婚約者、未だ決まらず
クリスマスが終わればすぐに新年だ。
この日は陛下が王宮に主だった臣下を集め、新年の抱負を訓示して、簡単なパーティーが開かれる。
そして午後にはそれも終わり、夕方は王族のみの晩餐会が執り行われる。
私も朝からこれらに参加し、今は家族との時間を過ごしている。
「父上、お疲れ様でした。」
「ああ、また新しい年が始まった。」
「あなた。今年は良い年になって欲しいですわね。」
「まだロフェーデが落ち着かんので忙しいだろうが、それでも、敵国が堂々とのさばっていた頃に比べればマシだからな。」
「ミッチェル、あなたも最終学年になります。未来の王として恥ずかしくない結果を期待しておりますよ。」
「はい。全力で頑張ります。」
「それでミッチェル。前に話したロフェーデの王女のことだが、お前の側妃ということで、バレッタとファルテリーニの了承を得た。」
「そうですか。」
「まあ、あまり気乗りがしないだろうが。」
「両国は希望しなかったのですか。」
「バレッタはローランド殿下の暗殺未遂でかなり怒り心頭でな。そんな所から妃を娶る気は無いそうだ。ファルテリーニの王太子は31才だからな。」
「お孫さんなんかいいと思いますが。」
「第一王子はまだ7つだ。第二王女は13だから可能だろうが、まだ色んな意味で早いだろうということで、お前に決まった。」
「まあ、三国とも正妃にはしたくないでしょうから。」
「そういうことだ。一応、お前には婚約者がいることになっているからな。」
「それで、どちらの王女になるのですか。」
「第一王女だ。19になったそうだ。」
「そうですか。では、いつ婚約発表になるのですか?」
「できるだけ早い方がいいな。和平一周年に合わせて発表できればいいと考えておる。」
「夏ですか。では、本物の婚約者についても。」
「それが理想だが、なかなか良い相手が見つからん。」
「候補はどなたでしょうか。」
「最有力はゴールドバーグ侯爵家で、もう一人は聖女ルシアだな。」
「やはりその二人ですか。」
「いずれも、以前のジェニファー嬢より上、今のジェニファー嬢には及ばぬ、と見ておるがな。」
「私もそう見ます。」
「それで、二人とも同級生だが、そちから見た二人は。」
「キャロライン嬢は私に好意的だと思いますし、その覚悟もあるかと思います。ルシア嬢は王家に入りたくないように見えますし、平素から私と距離があります。」
「そうか。ゴールドバーグ嬢でほぼ決まりという情勢だな。」
「侯爵はどのように。」
「ああ、侯爵が慎重な姿勢を崩しておらんでな。まあ、ヴィクトリアとは浅からぬ因縁があるからな。」
「母上と?」
「ああ、今の侯爵の姉とヴィクトリアが激しく王妃の座を争ってな。結局、そのご令嬢はヴィクトリアに毒を盛ったとして辺境の修道院に追放したが、それもあって、侯爵は王家と距離を取っておるのだ。」
「私も、ゴールドバーグは嫌ですわ。」
「キャロライン嬢は、全く気にする素振りすらありませんが。」
「なかなか個性的なご令嬢と聞くな。」
「はい。他に候補はいないのですか?」
「個人的にはアッシャー家のオリヴィア嬢が良かったのだが、婚約してしまったしな。」
「ああ、オリヴィア先輩ですか。」
「実は5年前にも候補として名が挙がっておったのだ。とても利発で人柄も良いのでな。」
「それでもジェニファー嬢になったと。」
「同じ派閥の長だからな。公爵家に気を使って譲ったのだ。」
「なかなか上手く行かないものですね。」
「そうだな。まあ、フレミング家が辞退したからはいそうですか、とはなかなかならんだろうな。」
「他派閥が食い込むよりはいいと思いますが。」
「アッシャーが侯爵のままならな。」
「私としてはどうでもいいのですが。」
「しかし、任命するのは王だからな。お前もいずれはそういう苦労を味わうことになる。」
「確かにそうですね。他に候補は全くいないのですか?」
「後はアリス・シートン伯爵令嬢かルイス・ファーマン伯爵令嬢だが、彼女たちではロフェーデの王女を側記にする名分が立たん。」
二人とも、ローランド殿下が連れて帰りそうだが・・・
「実家の後ろ盾は小さそうですね。」
「という訳でなかなかおらん。フィリップには4人も有力候補がいるというのに。」
「では、弟を次期後継に。」
「それこそロフェーデが黙っておらんだろう。」
「そうですね。」
「では、ファルテリーニの宰相殿の娘さんなどは?」
「ああ、ニコラスと婚約が解消されたご令嬢か。まあ、それもアリだが・・・」
ナシ寄りのアリかな?
「まあ、ファルテリーニには打診しておこう。」
本当に難航しているのは分かった・・・