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遺跡の調査

 馬車は東に指して行き、およそ2週間。

 ここまで非常に長旅であったが、北東の辺境マルシャ遺跡に到着した。


 ここは古代の遺跡で、今は存在しない宗教の神殿ではないかと言われている。

 つい先週まで、三カ国合同の調査団が入っており、今日はウィンスロット隊の代表だった魔術師にも来てもらっている。



「それで、ここは地下にも部屋があるということでしたが。」

「はい。しかし、先般の爆発の影響か、崩れてしまっており、中の詳細までは残念ながら分かりませんでした。」

「協力な魔録の残滓があったと聞きました。」

「ええ、それもかなり最近のものです。」


「魔力の残滓なんて検知できるものなのですか。」

「確か、何年か前にジェームズ先生が魔力残滓の検出方法を発表して、それで博士号と取ったんだよ。」

「あいつ、まともなこともできたんだな。」

「引っ張ってくればよかったかしら。」

「だかアイツじゃなあ。」

「危険もあるしね。」

「アイツじゃあ戦力どころか危なっかしくて。」

「まあ、ジェームズがいなくてもこの魔術の天才、ローランド・グレゴリーが何でも答えてやるぜ。」


「具体的にどんな方法を採るんだい?」

 ローランド殿下は、地面に木の棒で図を書いて説明してくれる。


「簡単に言えば、魔方陣の外周に書かれている文字を一文字ずつ魔力を当てて割り出していくんだよ。対角線上に立った相反属性を持つ二人の術者が同時に同じ術式の魔方陣を出すと、同じ文字が使われている部分が影のように浮き出てくるんだ。文字列なんかは各属性毎に特徴があるから使われた属性はすぐに判明するし、文字のおよその配列が分かればその大きさや種類も分かるし、読み取れた文字数によって古さが分かる。空中や砂地なんかは難しいが、床が石ならかなり古いものまで検出できる。」


「相反属性の魔法は互いに打ち消し合うんじゃねえのか?」

「術を発動させればね。」

「ということは、かなり新しい魔方陣であれば、かなり判明すると。」

「そのとおりです。ただし、ここは建物の破損が激しく、多くは失われていました。」

「それは残念でしたね。」


「ただ、中に人の死体と覚しきものがいくつか発見されました。それと、破壊とともにかなりの高温も発したようです。」

「遺骸は新しかったと。」

「ええ、ごく最近。そう、黒い霧の発見された頃と言ってもいいでしょう。」

「まあ、確たる証拠は無いが、他に心当たりも無いといったところだな。」

「そのとおりでございます。」


「それで、目撃証言は出てきたんでしょうか。」

「いえ、何しろ周辺の村々は全滅しており、当初の目撃情報もここから少し離れた所のものですので、何とも言えません。」


「犠牲者の方の死因は分かったのですか?」

「はっきりしたことは分かりませんが、老若男女、健康な者から家畜、植物まで全て死に絶えておりました。私もこんなことは初めてですが、感覚としては呪いに近いかと。」

「なるほど。それで、植物なら枯れた所とそうでない所の境目があるはずですが。」

「ええ。当日の風向きはおおよそ分かっておりますので、この近辺が発生源と考えても差し支えはないかと。」


「確か、召喚魔法とおっしゃいましたよね。」

「はい。我々はそう結論付け、報告書にもそのように記載いたしました。」

「召喚魔法で堕天使なんて呼び出せるものなのかしら?」

「どうでしょう。一般的に力の強い者を召喚するためにはそれなりの能力者と生け贄が多数必要になります。」

「白昼堂々出来るかと言えば、難しいな。」

「でも、地下室だからなあ。」

「目撃者は・・・いても助かってないよな。」

 色々情報を集めたが、先の報告書と合わせて、推論は立てられそうなだけのものは集まったと思う。



「何か良からぬものが顕現したと考えて行動した方がいいね。」

「堕天使か。」

「通常、一回の召喚で呼べるのは一体で間違い無いですか?」

「そうだな。別の贄を準備すれば複数回できる。だが、術は一回分しか検出されてないんだろう?」

「そのとおりです。」

「なら一体だ。複数呼び出してもそれを統制できなきゃ失敗と同義だ。」

「確かに、召喚した者同士で争い始めたら目も当てられないねえ。」

 そんな議論を交わしていると、季節外れのぬるい風が吹く。

 私は思わず風下に顔を向けて風を凌ぐが・・・


「おい、向こう、何だありゃ。」

「うん?どうした。」

「何か飛んで来ますわね。」

「それよりお前、髪型崩れねえな。」

「あなた、本当に私の髪型が好きですわね。」

「いや、それよりあれ、こっちに来てない?」

 北の空から何か黒いものが飛んでくる。

 鳥にしては何か不自然というか、デカすぎるというか・・・


「おい、あれって・・・」

「人のようですわね。」

「おい、危ない、総員退避!」

 そう、あれは明らかに火だ。

 恐らく魔術に違いない。

 みんながバラバラに散った所で火球は着弾し、轟音とともに爆風が襲いかかってくる。


「みんあ、大丈夫か!」

「ああ、どうってことねえぜ。」

「フッフッフ、我の挨拶はどうだったかね。」


 土煙の向こうから大きな影が浮かび上がってくる。


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