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そろそろここに来て一ヶ月になるけど

「あ~キモかった。何なのあの先生!」


 帰宅すると同時にルシアはベッドにダイブする。

 この世界に来て役一ヶ月。毎日早朝から教会で勤めを果たし、学生生活を送るという二足のわらじを履き続ける彼女は、本当ならまだ13才の中学生だった子だ。


 そんな彼女が一人この世界に放り出されて、それでも驚くべく適応力を見せているのは、ここが彼女が好きだった「スペ体質」の世界だったからに他ならない。

 それでも、スマホも娯楽もなく、友人にさえ会えなくなった世界で、自分の死を受け入れ、人生を再始動するのは難しい。


「スペ体質なんて、ゲームだから楽しいのよね。妄想してる分には良かったけど、リアルとなると全然別なのね。」

 そう思うのも無理はない。

 プレイ中は大人キャラで結構良い感じだったジェームズが下心全開のキモ男子だったのだ。


「まあ、リアルの男なんて所詮、あの程度ね。」

 百年の恋も瞬間冷却された。

「大体、気安く女子を触るなんて何なの?男は決まって減るもんじゃ無いっていうけど、下品な男が汚い手で触れると穢れるし減っちゃうんだからね!」

 つい、目の前にあった枕を壁に投げつけてしまう。

 少しだけ、気持ちが晴れたような気がする。


「それはそうと、これから起きることをもう一度確認しなきゃね。」

 そう言って、彼女は仰向けに寝返る。


 まず、入学式は大失敗しちゃって、王子様イベントが起きちゃったけど、何故かジェニファーは絡んで来なくて、それが良かったからかなあ。それ以来、悪役令嬢から絡まれることも無く、順調に学校生活をスタートできたと思うわ。


 そして、これから起こるのは生徒会選挙。

 王子ルートだと生徒会入りは最低条件だけど、それ以外にも宰相の息子と騎士団長の息子とのイベントも何度かあるわ。

 でも、三人とも婚約者がいるの。

 何でアタシがそんな不倫みたいなことしなきゃいけないの?

 それに、王子ルートではやり方次第で追い出せるけど、最初はジェニファーが副会長としているのよね。ということで、生徒会役員の件は断固拒否よ。


 それにしても、恋愛ゲームなのに、恋愛の選択肢が狭いわよね。

 普通の世界ならそれこそ何百人って中から彼氏を選ぶんだと思うけど、このゲームたったの五人だからね。

 いくらイケメン揃いといっても少なすぎだわ。


 元々男子が好きじゃ無いから、恋愛と言ってもあまり分からないし、勇気を振り絞って一歩踏み出すほどの相手もいないけど、一番の押しがあんなにキモいんじゃあ、ほかも大した事無いんじゃないかなあ。


 二番目に推しだったバレッタの王子は、何か盛りの付いたサルみたいだから、これもあり得ないし、だったらゲームのシナリオからは完全にお別れしちゃうけど、他のモブしかいないわよねえ。

 でも、どうせ卒業後の人生も考えないといけないだろうから、教会か学生の中で優良物件を探して入居するしかないわね。


 それと、同じくらい重要なのが、これから起きるイベントね。

 大きなものとすれば、夏休みの交流会と二学期の合宿訓練ね。

 その後は剣術大会と文化祭、三学期も陛下との謁見があるけど、このままなら回避できそうだもんね。


 その先も、ダンジョン攻略研修とか、疫病が流行る前に止めるイベントとか、ジェニファーが魔族に乗っ取られるヤツとかいろいろあるけど、それは2年生以降だから、これからのアタシの行動次第でいろいろ変わると思うの。だって、まだジェニファーに目を付けられていないっぽいし、まだ誰のルートにも入って無さそうだから。


 でも、攻略サイトには、誰のルートにも入らない場合は、戦争とか、魔王ルートとか、他の攻略対象と協力しないとクリアできない流れになるって載ってたから、ラブになるかは別にして、手を貸してもらえる程度には仲良くなっておく必要があるわね。

 まあ、サル王子ならいつでも協力はしてもらえそうだけど・・・


 でも待って。それって結構命の危険あるよね。なら、誰かとくっついた方が無難?

 とはいっても、婚約者のいない人がキモいのとサルしかいないって・・・

 もしかしてアタシ、詰んでる?


 どうしよう。どっちもアタシに好意はあるみたいだから楽勝といえばそうだけど、それでもあんなのヤダよう・・・


 何とか戦争と魔王出現は阻止しつつ、あんなのに絡まれない方法を考えなきゃ。

 取りあえず、イリアに相談かなあ。

 それにしても、憂鬱だなあ・・・


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