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ああ、このパターンもあったね・・・

 ドンッ!


 王の間にあった石柱の一つが倒れ、土煙が立つ。

 いや、何で土煙なんかが立つんだろう・・・


 それはさておき、煙が張れると、そこに一人の男が立っていた。

 服装はちょっと怪しげなスーツで、どうみてもバブル時代の地上げ屋だ。


「何だお前は。」

「ちょっと大人しくしててもらおうか。」

 周囲が透明な何かで覆われてしまった。

 私も身動きが取れないが、みんなも同じなのだろう。


「何しやがる。」

「君たちは相手に何も喋らせずに、いきなり攻撃を仕掛けるみたいだからねえ。特に、ニコラス君。」

「ほう? 俺を知ってるのか。」

「知ってるも何も、私が生みだした大切なキャラだからね。それにしても君たち、いろいろやらかしてくれたじゃないか。」

「やらかしてるのは私たちでは無いと思うが?」


「何を言うか。ルシアは誰も攻略しないしジェニファーも悪役としての役割をちっとも果たそうとしない。それに何だ、あそこの妖精や亡霊は。そんなのキャスティングしてないぞ。お陰でシナリオがメチャクチャだ。どうしてくれるんだ。恋愛の無い恋愛シミュレーションなんて笑い話じゃなく笑い物だ。」


「ところで、お前は俺を知ってるみてえだが、誰だお前は?」

「私の名はゴッドスピード。この世界の創造主だよ。」

「ゴ、ゴッドスピード・・・先生・・・」

「知ってる人?」

「いいえ、でも、彼の言っていることは本当かもしれません。」

「この世界は全て私が設計し、君たちも私がデザインしたものなのだよ。」

「ああそりゃどうも。」


「それにしてもニコラス。お前、随分粗野なキャラになったな。」

「誰がお前なんぞの思惑に乗るんだ?」

「フンッ、それとローランド・グレゴリー。お前も随分この世界観をぶち壊してくれたな。」

「これは素なんだけどな。」

「それとルシア!一番罪深いのはお前だ。お前のせいで話が一向に盛り上がらず、私の作品で最もいいねが少ない黒歴史になったじゃないか!」

「知らないよ、そんなこと・・・」


「まあ、問題児はもう一人。ここにはいないがジェームズ・バルフォアも万死に値する。何だ、あのキモキャラは。私の世界はギャグじゃないんだぞ!」

「確かにギャグだな。」


「ということで、全てをリセットするために、私はこの世界に降臨した。」

「じゃあ、さっさとケリ着けようぜ。」

「私はお前たちが束になっても敵わんが、いいのか?」

「じゃあ、戦わないって言えば、大人しく去ってくれるか?」

「去るわけ無いだろう。」

「ところで、ゴッドスピードってどういう意味なんだ。」

「グッドラックに近い意味だ。では、地獄に行ってもらおう。」


 ゴッドスピードが右手を大きく振り下ろすと身体の自由が戻る。

 しかし同時に、彼の手から夥しい数の魔方陣が現れ、様々な毒性の魔術が降り注いでくる。

「全員、防御態勢を取れ!」


 もう攻撃どころでは無い。

 逃げるので精一杯、いや、男性陣やテンコーたちならともかく、女性陣には酷な話だ。


 私は側にいたジェニファー嬢を庇うので精一杯だ。同じようにニコラス君はジュリアーナ嬢とキャロライン嬢、ローランド殿下はルシア嬢、ドウェイン君はマルガレーテ殿下を守っているが、全ての魔法攻撃を打ち払える訳では無い。

 何せ、ヤツの攻撃は全属性なので、打ち消せない物が必ずあるのだ。


「テンコー、フラワーさんたち、攻撃は任せた!」

「任せといてっ!」

 相変わらず間断無く魔法が降り注いでくるが、テンコーやミントたちの攻撃が煩わしいらしく、ヤツの手数も減って来ている。

 しかし、みんなダメージを負っているし、このままではジリ貧だ。


「キャーッ!」

「危ねえっ!」

 ニコラス君がキャロライン嬢を庇う。


「だ、大丈夫ですの?」

「こ、このくらい、大丈夫・・・に決まってんだろっ・・・」

 なおも立ち上がり攻撃を防ぎ続けるが、さすがの彼も深手を負っているのは明らかだ。

 キャロライン嬢や私の隣にいるジェニファー嬢も魔法攻撃で応戦するが、ゴッドスピードは動きも早く、有効打はほとんど与えられていない。


「ルシアちゃん、大丈夫か。」

「ええ、もっと広い範囲に結界を張れるといいんだけど。」

「それよりは、みんながここまでたどり着いてくれる方がいいな。今のままじゃそう長いこと魔力が持たないだろう?」

「そんなことないよ。この程度何とも無いんだから。」

「もしそうなら、お前はミッチェル殿下の所まで走れ。ヤツの物理攻撃は俺が防ぐ。」

「何言ってんのよ。アンタを見捨てられる訳ないでしょ?」

「俺に構うな。勇者と聖女が生き残ればまだ何とかなる。行けっ!」

「アンタも来なさい。こんな時だけカッコつけてんじゃないわよ。」


「お前は知らないだろうが、俺は一度死んだことがあるんだ。大丈夫だ、きっと。」

「それならアタシだってそうだよ。だから二度目はダメ、みんなで生き残るのよ。」

「さすがは聖女様だ。だが、お前は一人で行け。」

「何で?」

「ニコラスたちを置いては行けない。」

「じゃあ」

「いい加減にしろっ、お前はこの世界の希望なんだ。」

「だって・・・」


「ははははっ!どうした、私はまだ力の1割も出してないのだぞ。」

「何言ってんだ、俺たちが本気を出していたとでも思っているのか?このキモ野郎。」

 ニコラス君は満身創痍ながら、まだ立ち上がる・・・


「ルシアちゃん、今だ、走れっ。」

 ローランド殿下はニコラス君の所に駆け出す。


「待って・・・」

「ルシアちゃん、シェリーとアンジェリカとキャシーとマライアと、えっと、とにかくみんなによろしく伝えといてくれっ!」


 ルシア嬢も私の所に駆け寄って来る。


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