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ニコラスVS宗教勧誘員

 さて、先日の調査で何だか怪しげなカルト宗教のスカウトが学校周辺に出没していることが分かった。

しかも目撃情報によると、複数の人間が交代で勧誘を行っているそうだ。


 前世でも家まで来るヤツはいた。

 まあ、和子の姿を見た瞬間に、大概の勧誘や押し売りはビビって立ち去ってくれたが・・・



「ニコラス先輩、あの男じゃないですか?」

「いかにもなフードを被ってるな。」

「テンプレな邪神信仰教団ですね。」

「魔王でも復活させるつもりなのか?」

「神の名はパテ-ラと言うそうですよ。」

「確か魔王の名もそんな名前だったな。」

 違うよ?

 とにかく、二人は彼にそれとなく近付いていく。


「そこのお二人さん・・・は結構です・・・」

「おいおい何だよ。俺の顔に何か付いてるって言うのか?」

「いいえ、とんでもない。断じてそのようなことではございません。」

「それで、俺に何か用か?」

「いいえ、用があるかなとは思いましたが、私の気のせいでございます。大変失礼しました。」

「俺は親切な人間だからな。お前の用事に付き合ってやるぜ。さあ早く、用件を言え!」

「そ、その、少しお時間を頂戴しまして。」

 間違い無い。先日ローランド殿下が会ったヤツらの仲間だ。


「確か、高貴な人間は時給換算だってドリルが言ってたな。何で日雇いが高貴なのかは知らんが。」

「あ、あの、3分だけお時間をいただけないでしょうか。」

「いや時給だって言ってんだろうが。3分でも1時間分の料金をもらうぞ。」

「それはぼったくりでございます。」

「仕方ねえだろ。そういう規則なんだから。」


「それで、おいくらになるのでしょうか?」

「俺は今でこそ子爵家の人間だが、元を正せば侯爵家の出身だからな。ドリルと同額で金貨3枚で手を打ってやろう。」

「それならば、結構でございます。」

「何言ってるんだ。既にこうして話をしているじゃねえか。もうカウントは始まってるから、何もしなくたって料金は払ってもらうぜ。」

「そんな、殺生な・・・」

「早くしろ。俺だって鍛錬の時間が迫ってるんだ。」


 胸ぐらを掴んでやれば、こう言うヤツは大概大人しくなる。

 そして諦めたか、祈りの準備を始める。


「では、軽く頭を垂れ、手を組んで下さい。」

「おう、分かったぜ。」

「天にましますパテーラの神よ。願わくは悩み多き人の心を安んじ給え、日々の糧を今日も与え給え、健やかなる日々と成功を与え給え、我ら神の僕を栄え増やし給え。」

「おいちょっと待て。」

「何でございましょう。まだ祈りの途中でございます。」

「そんな祈りは聞いた事がないんだが、お前が神官の資格を持っている証拠はあるのか?」

「はい。このロザリオはパテ-ラの神に選ばれし者のみがいただける、大変ありがたいものなのです。」


「それを持っていれば神官になれるのか。」

「はい。もちろんでございます。これを持っていれば神と対話ができ、様々な加護もいただけます。神教など問題になりません。」

「ほう?お前に祈ってもらえれば、それが貰えるのか?」

「いいえ、これは大変貴重なものですので、かなり高額なお布施が必要となります。」

「ならいらねえな。貴族は金と権力で幸せが買える特権階級だからな。」

「お金で幸せは手に入りませんよ。神は常にそう警鐘を鳴らしています。」

「俺にはそんなもの聞こえねえな。それに、その首飾りも高い金で買ったものだろう?」

「買ったなどとは失敬な。しかもこれは、新たな信者を獲得すれば奨励金という形で戻ってくるのです。」


「なら俺には必要ねえな。金を得る手段なら他にいくらでもアテがある。」

「そうですか、それでは私はあなたにとって必要無いということで、これにて失礼させていただきます。」

「おい待て。その前に金貨払え。」

「そんなご無体な・・・」


「本来なら迷惑料込みで払ってもらいてえが、基本料金3枚で勘弁してやる。さあ払え。」

「そんな。いくら貴族様と言えどもあまりに乱暴が過ぎます。」

「ごく一般的な貴族ってこんなもんだろ。」

「それはそうですが・・・」

「つべこべ言わずに早く払え。さもないと追加料金を請求するぞ。」

「そ、そんな・・・金貨3枚なんて持ってませんよ。」


「じゃあ、取りあえず今の有り金を全てこちらに渡せ。足りない分は取りに帰ってもいいが、1時間を超えると追加が発生するから急げよ。」


 俺は男から銀貨6枚と銅貨20枚を受け取ったが、これじゃ金貨1枚にもなりゃしない。

 宗教勧誘よりは大型の運転手の方が儲けるんだな。

 こうして男は立ち去った。


「じゃあ、帰るか。」

「先輩、待たなくていいんですか?」

「貴族を待たせるってどういうことだよ。俺たちゃ戻って茶でも飲んでりゃいいんだよ。」

「先輩、凄すぎです。」

 どうせヤツも戻っては来ないだろうからな。


 ああいう悪質なのを懲らしめるには、このくらいやった方がいいんだぜ。


 まあ、これに懲りて、ここでは勧誘しなくなるだろうけどな。


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