表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/169

ジュリアーナ・カズコーニ

 さて、今日は学校を欠席して客人の到着を待つ。


 そう、ファルテリーニ王国宰相、カズコーニ侯爵のご令嬢、ジュリア-ナ嬢が来訪するのである。

 彼女は元々、ニコラス君の婚約者だったが、彼が実家を勘当されたことで婚約解消になり、同国へのお詫びも兼ねて私との婚約を打診したところ、快諾してくれたものである。


「父上、どんなご令嬢なのでしょうね。」

「4年前に一度この国に来た事はあるそうだが、その時は非公式だったから儂も初めてなのだ。快活なお嬢さんだとは聞いているが。」

「皆様、ただ今ファルテリーニ王国から使者ご一行、到着されました。」

「うむ、それでは宰相、ミッチェル、出迎えを頼む。」

 国王エドガーは玉座の間に向かい、ミッチェル達は馬車を出迎えに行く。


 長い車列のうち、一際豪華な一台だけがエントランスに入って来て、中から煌びやかな女性が馭者のエスコートで降りてくる。


「遠いところお越し頂き、誠にありがとうございます。ウィンスロット王国第一王子、ミッチェル・アーネットでございます。」

「私、ファルテリーニ王国宰相の娘、ジュリアーナ・カズコーニでございます。以後、よしなに。」

「では、長旅お疲れでしょう。まずはしばし休憩がてら歓談でもいかがでしょう。」

「ありがとうございます。少し喉に湿り気が欲しいと思っていたところですわ。」


「では、客間にご案内します。お付きの方もどうぞ。」

 客間に茶と菓子が運ばれ、謁見までの間、しばし歓談する。


「遠い所、よくぞお越し下さいました。」

「はい。今回はロフェーデ王国を通過して来ましたので、時間は掛かりましたが楽でしたわ。」

「では、前回は船で。」

「はい。信用ならない国ですので。」

「そうでしたか。それで、この度は我が国の不手際で大変ご迷惑をお掛けしました。」


「それにつきましては、私からも謝罪させていただきたい。我が愚息のせいでこのようなことになり、何とお詫びすれば良いものか。せめて、今回の婚儀が成り、あの者を後悔させてやっていただきたいと存じます。」

「気になさらなくても良いのですよ。私もニコラス様には不安を感じていたところですので。」

「そうだったのですか?」

「はい、物静かというか、腹の内が見えない方とお見受けしましたので。」

 うん?そうだっけ?


「そうですか。私の知っているニコラス卿は腹に貯め込む前に口から出てくる御仁ですが。」「そうなのですか?それはまた、随分印象が違いますね。 

「口は悪いですがいい男です。剣術も強く、実家を勘当されましたが、騎士団長の養子になる予定です。」

「まあ!あの方、剣が使えたのですね。」

「かなり強いですよ。恐らく、騎士団でも指折りかと。」

「面白いですわ。では、一度お手合わせ願いたいですわね。」

 快活という評判は間違い無いようだ。


「大丈夫ですか?」

「ええ、旅の間大人しくしていたので身体が疼いて仕方無いのです。久しぶりに剣でも振ってみたいと思いますわ。」

「いいのですか?婚約破棄した相手ですが。」

「嫁げば会わないわけにはまいりませんし、コテンパンにやっつけて差し上げますわ。」

「分かりました。ニコラス卿には伝えておきます。」

「よしなに。」

「それでは殿下、ジュリアーナ様、陛下との謁見の準備が整いました。」

 一行は謁見の間に移動する。


「よくぞまいられた。国王のエドガー・アーネットだ。」

「お招き頂き後衛に存じます。ファルテリーニ王国カズコーニ侯爵家のジュリアーナと申します。」

「うむ。そなたとは初めて会うな。長旅ではあったが、どうであった?」

「はい。久しぶりに他国の空気に触れ、良い気分転換になりました。」

「旅を厭わぬというのは良い事だ。それと、急な話に応じていただき、誠に感謝する。」

「ありがたきお言葉、痛み入ります。」


「ファルテリーニ国王にも正式に礼状を送ったところだ。わだかまりもあろうが、是非ゆるりと滞在し、我が国良い印象を持ってくれるとうれしい。」

「ありがとうございます。当家としても、側室とは言え、却って栄達したことで両親もとても喜んでおりますので、ご心配なきようお願いします。」

「いやカズコーニ殿、側室ではなく正妃として迎えるつもりなのだ。」

「しかし、ミッチェル殿下には既に正式な婚約者とロフェーデの第一王女がおられると聞き及んでおりますが・・・」


「実は、ミッチェルが貴族学校卒業までは伏せておるのだが、今の婚約を白紙にする予定なのだ。それと、いかに身分が高くてもロフェーデの王女を正妃とする考えは無い。こちらが戦勝国なのでな。」

「確かに正妃として迎えるのは向こうの方ですね。」

「そちらはバレッタ王国の方が水面下で進めておるが、今の話は他言無用でお願いしたい。」

「承知致しました。」


「それで、こちらにはいつまで滞在を?」

「はい。父にはそのまま輿入れしても構わないと言われております。ウィンスロットのしきたりや言葉も不十分な所が多いので、お許しをいただければ、長期滞在したく存じます。」

「それは立派な覚悟。さすがはファルテリーニで名高いカズコーニ家のご令嬢だ。構わぬ、心ゆくまで楽しんでゆくが良い。」

「有り難き幸せ。」


 こうして謁見は無事終了し、この後非公式の場で王族が紹介された。

 そこで第二王子フィリップと第一王女クラリスを紹介したが、最後は三人+ペットのエドガーJrで戯れていた。


 とにかく、明るく人当たりのいいお嬢さんで安心した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ