表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/169

魔王バロールとの戦い

 私たち一行が魔王城に近付くと城門が開かれ、中から大軍勢が出てくる。


「早速お出ましか。」

 私たちが戦闘態勢を整えると、大将らしき者が前に出てくる。


「我は怠惰と司る魔、ベルフェゴール。こっちは淫魔スクブスである。」

「怠惰なクセにわざわざ出向いてもらって申し訳ない。魔王バロールを倒しに来た。中に案内してもらおう。」


「我らが素直に通すとでも思ったのか?」

「ここで俺たちと戦うより楽出来るぞ。」

「そうだよ。怠惰を司るなら、どちらがいいかは考えるまでもないよね。」

「確かに、それはそうだな。」

「隙ありっ!」


 ニコラス君がベルフェゴールに斬りかかる。

 騎士らしからぬ手の早さは徹底している。


「不潔、不快、ふしだらですわ~っ!」

 後衛からの魔術も容赦無く飛ぶ。

スクブスは女性からのヘイトを集めるようだ。

 まあ、服着てないし、当然か。


「よし、私たちも行くぞっ!」

 私とドウェイン君も前に出る。

 乱戦になると数に劣るこちらが不利だな、と懸念していたが、既にザコの大半はローランド殿下の範囲魔法が消し去っている。


「グワッ!」

 ニコラス君がベルフェゴールの腕を斬り飛ばした。


「めーんっ!」

「グッ!」

 ニコラス君がまるで剣道のような剣捌きでベルフェゴールを一刀両断する。

 所謂脳天唐竹割りというやつだ。ベルフェゴールは無言でただの骸となった。

 一方、スクブスの方は女性陣の容赦無い攻撃で跡形も無く消し飛んでいた。

 女子って怖いな、と思った。


「どうやら片付いたようだね。」

「しかし、魔王の手下も大した事ねえな。これじゃ前に戦ったオオムカデの方がよっぽど強いぜ。」

「それは、私たちが多くの実戦を経験したことで、レベルが上がったからですよ。」

「何だ、ゲームみたいだな。」

「それは・・・」


「ルシア嬢、それはそうと怪我人の手当を頼めるかな。」

「ええ、お任せ下さい。」


 こうして負傷者の手当、損害の確認と防御障壁の構築を済ませ、騎士と魔術師を拠点防衛のために残し、私たちだけで城内に踏み込む。

 そして、広い城内を探索して王の間にたどり着く。


「じゃあ、行こうか。」

 ローランド殿下が扉を破壊し、ニコラス君を先頭に大広間に入る。

 玉座には大柄な魔物が鎮座しているのが遠くからでも見える。

 私は剣を聖剣に持ち替える。


「マタ会ッタナ。聖剣ノ勇者ヨ。」

「はて? どこかで会ったかな。」

「オ前タチトハ既ニ二度、戦ッタ事ガアルハズダガナ。」

「知らんな。それよりその喋り方何とかならねえのか?聞き取りにくいぞ。」

「ナ、何ヲ不敬ナ。ソモソモ、我ヲ完全復活出来ナカッタ愚カナ人間ガ全テ悪イノダ。本来デアレバ我ハ全知全能、全言語完全習得済ミデアッタトイウニ。」

「大文字のFすら知って無さそうな勢いだけどな。」

「ヤカマシイッ!ソレニ、オ前タチノセイデ利キ腕ハ不自由ダワ魔剣ハ折レテイルワ散々ダゾ。ソノ上、ソコノ聖女ノセイデ脳ミソマデ不自由ジャ。」


「良いとこ無しだな。」

「誰ノセイジャト思ウテオルノジャッ!」

「だから知らん。」


「まあまあニコラス君。それで、お前を復活させたのは誰なんだ?」

「サアナ。我ヲ呼ビ出シタ者共ハ皆、我ノ贄ニシテヤッタカラナ。」

「ところで、お前誰だ?」

「我ガ名ハ魔王バロール。冥界ヲ統ベシ者。」

「殿下、確か親睦会の肝試しの時に戦った魔物もバロールと名乗ってましたよ。」

「でも、あの時は別に復活の儀式なんてしなかったよ?」

「ニコラス君が封印を壊しちゃったですけど・・・」

「ああ、そんなこともあったね。」


「バロールっていっぱいいるのか?」

「我ハ唯一無二の存在ダ。ソシテ、コレホド不敬ナ勇者モ唯一無二ダナ。」

「残念ながら、俺たちゃ魔物に尽くす礼儀なんて持ち合わせちゃいねえぜっ!」

 やはり先制はニコラス君の突撃だ。

 ドウェイン君と私が左右に、フラワーさんがちゃっかり後ろに回る。

 同時にルシア嬢が光のカーテンを展開し、ローランド殿下やキャロライン嬢の火魔法が飛んでいく。


「オ、オイ、待テ待テ、何ダ、卑怯ッ!」

 滅多打ちとはまさにこのことを言うのだろう。

 ヤツの魔剣にどんな力が宿っているかは知らないが、折れていてほとんど武器として役に立っていない。

 一方的に斬りつけられる様はいっそ哀れだ。


 そして、私が奮う聖剣フルンティングは殊更大きなダメージを与えていく。


「コイツ、他の魔物より弱いな。」

「バ、馬鹿ナ、オノレ、コンナハズデハ、コンナハズデハ・・・」

 バロールは前のめりに倒れる。

 よく見るとヤツの足首には鎖が巻かれている。

 きっとテンコーだ。

 彼は時間さえ与えれば何でもやってくれる。


「これで終わりだ、魔王バロール。」

 私は聖剣を振り下ろし、ヤツの首を落とした。


「グッ! オノレ・・・」

「コイツ、まだ生きてるぜ。前のもそうだったが、魔物ってこんな状態でも死なねえんだな。」

「そう言えばそうだね。」

「首が胴体から離れても死なないんなら、心臓の意味あるか?」

「血液を送り出すポンプの役割はあるんじゃない?」

「そのポンプが無くても生きてるけどな。」

「だから封印するしか無いんじゃない?」


「殿下、その方法知ってるのかい?」

「いや、聖女様なら知ってるんじゃない?」

「ルシア嬢、分かるか?」

「前回は頭、心臓、利き腕、その他の部分に分けて封印したと聞いています。」

「じゃあ、今回はもっと念入りにした方がいいんじゃないか?」

「後の管理が大変だと思うよ。」


「でもあれだね。魔王を倒したというのに、皆さん今一つ冷静ですよね。」

「達成感が得られるほど苦戦しなかったしな。ドウェインとの試合の方がよっぽど大変だからな。」

「僕以下の魔王って・・・」

「まあ、とにかくみんなおめでとう。」


 良く考えたら、遠征の目的を完遂したんだよね。

 解体作業を終わらせて、早く帰ろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ