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城ではなくダンジョン?

 ターレンの街で私たちは休憩を取るとともに、ロフェーデを含むそれぞれの国に現状報告の使いを派遣した後、我々は敵が籠もっていると思われる城を目指した。


「次が堕天使との戦いであればいいんですけど。」

「まあ、油断はできねえな。他にも居る可能性は十分に考えておくべきだ。」

「そうだね。憂鬱だけど。」


 敵の本拠地は100km程度、道路状況さえよければ下手すれば1日で着くような距離だが、街道に魔物が溢れ、中々思うに任せない。


「三日くらい見ておいた方がいいですわね。」

「そうだね。でも夜の騎士の護衛とミント達の索敵があるから、これでも随分楽なんだろうね。」

「殿下、この先に強い魔物が待ち構えているとの報告がミント殿からございました。」

「分かった。隊列はここで待機。パーティーで敵を排除する。」

「はっ!」

 もうこのフォーメーションも慣れたものだ。各国から集められた騎士達も精鋭だけあって、防衛戦はお手の物だ。

 だから私たちは安心して前の敵に集中できる。


 しばらく進むとかなり巨大なモンスターがいた。


「行くぞドウェイン。」

「うん。任せて。」

「おい、待てっ!」

「何だ? このモンスター喋るのか。」

「お前たち、聖剣の勇者の一行だな。」

「知ってるなら話が早い。全力で来い。」

「まあ待て待て。我は魔王四天王アスモデウス様の眷属でベヒモスという者。我はお前たちとここで戦う意志は無い。」

「明日もゼウス? 何を言ってるのかサッパリだが、お前に戦う意志が無くても俺は戦うぜ。」


「まあ、そう急ぐな。貴様らの行き先について聞きたい。」

「殿下、こう言ってるがどうする?」

「ニコラス、ここは俺に任せろ。」

「ローランド殿下か? ああ、いいぜ。」


「ベヒモスよ。俺はバレッタ王国第一王子、ローランド・グレゴリーだ。こちらもいくつか聞きたいことがある。が、最初にそちらの話を聞いてやろう。」

「そうか、分かった。では聞こう。お前たちはこの先の城を目指しているのか?」

「その通り。俺たちは堕天使ルシファーの討伐を目的としている。」

「堕天使ルシファー様はあの城にはおられぬ。」


「では、あの城は誰の物か。」

「魔王バロール様の居城である。」

「魔王? では、ルシファーは魔王の配下という考えで良いか?」

「その通り。そして、魔王バロール様の四天王としてルシファー様とアスモデウス様がおられる。」


「四天王ならあと三人いるだろう。」

「いや、サタン様とベルゼブブ様はすでに冥界に旅立たれた。今この世におられるのはお二方だけだ。」

「なるほど。では、我々は城を目指すことにしよう。」

「待たれよ。魔王城に行く前に、ここから西へ半日先にあるダンジョンに向かって欲しいのだ。」


「ほう、そこにダンジョンがあるのか。」

「そして、そこにルシファー様とアスモデウス様がおられる。」

「分かった。では、魔王を倒したら追ってそちらに向かおう。」

「いや、それでは困る。」

「別に我らはお前たちの都合で動いている訳では無い。」

「しかし、四天王は主を守らねばならぬ。」

「わざわざ遠回りするのは面倒だ。」

「そう言わずに来てくれ。我らにも面子があるのだ。」


「ならばどうして魔王の城におらんのだ?」

「それは魔王様から前線に拠点を築けと命を受けたからだ。」

「我々が通らぬ場所に何を築いても拠点にはならんぞ?」

「こちらもそちらがどのルートを侵攻してくるなど分からぬ。」

「こちらもそんなことは知ったことでは無い。」

「いや、そこを何とか。」


「ならばここで一日だけ待つ。そちらがここまで出向いてこい。」

「いや、それでは・・・」

「来ないなら我々はこのまま魔王城に進軍する。待つのは明日の正午までだ。」

「わ、分かった・・・」

 こうしてベヒモスは去って行った。



「済まないローランド殿下、交渉役をさせてしまって。」

「いやいいんだ。相手が何を企てているか分からない以上、聖剣の勇者を前面に出すわけにはいかないからな。」

「しかし、殿下を危険にさらしてしまった。」

「なに、気にする事は無い。あの程度に後れを取るとも思わなかったしな。万が一を考えてのことだ。」

「でも、新しい情報が色々あったね。」

「まあ、さっきのヤツが全て正直に語ったとは限らんがな。」


「しかし、明日、こちらの要求通りに敵が来れば、ベヒモスの言葉の信憑性は高まりますわ。」

「そうだね。そこまで切迫しているということだからね。」

「でもさすがはローランド殿下、素晴らしい交渉術でしたわ。」

「これでも一応は王族としての教育を受けてるんだぜ。」

「チャラチャラしてるだけじゃ無かったんだな。」

「いや、チャラチャラしてるが、意外に硬派で有能な天才魔術師だ。いくら何でも一面しか持ってないような単細胞じゃないぜ。」

「ニコラス卿は単細胞未満ですわね。」

「何を言ってる。俺は騎士兼馭者並びに殿下の側近だ。立派な多細胞生物だぜ。」

「敵を見たら即攻撃というのは、火を見て飛び込む虫のようですのに。」

「虫は多細胞だぜ? カーメン。」

「まあまあ、口論しないで。」


「とにかく、今夜は警戒を厳重にしつつ、ゆっくり休もう。」

「そうですね。万全の体制で敵を迎え撃ちましょう。」

「ところで、敵はここで迎え撃つとして、ヤツらのダンジョンはどうする?」

「後回しでいいし、主を倒した後のダンジョンなんて、冒険者にでも任せておけばいいんじゃないか?」

「確かに、どんな罠が仕掛けられているか分からない所に、わざわざ踏み込む必要は無いね。」


「ヒーローはそういう所に赴くものだと思うけど。」

「ドウェイン。俺たちは地位ある者として当然のことをしているだけで、決してヒーローやヒロインじゃねえってことなんだぜ。」

「すごいね。ニコラス君は。」

「どうだ。多細胞ぶりを遺憾なく発揮してるだろ?」


 こうして、厳戒態勢の一夜を迎える・・・


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