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ダンジョン攻略研修

 さて、卿は3年生によるダンジョン攻略研修だ。


 例年は2学期に実施され、別名「実技の卒業試験」と言われる行事だが、今年は不穏な情勢を鑑みて前倒しで実施することになったものである。


 前世の感覚では「何で学徒動員なんだよ」だが、実際の我々は成人貴族、いざとなれば戦場に出ることも十分あり得る立場なのだ。

 女子生徒にとっては、いつ実施されても迷惑な行事に過ぎない。



 生徒は朝早くから荷物を持って移動し、1時間ほどでダンジョン入口に到着する。


 このダンジョン、さすが研修用に使われるだけあって入口が4箇所もある。

 中は迷路状になっているが地図を持たされるほか、ダンジョン内にも案内板が設置されている。これは生徒による同士討ちを防ぐ狙いもある。


 今年は118名22チームが編成され、4箇所に別れてスタートする。

 私のパーティーはニコラス、ドウェイン、ジェニファー、キャロライン、ブレンダの6名にミントやテンコーたち助っ人がコッソリ加わった10名?編制の大パーティーである。


 そして、今回はローランド殿下のパーティー、カミラ・エルドリッジ伯爵令嬢率いるキャロライン嬢の愉快な仲間達の3組合同で活動する。


 何せローランド殿下のパーティーはリーダー以外全員ルックス採用の女子だし、カミラ嬢のパーティーも全員女性だ。


 総勢20名のうち、男性はテンコーと一応フラワーさんを会わせて6名しかいない。

 しかし、私たちの力量からすれば、丁度良い護衛対象がいると思っていいだろう。

 実際、助っ人はかなり強力な戦力だし・・・


 そして、4箇所の入口の中で、最も第二階層に近い場所に、私たちを含む6パーティーがスタンバイする。

 もちろん第二階層を目指す実力者中心のパーティーだ。


「じゃあ、私たち3班合同チームから入らせて貰うよ。」

「分かりました。10分後に我々、さらに5分後に彼らのパーティーが出発ということですね。」

「そうだね。第二階層に入ったら、我々は左コース、次が右コース、最後の組は中央コースを進むから大丈夫だとは思うけど、魔法を使う時には周囲を確認して下さい。」

「分かりました、殿下。」


 こうしてニコラス君、ドウェイン君を先頭に、いよいよダンジョン攻略が始まる。

 ちなみに私とテンコーは最後尾だ。



~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 今日は私にとってシナリオ最大の鬼門、ダンジョン攻略研修イベントがある。


 このゲームにおいて、闇落ちしたジェニファーが魔族に精神を乗っ取られる可能性のあるイベントは二つある。

 一つはここで、もう一つが夏休みの交流会で行われる肝試しね。


 いずれも王子ルートもしくは逆ハールートで、トゥルー・バッドに拘わらず起きるわ。

 私も、今のヒロインの動向を探ろうと頑張ってみたけど、どのルートを目指しているか分からなかったわ。


 今のところ、どのルートも目指していないように見えるし、私自身、闇落ちしてる自覚は無いから大丈夫だと信じてる。


 ただし、ヒロインの「誰も攻略しない選択」をシステムがどのルートのバッドエンドと判定するかは分からない。

 戦争や魔王出現イベントが起きてしまった以上、バッドエンドに向かっていることだけは確かなので、それも含めて油断は禁物よ。

 そういう理由で、本当は欠席したくて仕方無かったけど、殿下の婚約者として、まだ彼の隣にいないといけないから、こうしてダンジョンの入口に立ってる。



「あらジェニファー様、肩が怯えた小動物のように震えておりますわよ。」

「このくらいの荷物なら持てますのでご心配なく。」

「そうですか。しかし、この中で実戦経験を持つ女性、殿下と並び立った実績を持つ女性、高貴な女性は私一人ですので、パーティーのサブリーダーとしては、心配せざるを得ないのですわ。オーッホッホ!」


「私も闇の使い手、決して遅れを取ることはございません。」

「いざとなればノブレス・オブリージュの精神で守って差し上げますから、どうぞ後ろで震えていらして結構ですわ。」

「そこ、コウモリのお出し物が落ちておりますわよ?」

「キャーッ!」


 彼女、精一杯虚勢を張ってるけど、何か薄っぺらくて愛嬌あるのよね。

 そんな事を考えながら、第二階層の階段に足を踏み入れる。



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「さて殿下、今日はどこまで行くつもりなんだ?」

「できたら第三階層の階段まで行きたいと考えてる。」

「歩くだけなら楽勝なんだろうな。」

「片道約4km、ご令嬢方がいるから戦闘や解体、休憩を挟んでたら結構タイトだと思うよ。」

「じゃあ、少し急いだ方がいいよね。」

「そうだ。16:00までに入口に戻らないと捜索隊が出る手筈になっているからな。」


「何で17:00じゃないんだ?」

「捜索隊だって遅くに出発するの嫌でしょ?」

「そうだな。」


 このダンジョンは所謂迷宮型ダンジョンで、地上にある入口から下に降りていく構造だ。

 全部で5階層まであり、ダンジョンが攻略されて既に300年が経過したかなり難易度の低いダンジョンである。

 往時は知らないが、今の我々なら最深部でも苦戦はしないだろう。


「見てみたいな。元のダンジョンコアルームってやつ。」

「とてもじゃないけど、時間が足りないねえ。」

「そうだな。急ぎで2日、じっくり探索するなら3日は欲しいね。」

「そうだな。フロアがやたら広いからね。」


「私はその、高貴な令嬢ですので、バスの無い生活はちょっと・・・」

「おいおい、さっきまでの威勢はどこ行っちまったんだよ。」

「レディな部分は仕方ありませんわ。」

「見当たらねえなぁ、レディ・・・」

「いたよっ!右の通路!」

 ミントの声がする。

 直ちに全員が配置に着く。


 前衛はニコラス、ドウェイン、フラワーさんが勤める。比較的通路は広いが、剣の旋回は陰萎を考えれば、これ以上前衛を並べない方が良い。


「キラーアントか。楽勝だ。」

 言うや否や、ニコラス君が突進、後の二人がそれに続く。

 彼は楽勝と言っていたが、20匹ほど群れている。

 さすがにご令嬢のみの単独パーティーなら撤退せざるを得ない程度には強い。

 そして、彼らがキラーアントに接敵する前に、後方の魔法が飛んでくる。


ドンッ!という破裂音とともに前列のアントが弾け飛び、それに構わず前衛が2列目、3列目に対して斬撃を放つ。その様はまさに疾風だ。

 そして前衛が群れの隊列を突っ切った時、残った敵は一つも無かった。


「あっという間だったな。」

「闇属性ってすごいね。」

「そうだね。魔術そのものはローランド殿下の方が高威力に見えたけど、元々の術式性能は闇の方が凄いね。」

「ああ、それは認める。同格の術士なら四属性の方が負ける。」

「ありがとうございます。お誉めいただき光栄ですわ。」


「まあ、何はともあれ、これ全部の解体となると・・・」

「まあ、やろうぜ。」

「ドウェイン、風魔法で胴体をちゃちゃっと切り刻んでくれ。」

 他に2名、風属性の術者がいたので、床はかなり悲惨なことになったが、20分ほどで作業は完了した。

「さて、まだ時間はある。先を急ごう。」


 この後、4回の戦闘で多くの魔物を討伐し、第三層入口に向かう階段まで到達できた。 ここで、しばらく休憩を取りながら後続の到着を待つこと都市、その間、ニコラス君とドウェイン君は階段の調査を行った。


 その後、無事合流した総勢30名は何とか時間内に帰還することができた。


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