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殿下、脱出する

 さて、今年の文化祭の出し物が決まったので、テンコー達は早速旧校舎でイリュージョンを試作する。



「ねえねえテンコー君。アタシもイリュージョンのお手伝いしたい。」

「もちろんだよ。ミントちゃんがいるとお客さんが倍増するからね。」

「それでそれで~、どんなことするの?」

「初級編と上級編の二つを作って、多くの人に挑戦してもらえるものを目指すよ。」

「すごいね~、みんなが喜ぶ顔を早く見たいね~。」

「任せてよ。去年を超えるものを作ってみせるからさ。」


 テンコーは早速校舎内に脱出用の箱を持ち込んで仮組みを行う。

 教室一つを丸ごと使った迷路型の施設だ。


「これは迷っちゃうね~。」

「そうだね。制限時間内に途中の数カ所に設置したゲートを通過しないと、爆発とともに扉が閉まって先に進めず失格になるんだ。」

「むずかしいね。」

「中は暗いから方向感覚も鈍るし、通った経路を思い出すのも一苦労だね。」

「中はただの通路なの?」

「突然光ったり音が出たり、ビックリする仕掛けを加えるよ。それと残り時間を知らせる音声を流せば、焦っちゃうね。」


「ミントは何をすればいいの?」

「失格者を外まで案内してもらえるかなあ?」

「うん、みんなでやる!」

「早速面白いことをやってるじゃないか。」

「さすがローランド殿下は目ざといね。」

「迷路か。なかなかいいアイデアだとは思うが、ただ迷路から出てくるだけじゃ、イリュージョンとは言わないだろう。」

「でも、イリュージョニストが脱出するときはイリュージョンを使うけど、お客さんが利用する場合は、使っちゃうと難易度が下がるからね。」


「まあ、こういうのは使ってみないと分からないからな。俺が試してやるぜ。」

「確かに、第三者の意見があると助かるね。」

「ミントもやるやるーっ!」


 こうしてローランド殿下が迷路脱出イリュージョンに挑戦するために、スタート地点となるボックスに入る。


「まず鎖で縛ってダイヤル式の鍵を掛ける。二桁しか無いから冷静さを失わなければすぐに外せるんだよ。」

「時間制限があるんだろ?」

「一分以内に箱から迷路に出ないと扉が封じられて失格だね。」

「じゃあ始めるか。」

「ミントちゃん、スタンバイできた?」

「いつでもOKだよ~。」

「じゃあ、スタート。」

 テンコーが開始ブザーを鳴らす。


「おいおい、こりゃ意外に焦るな。」

「そうでしょ。冷静になればどうってことないのにね。」

「それに、鎖は女子にとっては結構重いぜ。」

「そうか。軽い材質の物に変えることにするよ。」

「それにしても微妙に狭いな。テンコーも生前はこんなとこで脱出してたのか?」

「そうだよ。こういうのは小さいと迫力無いけど、大き過ぎて観客の視界の外になってしまうと何が起きているか理解してもらえなくなるから、絶妙な大きさってのがあるんだよ。」


 脱出通路は四つん這いにならざるを得ない高さで作られている。


「さすがはプロだな。」

「アタシたちも入るわよ~」

 飛び入りでフラワーさんとヴィヴィアンも乱入する。


「おいおい、並ぶなよ。狭くて身動きが取れないだろ。」

「妾を跪かせるなんて、不敬な迷路ね。」

「しかし、狭いし暗いしでなかなか進まないな。」

「もうすぐ三分だよー!」

「何?もうそんな時間か。最初のチェックポイントすら攻略できてないじゃないか。」

「ローランド、早くするのです。妾が失格など、許されるはずがございません。」

「いや、そうは言うけどなあ。去年のお化け屋敷より難しいぜ、これ。」

 ドン!という爆発音とともに、一斉に扉が落ちた。


「何だ、ここが第一ゲートだったのか。」

「ローランド、魔法で吹き飛ばしてしまいなさい。」

「おう、任せとけ。」

「ダメだよ、そんな危険なことしちゃ。」

「壊れたらまたイリュージョンで直せばいいんだろ?」

 と言うなり、別の爆発音が響く。


「うわっ!」

「そりゃ、そんなところで魔法を炸裂させたら、衝撃が跳ね返るよ。」

「下水道のようにはいかないんだな。」

「だが破壊できたぜ。」

「すでにイリュージョンとは別の何かだよ・・・」

 一行は続行を決めたようだ。


「おい、次は水槽があるじゃないか。」

「水中を潜って次に進むんだよ。」

「濡れるじゃ無いか。」

「大丈夫、水もイリュージョンだから水から出た瞬間に濡れてないことになるし、溺れる心配もないよ。」

「良く出来てるな。これで明るいと女の子と一緒に入る楽しみが増えるんだけどな。」

「どうせスケベなこと考えてるんでしょ。イリュージョンはそういうの抜きのジャンルだからね。」

「でも、アシスタントの子はやたら露出が激しいよな。」

「それ、手品だよ・・・」


 散々迷ったあげく、彼らは何とかゴールにたどり着く。


「シンプルだけど面白いな、これ。」

「そうでしょ。無心になって楽しめるでしょ。」

「ああ、上級編もあるのよねぇ?」

「そっちはまだ考案中だけど、後ろからモンスターが追いかけてくるとか、SASUKEみたいなステージを作るとか、色々アイデアはあるんだ。」

「壮大だな。最早旧校舎で出来る範囲を超えてるぞ。訓練場でやったらどうだ?」

「それいいね。観客席もあるしね。」

「いっそのこと、SASUKEにしろよ。」

「それ、イリュージョンじゃないし・・・」


 最終的に何が出来るんだろう・・・


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