのだけど、みんなが盛り上がってたんで・・・

 私は、渾身の力でゴッドスピードの胸を貫いた。


「な、何故、こんな、ことに・・・」

「やっぱりニコラス君が正しいよ。お前は余計な手数を掛けすぎだ。」

「シ、シナリオ・・・」

「安心しろ。この世界はこの世界の住人が作る。」

「無念・・・」


 ゴッドスピードは息絶え、その姿はゆっくり消滅していく。


「終わったな。」

 私はその場にへたり込んでしまう。

 ちなみに、聖剣はやっぱり折れていた。


「みんな、勝ったんだよね。」

「ああ。ルシアさん、ドウェイン君の治療も頼むよ。」

「はい。」

「ルシアさん、ニコラスのこと、ありがとう。礼を言います。」

「みんな無事で良かったです。」


「テンコー、ミント、フラワーさん、ご先祖様、大丈夫でした?」

「ミントたちは全然平気~。ヴィヴィアン様に守ってもらってた。」

「アタシたちは危うく浄化されるとこだったわ。」

「うん。光が当たらないかとヒヤヒヤしてたよ。」

「とにかく無事で良かった。みんな、帰ろう。」


 みんなの治療が終わるまで小一時間かかったが、その後何も起こらなかったので、更なる裏ボスの出現は無いと判断して撤退した。


 幸い、外の騎士達も全員無事だったのでホッと胸をなで下ろしつつ帰路に就く。



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