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どうにか回避できたでしょうか?

 生徒会役員候補に名が上がることは予想しておりました。


 ゲームでは、ミッチェル殿下にしつこく付きまとい、盛んに生徒会入りを画策し、最後は結局やらかして追い出されたとは言え、殿下の婚約者であり公爵家出身ですから。

 でも、死の運命を回避するためにはシナリオどおりの行動を取るわけにはまいりません。

 それに、殿下はともかくヒロインに近付くのは非常に危険です。


 ジェニファーは彼女に対して様々な嫌がらせ、いえ、犯罪行為を繰り替えした挙げ句、断罪されることになるのです。

 それに、私自身の評判も悪い訳ですから、何かシナリオの強制力が働いた場合に、私が一方的に悪者に仕立て上げられる可能性もあります。とにかく、君子危うきに近寄らずです。


 来年、先輩二人が引退した後は、再び生徒会入りの話があるでしょうし、今回以上に断りづらい状況になるでしょうが、これからの一年で私の評判を含めて、どのように状況が変化するか、ヒロインがどのルートに入ったかによって身の振りを決めてもいいでしょう。

 そんなことを考えていると、メアリーとドロシーがやって来ます。


「お嬢様、本日も勉学、お疲れ様でございました。お茶のご用意ができております。」

「ありがとう。いただきますわ。」

 すぐにお茶とお菓子はセットされ、二人は私の斜め後ろに立つ。


「いつもありがとう。あなたたちの淹れてくれるお茶が一番美味しいと思うわ。」

「そんな・・・勿体なきお言葉でございます。」

「ありがとうございます・・・」


 二人は恐縮する。まだとても緊張しているようだ。

 それも無理も無い。私は忠実な彼女たちとの関係改善を心掛けているものの、まだこの世界に来て一ヶ月くらいなのだ。

 それまでの傍若無人ぶりからすると、まだ半信半疑だろうし、そうでなくとも立場が違いすぎる。

 彼女たちと本当の意味で信頼関係が築けるのは、まだ先のことなのだろう。

 今は、彼女たちの仕事を増やさないように振る舞うのが精々のところだろう。


「お嬢様、外は良い風が吹いているようです。少し開けましょうか。」

「そうね。今の時期が一番気持ちよい時期ですものね。お願いするわ。」

 ドロシーがすぐに窓を開けてくれて、そよ風が部屋の中に入ってくる。


「明日、天気がよろしければ、お茶をお庭に準備いたしましょうか。」

「そうね。でも、仕事を増やしてしまうのでは無いですか?」

「いいえ。私共はお嬢様の穏やかな笑顔を拝見することが、何よりの生きがいでございます。」

「私の顔色が生きがいになるほど、あなたたちには今まで酷いことをしていたのですね。」

「そ、そんな!も、申し訳ございません。何卒お許しを。」

「ああ、そういう意味じゃ無いの。ごめんなさい。」

 失敗してしまいました・・・


「メアリーもドロシーも最高のメイドよ。もちろん、この屋敷に勤めている者は皆、良き方ばかりですけど。」

「ありがとうございます。励みになります。」

「それで、ブレンダは今、どうしているか知らないかしら。」

「ブレンダ嬢は今、ご実家で再教育を受けておられると聞いております。」


 ブレンダ・カーリー。

 男爵家出身の従者で、ゲーム内ではジェニファーの手下として数々の犯罪において実行犯になってきた令嬢である。

 彼女のその後は語られていなかったが、主がギロチン送りだったのだ。無事であったはずがない。

 彼女にも謝罪し、仲良くなりたいのだが、同時に大きなリスクを伴う行為であり、なかなか一歩を踏み出せないでいる。


「でも、再教育といっても、彼女に落ち度があったわけでは無いわ。」

「旦那様は、従者の変更も含めてご検討中とのことでございます。」

「まあ、では、すぐにお父様とお話しなくてはなりませんね。」

 彼女の運命も変えてあげないといけない。


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


「あ~危なかった~!」

「お嬢様、いかがなさいましたか?」

「うん。学校の生徒会に危うく入れられかけたのよ。断ったけどね。」

「まあ!それは勿体ないことだと思います。」

「だって、教会の仕事もあるし、イリアと遊びにも行かないといけないし、勉強だって付いていくのがやっとなんだから。」

「でも、生徒会なんてとても名誉なことだと思います。」

「もうこれ以上の名誉なんていらないよ。」


 まあ、名誉がどうでもいいのはそのとおりだけど、それ以上にジェニファーと同じ空間にいることが耐えられない。


「それよりアニー。お菓子まだ~。」

「はいはい、今お持ちしますから待ってて下さい。」

「できればしっとりしたケーキがいいなあ。」

「本日は焼き菓子しかございません。」

「アタシの給料ってそんなに安いのかなあ。」

「それは・・・存じ上げませんわ。」

「アニー、隠しきれてないわよ。」

「いえ、ただ・・・これまでの借財がかなりあるのは事実のようです。」

「そうなのね。でも、お菓子はいいものを揃えて欲しいわね。毎日朝早くから働いてる訳だし。」

「そうですね。執事様に相談しておきます。」

「ケーキを出してくれたら、アニーに半分あげるわよ。」

「それを先に言って下されば。今すぐ相談して参ります!」

 アニーはパタパタと走り去ってしまった。


「ホント、毎日せわしない子ね。」

 でも、とにかく今日は乗り切ったからそれでよし。


 それにしても、生徒会ってあのメンバーだったっけ?


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