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生徒会勇退

 さて、私が欠席している間にも選挙戦は続き、ついに今日は立候補者演説の日だ。


 会長候補はライオネル君とローナさんの二人だ。

 どちらも評判の好人物で成績もトップを争う。

 差が付くとすれば、ライオネル君が伯爵家の出身でローナさんが男爵家ということくらいだ。


 建前上は、校内で身分差を笠に着ることはできない。

 身分で扱いを変えるなら一堂に集める必要は無いのだ。

 そのために社交があるんだし・・・


 まあ、唯一の例外が私だったということだ。

 何故かって?そうでもしないとニコラス君、ドウェイン君という側近兼護衛を付けられないからだ。

 私にも従者がいれば良かったのだが、私の成人とともにお役御免になって、今は領地にいる。

 さて、そろそろ演説が始まる。私は現会長として舞台袖にいる。



「ローナさんからなんだね。」

「届け出順だそうです。」

「同時に出したんでしょ?」

「受け付けたローランド殿下がレディファーストっておっしゃってました。」

「ああ、そうね。じゃあ、頑張って。」

「はい。」


 ローナさんが演壇に立つ。

 彼女はお淑やかで落ち浮いた雰囲気の女性だが、さすがに緊張を隠せない様子だ。

 それでもそつなくやりきるだろうけど。


「私は今回、生徒会長候補として立ちましたローナ・アビントンです。女子ということで抵抗感のある方も数多くおられると思いますが、この貴重な学園生活、平素では絶対に無いであろう女性のリーダーというものを体験し、知ってもいいのではないでしょうか。現会長は人柄、功績とも近年では群を抜いており、その後を継ぐことは容易ではないということは知っています。しかし、私なら、私で無いとという案も数多く準備しておりますし、女子生徒に優しい校内の雰囲気醸成にも努めてまいります。もし、よりしければ一人でも多くの方のご指示と清き一票を賜りたいと存じます。何卒よろしくお願い致します。」


 会場から大きな拍手が巻き起こり、彼女は一礼してそれに応えている。

 彼女らしい落ち着いた、しかし、いつもの彼女らしからぬ力強い演説は終わった。


 選挙の結果は分からない。

 いや、彼女は圧倒的不利な立場だが、こんな彼女が育つこの国を少しだけ誇りに思えた。


 ちなみに、私は彼女に一票を投じるつもりでいる。


「それでは続いて、候補者ライオネル・リンデンバーグ君の演説にまいります。」

「じゃあ、ライオネル君、ローナさんに負けないような立派なヤツ、期待してるよ。」

「はい。」

 続いて彼の演説が始まる。


「私はこの一年間、ミッチェル会長、ローランド副会長、キャロライン副会長を始めとした素晴らしい先輩方の元で、充実した日々を送らせていただきました。そして今回、ローナ・アビントン嬢という素晴らしい候補者としのぎを削ることができ、誇りで胸がいっぱいであります。選挙の行方はまだ分かりませんが、できれば結果にかかわらず、これからもローナ・アビントン嬢の隣に、できれば会長ローナ・アビントン嬢を支え、更に許されるのであれば生涯ローナ・アビントン嬢の隣を歩めれば本望でございます。ちなみに、私はローナさんに一票を捧げ、永遠の誓いをしたいと思いますので、皆様方の応援、よろしくお願いします。」


 会場は騒然とし、そしてどっと盛り上がった。

「頑張れよ!副会長!」

「いいぞ、もっとやれ-!」

「ネル、最高だぜ!」


 かつてこれほどまでの湧き上がる歓声を私は知らない。

 隣では手で顔を覆うローさんがいる。

 何てことしてくれてんの寄りの嬉し恥ずかしだろう。


「お疲れ、過去最高?の告白だったよ。」

「会長、私、頑張りました。」

「ああ、もう誰が何と言おうと王族公認の仲だ。何も心配はいらないよ。」

「ありがとうございます。」

「さあ、そこで沸騰している彼女をケアしてあげなさい。」

「はい。」

 お二人さんはこっそり舞台裏から退場する。


「みんな、知ってた?」

「いや、どう見てもそういう雰囲気だったが、まさかこうなるとはな。」

「凄いよ。見事すぎる公開処刑だよ。」

「でも、憧れますわね。」


「俺のアドバイスが効いたみたいだな。」

「やっぱり、ローランド殿下の入れ知恵だったの?」

「前から相談を受けててな。原稿も俺様テイスト満載のものになった。」

「ああ、普段のライオネル君からはかけ離れてたもんね。」

「だが、成功したろ?」

「あれで断れる女性なんていないよ。」


 そして、ローナさんが当選するとともに彼らの婚約は成立し、私たちは勇退した。


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