バロールの躓き
我ガ名ハバロール。悪名轟ク伝説ノ魔王デアル。
五百年前ニ、聖剣持チトニックキ聖女ニヨッテ封印サレ、恨ミヲ募ラセテオッタガ、何ノ僥倖カ、突然呼ビ戻サレタ。
我ノ生キル目的ハ決マッテイル。リベンジト恐怖ニヨル世界ノ支配デアル。
ソシテ我ハ、復活ヲ果タシテスグニ、懐カシイオリャール山ニ籠モリ、活動準備ニ勤シンデオル。
マズ行ッタノハ四天王ノ復活デアル。
アスモデウス、ベルゼブブ、ルシファー、サタントイウ有名ドコロヲ召喚スレバ間違イハナカロウ。
ソレデモマダ少シ余力ガアリソウダッタカラ、ベルフェゴール、スクブスノ二体モ召喚シタ。
今ノ聖剣持チト聖女ノ実力モ知ッテイルカラ、コノメンバーデ事ナ成ト考エテオル。
シカシ、ソンナ我ニモ大キナ不満ト懸念ガアル。
確カニ枷ハ取リ除カレ、完全復活ヲ果タシタ筈ナノニ、体ガ十全ニ動カセナイノダ。
復活シタテデ本調子デナイナドトイウレベルデハナイ。
明ラカニ負傷シタ時ノソレダ。
原因モ心当タリガアル。
頭ト胴体ハ聖剣デ斬ラレ、魂ト右腕ハ聖女ノ新鮮ナ封印ノセイデ麻痺シテイル。
完全復活シタノニ片言ナノハソノセイダ。
何トモ情ケナクモドカシイ。
ソノ上、我ノ魔剣ブラックサンダーニ至ッテハ折レテイルデハナイカ!
今ノママデハ半分モポテンシャルヲ発揮デキヌ故、四天王ニハ存分ニ働イテモラウ必要ガアル。
アンナヤツラヲ信用スルコトハデキヌタメ、我史上、最モフラストレーションガ溜マル戦ニナルコトハ確実ダ。
「閣下、この度は我々を召喚していただき、誠に有り難うございました。」
「ヘヘヘッ!しかし、バロール様頭悪そうですねえ。」
「ダマレ!ハエノ分際デ。」
「そのハエほどの知能すら怪しいもんですぜ。」
「そんなことはどうでも良いではありませんか。それでバロール様、これからいかがするお考えで?」
「マズハ拠点ヲ定メテソコヲ固メル。ソノ後、コノ近辺カエア制圧シテイク。」
「では、我らが手分けした方が良いですな。」
「ココニハベルフェゴール、スクブスヲ残セバ十分ダ。」
「では、二名に拠点ヲ構築させ、我ら四名で蹂躙すれば良いのですな。」
「各自十分ニ眷属ヲ増ヤシテオケ。」
「畏まりました。」
こうして魔王一派はその行動を開始する。
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「軍務卿よ、その後の調査で何か分かったか。」
「申し訳ございません、陛下。何分、遺跡の損壊が激しいことと、生存者が少ないことが重なり、調査が思うように進んでおりません。」
「ロフェーデ国内の様子はどうだ。」
「全般的には落ち着いており、占領統治も順調と言えますが、ここ数日、第一王子と宮中伯が公の場に姿を見せていないばかりか、消息すら分からない状態です。」
「二人揃って病気は無いな。」
「はい。元々こちらが手を焼くほど元気でありました。」
「引き続き、ロフェーデ王家周辺に怪しい動きがないか、監視を続けよ。」
「はっ、それと東部オリャール地方のファルテリーニ駐留軍との連絡が途絶えたとの未確認情報もございます。」
「東部には我が軍はいなかったな。」
「はい。ファルテリーニが単独統治を行っております。」
「気にするほどのことでは無いかも知れぬが、引き続き情報収集に当たれ。」
「御意。」
「ミッチェル、聞いたな。」
「はい。まだ噂の真相は分からないのですね。」
「だが油断はするなよ。現にお前は魔王と対峙した経験がある。荒唐無稽と笑い飛ばせるだけの根拠も無ければロフェーデだって内心は我らへの反撃の機を窺っておる。」
「もちろんです。」
「それと来月、ロフェーデのマルガレーテ第一王女とファルテリーニのジュリアーナ・カズコーニ嬢が相次いで訪問することが決まった。お前も猶予はあと一年だ。そちらもそろそろ心の準備をせよ。」
「はい。父上。」