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魔術を披露する

 さて、今日は魔術の実技だ。

 クラス全員で訓練場に集まっている。


 この学校では毎年のことだが、生徒の魔法習得レベルの差が著しい。

 これは、隣の魔法大国バレッタと異なり、貴族階級があまり魔術を重要視していないためだ。

理由は簡単で、魔術は軍人か下人、庶民が使うものという風潮が根強いからだ。

 このため、軍用の攻撃魔法と生活魔法のみが極端に発達しており、最前線に立たず家事もしない貴族層は関心が薄いのである。

 下級貴族はともかく、上流階級になればなるほど縁遠いものなのである。


 ということで、魔法学も座学が中心だが、できる者にとっては退屈極まりない。そこで、座学と実技が交互に行われるのである。

 確か、ジェームズ先生も下級貴族のご出身である。

 ただ、王族である私は、嗜みとして幼い頃から訓練を受けていたようで、属性は水だ。


「では、魔術をすでに使える人は前へ。」

 私のクラス30名のいち、10数名が前に出る。ドウェイン君は当然のことだが、ニコラス君も使えるみたいだ。


「このクラスは思ったより多いね。それぞれ属性は何だい?」

 水や火など、それぞれがめいめい答える。


「私は闇です。」

 そう答えたのはジェニファー・フレミング嬢。

「ほう、珍しいね。闇属性はだいたい三千人に一人くらいの割合しかいない。そのほとんどが軍人になるんだ。」

 みんながどよめく。私だってビックリだ。


「最後の君、ルシア君だっけ?」

「私は光です。」

「光はこの国でも現在、3人しか確認されていないとても貴重な属性だよ。さすがは聖女様だよね。」

「はい・・・」

 さらに周囲がどよめく。レア属性が同じクラスに同時にいるのだ。

 しかもあのご令嬢、聖女だって?


「聖女様は当代に一人だから、光属性を持っている人の中でも飛び抜けて魔力が多くて、技術と才能溢れる人物だと教会が認めた訳だ。素晴らしいと思うよ。」


「先生!魔力はみんな持っているものなんですか?」

「そうだね。ほぼ8割の人が何らかの属性の魔力を持っている。普通は一つだけど、稀に二つの属性を持つ人もいる。」

「闇魔術って怖いんですか?」

「そんなことは無いよ。ただそういう名前が付けられているだけだ。光に対する闇、それ以上の意味合いはないんだ。」

「なあんだ。そういうことですか。」


「そして、座学の時間で教えたとおり、火は風、水は火、土は水、風は土を打ち消す相反関係にある。だから、軍は全ての属性を揃える必要があるし、闇を打ち消す光属性の持ち主はほぼいないから、闇は軍で重宝されるんだ。簡単に言えば光は聖人、闇は軍人だね。」

「光を打ち消す属性は無いんですね。」

「だから光属性持ちは神聖視される。ちなみに、光属性はほとんどの場合、女性に発現するんだ。闇は性別による差異は無いとされている。」

 そうなんだ。とても参考になる。


「じゃあ取りあえず、魔法が使える人はそれぞれ出してみて。危ないから決して打ち出しちゃだめだよ。」

 みんながそれぞれ魔法を発現させる。

 丁度、手のひらサイズの小さな球状の魔力塊が渦を巻くように出現している。


「そうそう、みんな上手くコントロールできているね。慣れたらもう少し高度な内容を教えるけど、今はちゃんと制御できていればそれでいいよ。」

 そうして先生は一人一人の魔法をチェックしていく。

 すると・・・


「何すんのよ!」

 突然、女子の声が聞こえたかと思うと、先生が弾け飛んでいた。

「おっと、手元が狂ったぜ。」

 そして魔術が炸裂する音。

「うわぁっ!」


 一体、何事なんだろう・・・


~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/


 アタシは他の生徒とともに、光の球を手のひらの上に浮かべる。

 みんなが羨ましそうな顔で驚いてるけど、目立ちたくないアタシにとっては、決して嬉しい事じゃなく、ちょっと苦笑い気味に固まってた。


 それに、学校で初めて魔術を披露するこのシーンはイベントなの。

 お腹が痛いって休めば良かった。


 光の魔法を見せることで、全てのキャラの好感度が僅かに上がるけど、基本的にあのキモい先生のイベントね。

 そう思ってたら、来た来た・・・


「うん、ルシア君、上手く出来ているようだね。僕も光の魔法を間近で見たのは初めてだよ。やっぱり凄いね。」

 先生は私の光球をマジマジと見てたわ。


「これが希少な光属性魔術。グフフッ、やはり興味深いね。ルシア君、今度僕の研究に付き合ってくれるかな?」

「え、ええ・・・」

「それと、うん、魔術の出し方はおおむねいいんだけど、余計な力が入っているね。効率的に魔法を出そうとするなら、ここの力は抜いて、ここに力を集中させるんだよ。グフグフッ。」

 先生はアタシのお尻にタッチ、いや、結構ガッツリ来た。


「何すんのよ!」

 アタシは激しい怒りとともに、先生の顔に渾身のグーパンをお見舞いしてやった。

 女子のパンチなんて大した事ないよねって思ったけど、先生は吹っ飛んじゃった。

 先生弱っ・・・なんて思った瞬間、

「おっと、手元が狂ったぜ。」

 という声とともに、小さな火の玉が先生の方に飛んでいく。

 ドンッ!

「うわぁっ!」


 危ない!って一瞬思ったわ。

 魔術を発現させられるとはいっても、所詮は初心者だもん。

 ビックリして暴走させちゃったのね。

 それに、小さいといっても火の玉だから怪我するよね。


 そう思って先生の方を見たら、先生の顔のすぐ横に魔術痕が残ってた。

 火属性だから焦げたような跡と一緒にね。

 ホントギリギリの所。よく当たらなかったなあと思いながらも、ちょっとざまぁ。


「先生、すいません。ちょっとビックリして。」

 見ると、あの超軽量薄型王子がちょっとだけ申し訳なさそうな顔してた。

 もとい、アレ絶対ワザとだわ・・・


 そうしてざわついている間に授業終了のチャイムが鳴り、このイベントの結果と影響をどう分析すればいいか分からない状態でお開きになった。


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