表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
147/169

第一の刺客

 土煙が晴れて、目の前のモンスターの姿が露わになる。


 咄嗟にモンスターと言ってしまったが、黒いコウモリのような羽根、尖った騎馬と指先、先端が鏃状になった尻尾など、どうみても悪魔だ。


「フン、デビルか。」

「違う!我はサタ」

「おりゃっ!」


 いきなりニコラス君が斬りかかる。

 それを見て悪魔の右手に退避していたドウェイン君、フラワーさんも続く。


 ニコラス君は無言で神速の剣を見舞っている。


「お、おい、コラッ、ちょっと待て、待たぬかっ!」

 悪魔は叫ぶがニコラス、ドウェイン、フラワーコンビの猛攻は止まない。


「中衛、後衛は私の後ろへ、騎士団はヤツを取り囲め!」

 私の指示に総員急いで陣形を整える。

 目の前の悪魔もかなりの手練れのようだが、さすがにこの戦力差を前に余裕はなさそうだ。


「おいっ!コラッ!我に自己紹介くらいさせろ!」

「いきなり卑怯な攻撃をかましといて何言ってやがる。」

 そう言うと、後ろからローランド殿下を始めとする魔導師軍団の攻撃が始まる。

 初弾が次々に命中すると、さすがの悪魔も体のあちこちが傷ついている。


「クソゥ・・・ちょこざいな!」

 そう言うと、悪魔は衝撃波のようなものを出し、前衛を吹き飛ばす。

 そして、自らに回復魔法のようなものを施すと、気合いを入れる。

 すると筋肉が隆起し、1.5倍ほどの大きさになる。


「ハーッ、ハーッ・・・ど、どうだ、これからが本番だ。」

「前衛、全方向から一斉突撃、かかれっ!」

 10人を超える剣士が一斉に悪魔へ飛びかかる。

 悪魔だって無詠唱で魔術を発動可能なのだろうが、それすら許さない攻撃だ。

 そして、前衛を避けるように魔術攻撃が間断無く降り注ぐ。


「おのれーっ!」

 悪魔が槍を突き出し、フラワーさんの胸を貫く。一瞬ひやりとしたが・・・


「引っかかったわね。」

「な、何と、ぐわっ!」

 ドウェイン君の力任せの一撃が悪魔の背中に入る。

 続いて何名かの騎士が悪魔に槍を突き立てることに成功したようだ。

 そして、悪魔の持っている槍はフラワーさんがしっかり握っており、悪魔も自由が利かない。

 というか、フラワーさんは槍を強奪して自分の武器にしている。


 そして、その間に悪魔はダメージばかり負っていく。


「待て、待て、ちょっとだけでいい、待たぬかっ!」

「戦いの間に待つバカがどこにいるんだ?」

 ニコラス君の一撃が悪魔の脳天に炸裂する。


「ギャーッ!」

「結構しぶといな。」

「ニコラス、俺にもやらせろ。」

「おうっ、期待してるぜ、殿下!」

「せ、せめて、自己紹かっ!」

「うるせえっ!」

 ローランド殿下のレーザービームのような火魔法が悪魔の心臓を貫き、ニコラス君が薙いだ剣が悪魔の首を刎ねる。


「ルシア嬢、浄化できそうかい?」

「お任せを。」

 ここでルシア嬢が前に出て、上空にオーロラ状の光のカーテンを展開させる。

 そして無詠唱のまま、大量の光が悪魔に降り注いでいく。


「ギャッ、ギャーッ!」

 瞬く間に、悪魔の胴体部分は消滅し、転がった頭部がかろうじて残るだけになった。


「何とか勝てたみたいだな。」

「グッ、グー・・・」

「コイツ、まだ生きてやがる。」

 ニコラス君は容赦無く頭部に剣を突き刺す。


「グアッ、アッ、アッ。」

「ルシア嬢、もう一回浄化できねえかな。」

「ええ、やるわ。」

「ま、待て、せめて我の名くら」

「うるせえな、黙れ。」

 ニコラス君が口元を踏みつけて黙らせ、ルシア嬢の光魔法によって悪魔の頭部も消滅した。


「これで大丈夫かな?」

「騎士団は引き続き周囲の警戒を行え。」

「はっ。」

 騎士団員は円形を保ちながら私たちの護衛を続けた。


「それにしても、なかなか頑丈な敵だったな。」

「ああ、普通の人間なら100回は死んでるな。」

「しかし、ニコラス君容赦無かったね。敵に名乗りすらさせなかった。」

「やーやー我こそはってヤツか?無駄な時間だぜ。」

「そりゃそうだけど、普通、ドラマとかアニメって敵と語り合わない?」

「ああ、グダグダやってるよな。だが、デビルと分かり合おうなんて無駄な努力だと思わねえか。」

「確かに。」


「それに最後まで油断せず確実に仕留める。これが戦いにおいて最も大事なことだぜ。」

「全くおっしゃるとおりでございます。」

「下手に反撃されて大事な仲間を失ったヒーローがどんだけいるんだ。アイツらの格好つけで死ぬはめになったヤツらは浮かばれねえし、そういうヒーローに限って同じ過ちを何度も繰り返すんだ。それで仲間が大事ってどんだけ勘違い野郎なんだよ。」

「まあ、そうだね。」

「その点、俺は容赦無いから殿下は安心してくれてていいぜ。」

「うん。頼りにしてるよ。」


「デビルくらいなら勝てるって証明できたからな。」

「何か、サタって言ってたけど。サタンかもね。」

「デビルとサタンってどう違うんだ?」

「さあ・・・」

「まあ、デビルだな。」


 ヤツの名はデビルに決まった。


「それにしてもルシアちゃんすごいじゃないか。あれだけの魔術を無詠唱なんて。」

「あの位は当然よ。」

「しかし、詠唱したって問題ないくらい余裕はあったと思うけどな。」

「そ、その、恥ずかしいのよ、光魔法って、名前が・・・」

「ああ、ファイナルフラッシュとかいうヤツか。」

「さっきのはエターナルフラッシュシャワーよ。」

「確かに、そりゃ大声で叫ぶ訳にはいかねえな。」

「とにもかくにも、初陣を見事勝利で飾った。これは幸先がいい。」


「しかしあれですね。堕天使以外にデビルも召喚されてたのかなあ。」

「うん?そういや召喚されたのって一体だけって話だったよな。」

「他にも召喚した場所があるってこと?」

「その辺も調査しながら進むことにしよう。」

「次はどこに参りますの?」

「東部の街、ターレンに向かおう。」

「その近くでは、我がファルテリーニ軍が消息を絶っておりますわ。」

「じゃあ、今夜は休んで明日の朝、出発しよう。」


 こうしてパーティーは次の目的地へと急ぐ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ