休日にお出掛け
これは生徒会活動では無いが、たまの休日、みんなでピクニックに行って親睦を図ろうということになった。
夏休みの交流会もあんなことになったし、埋め合わせに丁度良いだろうということで王都郊外で遊んでいる。
「どうです?我がゴールドバーグ家が誇る料理人たちによる珠玉のメニューの数々は。」
「最早ピクニックの域を超えた豪華さだね。」
「特にビーフストロガノフは当家自慢の逸品ですの。さあ、舌まで下卑たニコラスよ、ひれ伏しなさい。」
「確かに自慢できるほどの舌は持っちゃいねえが、貴様に言われるほど下卑ちゃあいねえぜ。」
「さあ、ライオネルとローナさんも座って。」
今日は一年生の役員やアナベルさん、ミントたちもいる。
「しかし、たまには体を休めるのも必要だな。」
「俺も今日は男子率高めだが、これを明日からの糧にするぜ。」
「アナベルちゃんはともかく、後はグルングルンだけだからな。」
「まあローランド殿下、私では不満ですの?」
「いや、俺はギャル系が一番で2番目が清楚系、3番目が姐様でハイソ系は6番目なんだ。」
「意外だねえ。順番があったのか。」
「おいおい、俺だって一応は選んでるぜ。」
「だとよ。まずは髪型を常識の範囲内に収めてから出直して来な。」
「何て失敬な。まあ、私はミッチェル殿下が第一候補ですけど。」
「ウチの殿下は真面目だからなあ。ジェニファー嬢だって物静かで真面目だし、お前とは真逆だぞ?」
「あの子は・・・この学校に入ってからはまるで別人ですわ。」
「前は凄かった記憶がかすかにあるが、具体的にはあんまり知らねえな。」
「そうですね。僕たちもジェニファー嬢とお話しするようになったのは、殿下の側近になってからですもんね。」
「以前は強気で我が儘で、周囲はいつもピリピリしておりましたの。私以外のご令嬢で彼女を正面から迎え撃てる者などいませんでしたわ。」
「今はお前が独走だな。」
「あら?私は高貴な者としての振る舞いを徹底しているだけで、あのこのような常識を著しく逸脱するような真似はいたしませんわ。」
「そう言えば、強烈なご令嬢はこの国に少ないな。」
「同年代のそのようなご令嬢は全て、ジェニファーが叩き潰しましたわ。この学校に通っていない者や、領地送りにされて社交に出て来ない者も多いのです。」
「それは相当やったんだねえ。」
「あれでも公爵家ですから。彼女を除けば最も高貴で有能な私だけが残ったというのが、実際のところですわ。」
「どっちもジェニファー嬢には遠く及んでなさそうだが。」
「以前は互角でしたわね。今では圧勝していますが。」
「お前も早く大人になれよ。」
「ご実家を勘当される厨二病患者に言われたくはありませんわ。」
「まあまあ、準備ができたようだから、みんなで頂こう。」
こうして地面に敷いたシートで食事をする。
基本土足のこの世界の貴族には、とても珍しい食事風景である。
「キャロライン様、とても美味しゅうございます。」
「そうね。これなら神聖な王族から見ても及第点を与えられるわね。」
「ヴィヴィアン様、アナベル嬢、お誉め頂き光栄ですわ。」
「シェフは一流なんだな。」
「侯爵家は全てにおいて一流です。宰相家には石ころが混ざっていたようですが。」
「石ころに石ころって言われちまったぜ。」
「まだ石に拘ってるのかい?」
「いや、こっちはダイヤ、向こうは砕石だ。」
「ダイヤと思い込んでいる石ころほど、憐れなものはございませんわ。」
「本物を見たことねえなんて、憐れだな。」
この二人は本当にいいコンビだと思う・・・
「今日はこれを持ってきたんです。みんなでやりませんか?」
「バドミントンか。」
「テンコー、いい物持ってるね。」
みんなでバドミントンをやるが、ドウェイン・アナベル組はさすがのコンビネーションだ。
私はご先祖様と組んだが全く歯が立たなかった。
「やっぱりスポーツはいいね。」
「生徒会らしく健全だしな。」
「ローランド殿下以外はいつも健全だと思うけどな。」
「そう言えばそうだな。でも、やっぱり外と言えばビーチとバーベキューが最高だな。」
「もう夏は終わりだから、また来年だな。」
「本当に交流会が中止になったのは惜しいぜ。」
「そうですわね。あの場でお相手と出会う方もいたでしょうに。」
「二年連続で中止はやっぱり痛かったね。」
「ライオネル君、ローナさん、来年は君たちが主導するんだからよろしくね。」
「分かりました。会長。」
こうして、とても健全な生徒会役員交流会は盛会のうちに幕を閉じた。