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生徒会選挙

 4月も下旬になると、学校では新年度の生徒会役員選挙が行われる。


 今日はその公示日で立候補の受付が始まる。

 一週間後に立候補者演説会、そして翌日が投票日であり、3年生はここで引退し、後輩に道を譲るのだ。

 でも、何で封建時代なのに、選挙なんてあるんだろう・・・


「当然、殿下が次の会長なんでしょ。」

「そうなのかなあ。」

「逆に、殿下が入らない方が問題あると思うぜ。」

「じゃあ、二人も入ってくれる?」

「僕は鍛錬をサボれるならやるよ。」

「俺はガラじゃねえな。」

「いや、宰相様のご子息は入っておくべきなんじゃない?」

「俺、ホントそういうの苦手なんだよ。生徒会に馭者って無いのか?」

「庶務ならあるね。」

「雑用は事務員の仕事だぜ。俺はあくまで現場向きなんだよ。」

 などと言いつつ、廊下を歩いていると・・・


「ミッチェル殿下、少しお時間よろしいでしょうか。」

「オールディス校長、いかがなさいましたか?」

「次期生徒会のことにつきまして、ご相談したいことがございまして。」

 ああ、来ちゃったな。

 私たちが校長室に招かれると、程なくして現生徒会長も入室してきた。


「みんな揃ったようだね。もう、お分かりのこととは思いますが、殿下ににおかれましては、是非とも次期生徒会長に立候補していただきたくてお呼びしたものです。」

「しかし、まだ私は入学したばかりですが。」

「従前から、王族の方には生徒会長を務めて頂いておりまして、今の陛下も、王弟殿下におかれましても、入学直後から会長職を勤めていただいたところでございます。」

「そうですか。そういう伝統であれば、是非もございません。立候補させていただきます。」

「加えて、校長推薦をさせていただきますので、恐らく、他に立候補する者は出て来ないでしょう。」

 やっぱり、封建時代だった・・・


「それでは、よろしくお取り計らい下さい。」

「もう、立候補者用の公示も掲示もいたしません。副会長職以下は生徒会長が指名することとなっておりますので、こちらも併せてお願いいたします。」

「しかし、私は2年生をよく存じ上げておりませんし、現行メンバーの中で留任させるべき者もおりましょう。もし、会長に案がありましたら、お聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。」

「分かりました。それについては、近日中にお示しすることといたしましょう。」

 と言うわけで、選挙もなくあっさりと生徒会長就任が決まってしまった。


「何か、決まっちゃったねえ。」

「そりゃ、こうもなるさ。逆に第一王子がいて立候補するヤツなんているのか?」

「まあ、そうかも知れないけど、せっかく制度があるなら選挙やった方がいいんじゃない。」

「殿下と討論したら不敬罪で退学、なんて嫌だもんね。」

「そうかぁ。でも、副会長以下はどうしよう。」

「生徒会長案が出てきてから考えたら。」

「分かったよ。じゃあ、二人とも、よろしくね。」

「僕は入るよ。」

「俺はなあ・・・」

「ニコラス君がいると楽しそうだけどなあ。」

「俺に事務なんて無理だぜ?」

「まあ、それも含めて後日検討だね。」


 そして二日後、生徒会長の案が提示される。

 生徒会は副会長二名のほか、会計、書記、庶務、監査、広報がいて、各クラスに正副委員長のほかに、風紀、図書の委員がいる構成なのだそうだ。


 また、生徒会としての活動のほかに、各委員を集めた評議委員会なるものがあり、この総理も会長の業務だそうで、意外に責任は重そうだ。

 ちなみにクラス委員もこの時期に選任されるとのこと。


 肝心の生徒会長案だが、副会長の一人は2年生のオリヴィア・アッシャー侯爵令嬢とジェニファー・フレミング公爵令嬢、会計がニクラス君で庶務が2年生のケント・ヴィッカーズ侯爵令息、監査がルシア・ウォルフォード嬢で、広報がドウェイン君というものであった。2年生の二人は昨年からの留任で、本来なら生徒会長候補だったであろう人たちだ。

 成績もトップを争っているらしい。


「この方々に就任を打診していく流れかな。」

「おいおい、何で俺が金の計算役なんだ?」

「そりゃ、宰相のご子息だし。」

「側近だし。」

「生徒会なんて入りたくないが、仮に入るとしても、もう少し何とかしてくれ。」

「じゃあ、監査で。」

「もっと無理だろ。」

「それなら、庶務兼馭者しかないね。」

「じゃあ、会計と庶務を入れ替えた線で交渉だね。」


「留任のお二方は了承してくれそうだけど、フレミング様とウォルフォード嬢はどうかなあ。」

「フレミング様なら大丈夫だと思うぞ。何せ、殿下にベッタリだったはずだからな。」

「今はとてもそうは見えないけど。」

「聖女様はどうかなあ。」

「教会も忙しいんだろ。断られるんじゃ無いか?」

「確かに、あんまり生徒会っていう雰囲気じゃないよね。」

「それで、話はどうする?」

「現生徒会長も含めて全員で話し合いの場を持とう。断られた場合、私には代案なんて無いんだから。」

「断るなら他者を推薦してもらうってのがいいかもね。」

「そうだね。私も知らない人ばかりだし。」


 そして翌日、生徒会室に現役員と新役員候補に集まってもらった。

 ちなみに、公示日以降、私以外の立候補者はいない。


「みんな、忙しい中集まってくれてありがとう。私が次期会長に立候補したミッチェル・アーネットだ。本来であれば、まだ選挙期間中で立候補者届出が可能な時期ではあるが、どうやら王族の会長選出は慣例で、事実上、無投票で私が選任されることになるようだ。そこで、新役員を選任し、早くスムーズな活動を開始したいと考え、現生徒会長の協力の下、絞り込んだ役員候補に集まってもらったところだ。ここですんなり決まればいいが、それぞれの希望もあるだろうし、そこは尊重したいと考えている。」


「では、ミッチェル殿下、私の方から読み上げ形式で候補を発表させていただいてもよろしいでしょうか。」

「会長からお知らせいただけるならありがたい。」

「では、私から発表させていただく。まず、副会長については、オリヴィア・アッシャー侯爵令嬢とジェニファー・フレミング公爵令嬢、会計がケント・ヴィッカーズ侯爵令息、庶務がニコラス・ラトリッジ侯爵令息、監査がルシア・ウォルフォード男爵令嬢で、広報がドウェイン・タウンゼント子爵令息であります。これは私の案に殿下の意向を加味したものであります。もし、固辞する場合においては、代わりになる者を推薦いただけるとありがたい。」


「あの、大変申し訳ございませんが、私、辞退したいと考えております。」

「フレミング様、理由をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか。」

「はい。お妃教育もございますが、何より私ではいささか力不足が過ぎます。生徒会の名を汚すことの無いよう、固く辞退させて頂きます。」

「しかしフレミング様、殿下の婚約者であらせられるあなたが生徒会に名を連ねないことは、校内に波紋を呼ぶ恐れがございます。」

「はい。それにつきましては、大変心苦しいことではございますが、今までの私の行いも含めて、ご迷惑になると考えたものでございます。」


「あの、私も辞退したいと思います。」

「ウォルフォード嬢もですか。理由をお伺いしても?」

「私は聖女だから選んでいただいたのだと思いますが、元平民の男爵令嬢ですし、学業の成績もまだ分かりません。そんな状態ではお役に立てませんし、他の生徒も良い感情は抱かないと思います。」


「どういたしましょう、ミッチェル殿下。」

「そうですね。お二方が加われば大変心強いのですが、大変な仕事ですので無理強いもしたくありません。では、公示期間終了後までに、みんなで代わりとなる人材を再度掘り起こすか、お二方に再度お願いするかを決めることとしましょう。それで、アッシャー様とヴィッカース様はご承諾いただけるということでよろしいでしょうか。」

「大変名誉なことですので、お受けいたします。」

「私も誠心誠意、勤めさせていただきます。」


 こうして何とか二人は確保できた。

 もう少しゴリ押しした方が良かったのかなあ・・・


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