クリスマス会
さて、今日はクリスマスイブだ。
私は外国の事情に明るい訳じゃ無いが、この国のクリスマスのノリは日本と全く同じだ。
宗教色なんて微塵も無い。恋人のためのイベントだ。
だから、基本的には婚約者のいる人はパートナーと過ごすのだが、何故か生徒会でクリスマス会をやろうという話になり、こうして集まっている。
何だか、クリスマスというよりお誕生会のノリだが、ジェニファー嬢とアナベル嬢、そしてシナモンたち妖精軍団も参加している。
「まさかこれほど出席率がいいとは思わなかったよ。」
「ローランド殿下とジェームズ以外いるもんな。」
「もぅお~! ジェームズのいけず~。」
フラワーさんはちょっとテンション低めだ。
でも先生、彼女いるんだな・・・
「ローランド殿下は欠席だけど。」
「隣の部屋は凄い人数だよ。」
そう、今日はハーレムサークルのパーティーも隣の部室で行われている。
「あれ、後で絶対雪崩れ込んでくるよ。」
「でも、殿下はともかく、ご令嬢方はもう少し淑女らしく振る舞っていただきたいものですわ。」
「じゃあ、みんなシャンパン注いだかな。」
「準備はOKですわ。」
「では、メリークリスマス。」
「メリークリスマス。」
こうしてパーティーは賑やかに始まる。
「ケーキ入刀は誰がするんだ?」
「それはもちろん、ミッチェル殿下と私ですわ。」
「おいおい、婚約者様を差し置いてか?」
「こんなレアキャラ、殿下の婚約には役不足ですわ。」
「あら、ピ○チュウだって最近は後ろで皆の成長を見守っているだけですわ。私は寛大なのでキャロライン嬢の成長を温かい目で見守っているだけで、まだあなたを十分と認めている訳ではありませんわよ。」
「随分余裕があるフリをなさってますけど、眉間の皺を消してからおっしゃった方が説得力ありますわよ。」
「あなたも随分、悪役が板に付いてきてますね。」
「ええ、酸いも甘いも全て飲み込む勢いで成長していますわ。すでに主役は私ですの。オーッホッホ!」
「こりゃ収拾がつかねえな。ドウェイン、アナベル嬢、こんなヤツら無視して入刀しちまえ。」
「そうね。妾を待たせるような者達はほっといてもいいわ。」
ご先祖様の鶴の一声で、ドウェイン君のカップルがケーキ入刀作業を行う。
これでやっと歓談が始まる。
「ほらミント、ケーキを小さくしてあげたよ。」
「テンコー君ありがとー。」
極小に切り分けられたケーキがフワフワと浮かんでいる。
大きな食器が使えないミントたちはパタパタと飛びながらケーキを頬張っている。
「それもイリュージョンか。」
「そうだよ。イリュージョンに不可能はないんだ。」
「まるでチートだな。」
「イチゴをこのサイズに切るのは一流の料理人にだって不可能だよ。」
「シャンパンも飛ばしてやれよ。」
「それはいいね。」
テンコーがいつもの曲を口ずさむと、シャンパンが小さなシャボン玉のように浮かび上がる。
「わぁきれいー。」
「おいしー!」
「ミント、飲み過ぎると飛べなくなるぞ。」
「大丈夫。自動制御に切り替えるから落ちないよー。」
なんだその機能は・・・
でもミントたち、飛びながら時々寝てるよなあ。
「でも、クリスマスに飛ぶ妖精っていいですね。」
「そうだテンコー、雪降らせること出来るか?」
「窓の外くらいなら白く見せられるよ。」
そうだよね。魔法じゃないもんね。
テンコーはすぐに外を雪化粧に変える。
まあ、白く見えてるだけだと思うけど。
「こっちもやってるね。どうだい、合同パーティーってのか。」
ローランド殿下たちが料理とお酒を持って入ってくる。
生徒会室はとても広い造りだが、それでも二十人が追加で入ってくるとすごいことになる。
「こっちにはミラーボールは無いけど、ミントたちが飛んでていいな。」
「いや殿下、どっちかというとこっちの方がクリスマスらしいぜ。」
「そう思ってこっちに来たんだよ。ニコラスだって婚約者探ししないとだろ?」
「そういう殿下はどうなんだよ。」
「卒業までは時間をやるって陛下に言われてるよ。」
私と同じか。
それはさておき、圧倒的に女性率の上がった会場はさらに盛り上がりを見せる。
本当にお誕生会のノリになってしまった。
「今日はミッチェル殿下とローランド殿下にお招きいただき、光栄の極みでございます。」
「私もです。国中探しても、これほど貴重なパーティーはございませんもの。」
ご令嬢達にご満足いただけて何よりだ。
この中にいい子いるかなあ・・・
「ダンジョン攻略研修は怖くて憂鬱ですけど、今日は楽しみたいと思います。」
「そう言えば、前倒しで来年度早々にやるんだったよな。」
「そうなのです。半年も繰り上がってしまって・・・」
「まあ、政情不安だし、生徒だって狙われてるしな。」
「自衛力を上げようということなのでしょうね。」
「ローランド殿下のパーティーはすでにメンバーが固まってますけど、ミッチェル殿下はどうなさるおつもりですか?」
「うん。去年の合宿訓練の際にニコラス君、ドウェイン君、キャロライン嬢と組んだけど、これにジェニファーを加えた五人を考えてるよ。」
「殿下、もしよろしければブレンダも加えていただきたいのですが。」
「ジェニファー様、パーティーは五人と決まっておりますのよ。いかに公爵令嬢とはいえ、我が儘は認められませんわ。」
「まあまあ、別に六人でも何とかなるでしょう。人数が割りきれない場合は他のパーティーに人数が増えるか、先生と組むことになるんだろうし。」
「女子ならウチが歓迎するぜ。」
「そうだな。ジェームズを揺すれば、その辺りはどうにでもなるだろう。」
「ああ、アイツが担当って言ってたな。」
「ミントも行きた~い!」
「いいんじゃないか?学校の貴重な戦力だし。」
ということで、テンコーやご先祖様たちも参加と相成った。
何か、パーティーでパーティーの話をすることになったが、お酒が進むにつれ、真面目な話は少なくなっていく。
「お~いドウェイン、裸踊りだ裸踊り。」
「いいねえ。パーティーと言えば裸踊りだ。」
「二人とも、ノリがオッサンだよ。」
「いいじゃねえか。クリスマスなんだから。」
クリスマスだから何だと言うのだろう・・・
「僕、婚約者が隣にいるんだけど。」
「しょうがねえな。じゃあローランド殿下、やるか。」
「いいぜ。」
「キャーッ!」
「やはりニコラス卿はお下劣ですわ。」
「ミッチェル殿下、さすがにこれは・・・」
「わ、分かってるよ。テンコー、二人をご令嬢達から見えないようにしてくれ。」
「任せてよ。」
酔っぱらい二人は気分良く踊ってるが、周りから見えてないことに気付いていない。
彼らはこのまま朝まで隔離しておこう。
「ようやく静かになりましたわね。」
「ミントも寝ちゃったし、そろそろお開きでもいいかな。」
そうは言ったものの、ドンチャン騒ぎは夜まで続いた。