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合戦

 夜が明けて戦闘用の糧食を皆で食べる。

 結局、敵の夜襲は無かった。


「姑息な真似はして来なかったな。」

「でも、こちらを消耗させるなら、夜を越させるのは効果的だね。」

「一部を除いてほとんどの者は休養バッチリだけどね。」

「ああ、こっちには睡眠不要で不意打ちに滅法強いのが沢山いるからね。」


「それでテンコー、罠は仕掛け終わったのか?」

「ああ、僕が長年温めてきたアイデア満載だよ。」

「と言うことは、戦いの最中、アレが流れるんだよな。」

「いや、今回はイリュージョンだからBGMは無しだよ。爆発音こそが最高のBGMさ。」

「昂ぶってくるな。」

「乞うご期待ってとこだね。」

「妾たちの働きにも期待せよ。」


「ご先祖様、よろしくお願いします。」

「アタシもジェームスの分まで頑張るわ。」

「いや、ジェームズの分は無いから普通でいいぜ。」


「じゃあ、正午までいつでも戦えるようにフォーメーションを組んでおくか?」

「しかし、一番危ないのはこちらが警戒を解いて陣払いを始めた瞬間だな。」

「確かに、撤収には一工夫必要だね。」

「まあ、馬車への積み込みは既に終わってるし、相手がここまで出向いてくれるのであれば、いつ来てもらってもいいんだがな。」

「そうだね。向こうも自分たちを無視して本丸に向かわれるのが嫌みたいだし。」

「おい、来やがったぜ。」


 前方に突如大軍勢が現れる。

 転移魔法を使ったようだ。

 敵はこちらよりはるかに多く、数え切れないほど多くのスケルトンとミノタウロスがいる。


「あれがルシファーたちの手勢か。」

「確かに、ありゃあ世界の脅威だな。」

「勇者とそのお付きの諸君、久しぶりですね。」

 遠くから声が響いてくる。特殊なスキルのようだ。

 よく見ると、遥か後方に飛んでいる人影が二つある。


「ルシファーとアスモデウスか。」

「この冥界を代表する堕天使二人と相まみえること、身に余る光栄と震えながら地獄に落ちるが良い。」

「それは無ねえな。百歩譲っても天国だ。」

 今回はニコラス君も突っ込まない。

 数に劣るこちらは密集隊形で守勢に回らざるを得ないのだ。


 ドンッ!

 突然、空中で花火が炸裂する。もちろんテンコーのイリュージョンだ。

 打ち上がる所が完全に隠匿されているところはさすがだ。


「おっ、おのれ、ちょこざいな。」

 敵軍の突撃が開始されるが次の瞬間、彼らは突如として視界から消える。

 これもテンコーのイリュ-ジョンだ。


 敵の大軍勢は落とし穴に落ち、大きな爆発音が何度も響く。

 同時に後衛からルシファーたちに集中砲火が浴びせられる。


 ここで、私たちパーティーはルシファーたちを片付けるため、前進を始める。

 兵士達はいつものごとく陣を守り、魔術師達はその護衛に回る。


 しばらくして、穴の中からいくらかモンスターが這い出てきた。

 ザコは片付けられたが、デュラハンやベヒモスといった幹部クラスはさすがに倒せなかったみたいだ。


「昨日ぶりだな、ゾウ。」

「ゾウではない。ベヒモスだ。」

 ニコラス君とジュリアーナ嬢がベヒモスの周囲を移動しながら牽制し、そこにミントたちの魔法が全方向から打ち出される。


 デュラハンは私とドウェイン君、フラワーさんご先祖様、穴の中の生き残りはテンコー、後ろのみんなは対空砲火を行っている。

 すでに最初の一手で数的不利は覆っているし、いつの間にか空高く光のカーテンが展開されている。


「ま、まさか、この私が・・・」

「寿命が一日延びただけだったな。あばよ。」

 ベヒモスが力尽きた。


「殿下、骨はこっちに任せてカラスを頼む。」

「分かった。ご先祖様、お願いします。」

「やっと妾の出番かの。出でよ、目隠しの霧!」


 ご先祖様の妖術は基本しょぼいが、使い方次第で非常に役に立つのだ。

 黒い霧がルシファーたちの顔だけを覆い、彼らの視界を奪う。

「な、なんだこの魔術はっ!」


 ルシファーたちは手で霧を払おうとするが無駄だ。

 あれはご先祖様がかつて初代校長から教わった妖術であり、魔法では無い。

 いや、堕天使なら妖術くらい知っててもいいのだろうが、払う術を持っていないか、この緊急時に冷静さを欠いているのか、バタバタ飛び回っているだけだ。


「出でよ、鍵付きチェーン!」

 続いて出てきたのはテンコーの十八番、拘束用の鎖である。


 こちらはあくまでイリュージョンで出現させただけで、本物の鎖である。

 しかし、視覚情報が遮断されているルシファー達にとっては、回避も対処も難しい。

 テンコーとフラワーさんが鎖を引っ張ると、彼らは地上に叩きつけられる。

 ここに、デュラハンを片付けた前衛組が突撃する。


「卑怯なっ!小賢しいぞっ!」

「お前たちこそ、悪魔のくせに何の策も無しに突っ込んで来やがって。」

「ダ、ダンジョンなら、ダンジョンならっ!」

「そこまでだっ!」


 私が聖剣フルンティングで二人の首を刎ねる。

 いかに元天使と言えど、闇に落ちた者にこの聖剣から助かる術は無い。


「お、のれ・・・」

 彼らの身体は霧散し、戦いは終わった。


「あんまり強くなかったな。」

「ルシア嬢の光が地味に効いてたんだと思うぞ。」

「ダンジョンにおびき寄せられてたら、また違ったかも知れないね。」

「それ以前に、城があるなら全軍そこで迎え撃つべきなんじゃないか?」

「盛り上げようとしたんじゃないか?」

「しかし、彼らの目的は何なのかしら?」

「さあ、いつも聞かず終いだな。」

「魔王が教えてくれるんじゃないかなあ。」

「どうせ下らん自慢話してくるんじゃないか?俺は聞かなくていいぜ。」


 やはり、ニコラス君に興味は無いらしい。

 それにしても、フラグは立ってなかったようでよかった。



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