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元婚約者との再会

「そうか。ジュリアーナは元気にしてたか。」

 私はニコラス君、ドウェイン君とともにランチの最中だ。


「なかなか元気で明るいご令嬢だったよ。」

「そりゃ、俺の運命の青棒だった訳だからな。」

「でも、ニコラス君にはあまりいい印象を持ってなかったみたいだよ?」

「うん?俺も記憶は朧気だが、そんなことは無いはずなんだがなあ。」

「何でも、腹の内が読めないって印象だったらしいよ。」

「まあ、これでもク○メガネの血が流れてるからな。」

「僕は腹の内が読めないニコラス君に一度会って見たいよ。」

「ドウェインは毎日ニコラスシニアに会ってるじゃないか。いくら何でもあれほど酷くないぜ。」


「それで、ジュリア-ナ嬢がニコラス君と剣術の試合をしたいんだって。」

「そりゃいいね。この国に居る間にってことなら、急いだ方がいいな。」

「当分いるみたいだけど、早い方がいいかもね。」

「よし、早速夕方にでも会ってみようぜ。」

 ニコラス君、婚約破棄された相手なのに、気にしないのかなあ・・・



 さて放課後、私たちは城に戻り、カズコーニ嬢と面会する。


「お久しぶりです。ラトリッジ卿。」

「こちらこそ、先日は申し訳なかった。」

「まあ、いろいろ思う所はあるだろうけど、顔を合わせることも多いし、男女の不義やすれ違いが原因では無いから、少しづつでもわだかまりが解消されてくれれば嬉しいよ。」


「殿下、お気遣いいただきありがとうございます。でも心配は無用です。それを承知の上でここに来ておりますので。」

「さすがです。失礼いたしました。」

「しかし、以前お会いした時と全く印象が違いますね。」

「俺か?まあそのせいで勘当されちまったけどな。」


「口調もまるで違いますよ。ねえ殿下。」

「いや、私も彼と親しくなったのは2年だけど、最初からこんな感じだったよ?」

「そうなのですね。前回は緊張なされていたのかしら?」

「いや、実際にク○男だったんだと思うぜ。あんな奴なら俺でも願い下げだ。」

「まあ、面白いことをおっしゃいますね。」


「ニコラス君、準備できたよ!」

「おう!じゃあ最初に俺とドウェインで試合するから、それを見て、カズコーニ嬢のお相手が務まるか判断してくれ。」

「分かりました。」

 ニコラス君とドウェイン君の二人が剣を取り、試合が始まる。

 我が国の若手No1とNo2の試合だ。

 白熱した戦いが眼前で繰り広げられる。


「あの二人は今、義理の兄弟です。」

「そうなのですね。騎士団長様の家に入られたとか。」

「ええ、代わりにドウェイン君が毎日宰相の所に通って、事務を手伝っていますよ。」

「なるほど。殿下は良い側近をお持ちですね。」


「どうです?二人の剣捌きは。」

「まさかあれほどとは・・・勝てる自信はありませんが、腕が鳴りますわ。」

 そうこうしているうちに、ニコラス君がドウェイン君の剣を弾き飛ばした。


「おいおいドウェイン、随分なまってるじゃねえか。」

「いやあ、夏休みは鍛錬する時間が無かったからね。」

「親父っさんにしごかれるぞ?」

「ニコラス君が肩代わりしてよ・・・」

「それでカズコーニ嬢、どうだ、やるか?」

「ジュリアーナで結構ですよ。では、お願いしますわ。」


 防具を装着し、二人が相対する・・・

「では、始め!」

 二人とも片手剣だ。

 確かに、カズコーニ嬢の腕は鍛え上げられた武人のそれだ。

 踏み込んで打ち込む彼女の剣をニコラス君は正面で受ける。

 しばらく力比べをした後、二人が同時に下がって間合いを取る。


 じりじりとした緊張感がこちらにも伝わってくる。

 しばしの沈黙の後、両者は再び正面から激突。


 ニコラス君とドウェイン君の試合はスピードと技巧を凝らした試合になるのだが、どうやらカズコーニ嬢は力で押し切る剣術のようだ。

 そして、攻撃が最大の防御でもあるようで、間髪入れずに剣を叩き込む。

 ニコラス君は下がりながら彼の9女の好きを窺っているが、攻撃を続ける彼女にカウンターを繰り出せないでいる。


 一見、剣道の打ち込みにも見えるが、カズコーニ嬢が面や胴を自在に打ち込むのを、ニコラス君は器用に捌いている。

 足を狙おうが突こうが全てをはじき返している。


 しばらくすると、カズコーニ嬢もさすがに息が切れたのか下がった間合いを取る。

 今度はニコラス君のターンが始まるが、すでに彼の剣を受けるだけの力が残っていないのか、押し負けたところで彼女が降参した。


「か、かてま、せ、ん、で、し、たわ・・・」

「いやあ、大したもんだ。多分、オリヴィア先輩より強いな。」

「じゃあ、女性なら国内最強だね。」

「間違い無い。すでに中隊長にはなれるぜ。」

「中隊長はさせないからね。」

「分かったよ。だが入団したくなったら、いつでも歓迎するぜ。」

「ええ、是非お願いするわ。」


 本当にしかねない雰囲気が彼女にはある。

 快活なご令嬢とは聞いていたが、看板に偽りなどなかった。


「冷たい水、持って来たよ。」

「さすがドウェイン、気が利くな。ジュリア-ナ嬢に渡してやってくれ。」

「いいですわね。剣を振って汗を搔いて、土に寝転ぶ。」

「なかなかそういうご令嬢は見かけませんね。」

「私も実家ではなかなかこういうことはできません。ここは周りの目がございませんから、やんちゃし放題ですわね。」

 何だろうこの感じ、既視感があるんだが・・・


「なら、明日からも気が済むまで付き合ってやるぜ。婚約破棄の詫びだ。」

「それは楽しそうね。是非、お願いするわ。」

「はっはっは!さすがは元相棒だぜ。気に入った。」

「本当にこの4年で大きく変わったのですね。」

「ああ、こっちがメガネの呪縛が解けた本来の俺だぜ。」


 何か、汗とともにわだかまりはすっかり流れ去ったようだ。

 とにかく、良好な人間関係が一番だよね。


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