王命
さて、校内の熱気と興奮も冷めやらぬ中、私は陛下に呼び出される。
「陛下、例の件でしょうか。」
「ああ。ロフェーデから調査報告が纏まってきたものでな。」
「では、彼の国で尋常ならざる事が起きているのですか。」
「まあ、簡単に言えばそうなる。そなたが先日遭遇した者についても、堕天使ルシファーの特徴と一致して折るとの教会の見解も出た。」
「それでは、ロフェーデの怪異も彼の仕業ということですか?」
「いや、別の者だと考えておる。そして、その者とルシファーが繋がっている可能性も考慮せねばならん。」
「それはさらに厄介ですね。」
「通常の軍では対応しきれんと見た方が良いであろうな。」
「かなりの損害を負うと見込んでおられるのですね。」
「そうだ。そして、その原因は判明しておらぬが、例の遺跡で検出された魔力の残滓は召喚魔法に近いとの結論も出た。」
「では、異界の何者かが降臨したと。」
「それも人為的にな。」
「ロフェーデですか。」
「そこまでは分からんが、動機としては十分だ。そして、ヤツらに翻意があるなら通常戦力は国の防衛に当たってもらわねばならん。」
「では、ルシファー討伐は?」
「すでにバレッタ、ファルテリーニ両国との協議を行い、少数精鋭部隊の編制を行っておる。聖剣の勇者ミッチェルよ、彼らと共に特殊作戦を遂行してくれるか。」
「・・・分かりました。命に従います。」
「では、そなたに指揮を任せる。」
「私のパーティーメンバーを編制してもよろしいですか?」
「もちろんそれもお主に任せる。すでに聖女の派遣を教会に要請しておる。」
「ありがとうございます。では、編制に着手します。」
「何だ、軍も騎士団もいるのにいきなり学徒動員か?」
「まあ、相手が相手だけに仕方無いよ。聖剣を持ってないと対応できない相手だろうし、戦場に沢山人がいたら、細かい指示なんて出せないし。」
「そうだな。それで俺たちはどうする。」
「ニコラス君とドウェイン君には来て欲しい。それとルシア嬢には教会に派遣要請してる。」
「分かった。俺たちは行くぜ。」
「そうだね。この四人が妥当だね。」
「それで、お付きの軍勢ってどの規模なんだ?」
「三カ国合同で総勢約100名だそうだ。騎士と魔術師の精鋭50と後方支援50名、いずれも精鋭とのことだよ。」
「そうか。今後そういうことがあるときは俺は馭者でも参加できるんだな。」
「多分、ニコラス君は戦闘部隊だよ。」
「それで、いつ出発なの?」
「今、三カ国の軍が編制中だから、現地付近で合流として5月1日出発ってことになりそうだ。」
「一週間後か。分かった。」
こうして私たちは出撃準備を整える。
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今日の放課後、突然教会に呼び出され、堕天使ルシファーの出現と討伐命令を通告されちゃったわ?
まあ多分、アタシが誰のルートにも入らないのが原因だから、行かない訳にはいかないんだけど、ルシファーって何?何者?
教会の人も、有名な堕天使だよ、って言うけど、知らないよ、そんなの。
「お嬢様、大丈夫でしょうか。」
「ごめんねアニー。仕方無いから行ってくるよ。」
「どうしてもお嬢様でないといけないのでしょうか。」
「ああいう穢れたものを倒すには聖女で無いといけないらしいのよ。」
「でも、危険過ぎます。」
「大丈夫よ。こう見えてアタシ、結構強いんだから。ダンジョン攻略研修だって5位だったし。」
「それは知ってますけど・・・」
「まあ、行きたくは無いんだけどね。すぐ帰って来るからアニーも落ち込まずに待っててよ。」
「お嬢様、くれぐれもお気をつけ下さい。」
「ありがとう。」
その後は久しぶりにアニーと二人で寝たわ。
それにしても、こんなのは最後にして欲しいわね。
そして翌日、学校でミッチェル殿下に呼び出され、一緒にパーティーを組む話をされたわ。
アタシもそれを承諾して5月1日に出発することが決まったわ。
とは言っても準備するものなんて無いけどね。