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ジェームズも進化する

「シンディ、誕生日おめでとう。」

「ありがとう、ジェームズ。」


 グラスの軽やかな音が店内に響く。

 今日は奮発して、王都でも人気の高級レストランで食事だ。


 彼女とも交際4ヶ月が経ち、とても順調だ。

 もう前の彼女なんて名前も思い出せないくらいで、傷なんてはるか前に完治している。


 その上、学校でも女子に大人気でとても充実している。

 フラワーさんに付きまとわれていること以外は・・・


「嬉しいわ。私もこういう店、初めて来るもの。」

「シンディくらい美しければ、ここに喜んで招いてくれる殿方もいたんじゃない?」

「もう、他の男の話なんてしないで欲しいわ。」

「ゴメンゴメン。そう言ってもらえて光栄だよ。」

「私にとっては唯一最高なんだからね。」


 彼女はこういう可愛い女性だ。

 最初から彼女にしとけば良かったんだけど、これも経験だな。


「じゃあこれ。今日のために僕が選んだものなんだ。」

「まあ!開けてもいいかしら。」

「どうぞ。似合うと思うよ。」

「うれしい。ダイヤね。」

「君に一番似合う物をって見てたら、店で一番高級な物になってしまった。」

 冬のボーナス一括払いじゃ足りなかったので、それは頭金にして2年ローンだ。

 当分結婚資金は貯められないなあ・・・


「とても嬉しいけど、私には勿体ないわ。あまり無理をしないでね。」

 こういう控え目なところが前の女とは違う。

 やはり彼女にして良かった。


「じゃあ、料理も来たし、楽しもう。」

 人気の店で、どのテーブルも埋まっているが、それでもとても静かだ。

 そう、周囲は格上の上流階級の人たちばかりだ。


 でも、今日の僕たちはそれに決して見劣りはしない。

 シャンデリアから降り注ぐシャンパンカラーの光は、今日の主役である私たちを中心に照らし出してるみたいだ。


「もうすぐクリスマスね。」

「そうだね。すでに別の店を予約してるよ。」

 どうしてキリスト教が無いのにクリスマスがあるかって?

 そりゃ、僕たちを祝福するために決まってるじゃないか。


 ご都合主義?いや、僕を中心に世界が回ってるって言って欲しいね。

 殻を破った大人の僕は、彼女を抱いたままでも羽ばたけるほどの力を持っているんだから。


「本当に、ジェームズといると、行ったことの無い所、なったことの無い私を次々に体験できるわ。本当に素敵・・・」

「これからも一緒だよ。」

「ええ。私こそよろしくね。」

「今日、ここに座っているのが僕で本当に良かったと思ってるよ。」

「私は昔からモテなかったから、ジェームズだけなんだけどね。」

「お互い、不遇だった時期を乗り越えて、今がある。」


 メインを口に運ぶ。

 芳醇な赤ワインの香りが広がる。


 肉のうまみとコクを楽しみながら、心は幸福感に満たされていく。


「本当に最高の誕生日ね。忘れられない思い出になること間違いなしね。」

「それは僕も同じだよ。」

 そして、続くデザートも堪能した。

 上質で穏やかに流れる時間。

 そして目の前には最愛の女性。まるで一流の演出家が監修したような完璧なラブシーンがここにある。


「じゃあ、そろそろ出ようか。」

「はい。」

 二人は店を出る。

 町はすっかり夜の装いであるが、まだ人通りは多い。

 私は賃貸馬車を借りて彼女をエスコートする。


「さあお嬢様、こちらへ。」

「嬉しいわ、ジェームズ。」

 馬車は平民も利用する質素なものだが、今夜の彼女にとっては、かぼちゃの馬車以上の輝きだろう。

 馭者が扉を閉めてゆっくり動く出す。

 途中、先ほどの料理の感想を語らいながら、馬車は歓楽街の中にあるホテルが建ち並ぶ通りに入っていく。


「さあ、冬の夜は長いよ。」

「ええ、楽しみにしてたわ。」

 部屋を取った後、従者に案内される。

 部屋はホテルの中でもハイグレードなもので、既に暖炉に火が入っている。


「では、部屋まで酒を。」

「畏まりました。」

 彼女をバスルームに案内し、僕はソファに身を沈める。これも大人の余裕ってものだ。

 ジェームズになって2年近くが経つが、この時間で僕は大きく成長した。

 それまでの20年が空しくなるほどに。


「でも、これからは違うよ。」

 そう、今の僕はどんな女性が隣にいたって見劣りなどしない。

 ホテルマンが持ってきた強い酒をあおりながら、そう自分に言い聞かせ、実感する。

 すると、彼女が出てきた。僕は彼女に酒を勧める。


「では、二次会の乾杯だ。」

「ええ、是非に。」

 しばらく二人で飲み、僕もシャワーを浴びた。

 すっかり夜は更け、記念すべき二人の時間は佳境を迎える。


「じゃあ、いいかな。」

「ええ、もちろん。」

 ここストーリーは全年齢対象だから、君たち子供は早く寝なきゃダメだよ?


 そんなことを思いつつ、僕は大人の沼に沈んでいく・・・


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