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次の企み

 ここはロフェーデ王宮の一室。


 巨大で複雑に入り組んだ城の中でも人通りの少ない地下に、第一王子ロアン・バルクナーとその有力な取り巻きである宮中伯、アントン・フェルネがいる。



「先日のブランドン襲撃、見事に失敗したと聞いたが、どうなっておるのだ。」

「申し訳ございません、殿下。しかし、あれはあくまで小手調べに過ぎませんので、ご懸念には及びません。」

「確かに失敗しても足の付かないものではあるが、ヤツらの警戒心を煽ってしまったでは無いか。」

「いえ、相手の力を推し量るのが目的ですので。」


「貴様はもう少し使える人間だと思っていたのだがな。」

「これは心外なことでございます。相手を油断させるにはこのくらいが丁度良いのでございます。」

「ガードが堅くなったのにか?」

「常時全ての場所で万全な警戒を施すなど、どんな者であっても到底不可能です。敵を疲弊させ、油断を喚起するためにこういった小さな伏線を張ることは効果的なのでございます。」


「物は言いようだな。」

「ご心配には及びません。すでに手の者をブランドンに潜伏させておりますし、警備の者に対する調略も勧めております。」


「では、まだ要人暗殺は続けるのだな。」

「ええ、しかし、暗殺は敵国の揺さぶりには効果がありますが、最終目標である我が国の復権と敵国の崩壊への効果は限定的です。」

「そうだな。要人を少しばかり減らしたところで一国がそれだけで倒れる訳では無いからな。」

「ですので、それと並行して敵国を打倒する策を講じなければなりません。」

「ということは、暗殺は攪乱、あるいは陽動ということか。」

「ええ、ウィンスロットやバレッタの駐留軍による監視の目を欺くための囮程度のものとお考えいただければ。」


「それで、本命は何だ。」

「はい。魔王の復活にございます。」

「何?召喚儀式をやるのか。」

「はい。」

「しかし、あの禁術は徹底的に封じられ、今となってはその方法すら伝わっていないと聞くぞ。」

「かつて魔王の災禍に見舞われた各国においてはそうですが、この大陸にはそうで無かった国もいくつかございます。」


「そういった国では処理が徹底されていない可能性があるのか。」

「はい。候補としては当時、周辺国との国交を絶っていたナセル王国辺りを考えております。」

「あの小国か。」

「ええ、今でも鎖国状態の国ですが、あの当時よりは幾分、入国しやすくなっております。」


「そこに手の者を派遣するのか。」

「王宮や教会に潜ませれば、情報を抜いてくることは可能かと。」

「しかし、見た目や言葉の不自然さは隠せぬぞ。」

「そこは我がロフェーデが誇る諜報部隊の本領発揮でございます。」


「分かった。情報収集については私の名において承認しよう。しかし、あんな者を小官して大丈夫なのか?」

「召還先をウィンスロット若しくはバレッタとし、聖剣を持つウィンスロットの第一王子に討伐させます。」

「上手く行けば召喚された国は崩壊し、魔王とウィンスロットの王子が共倒れになるのだな。」

「はい。この策であれば、我がロフェーデは傷を負うこと無く敵国の戦力を減らすことができます。」


「しかし、失敗すれば世界が滅びかねんぞ。」

「そこは魔王との交渉次第ですな。」

「それが可能な相手なのか?」

「ご心配には及びません。前回の魔王との戦争で主導的な役割を担ったのはウィンスロット王国の前身、マグランド王国の勇者でございます。魔王の恨みは自ずと勇者に向かいますので、そこに交渉の余地はあると浅慮いたします。」

「そう上手くいけばいいのだがな。」

「利のある話なら必ず乗ってきます。」


「では、近日中に作戦の大枠をまとめ、我に説明せよ。納得出来るような内容であれば、それも正式に許可しよう。」

「陛下にはいかがいたしますか?」

「まだ知らせずとも良い。また余計なことをされても敵わんからな。」

「そうですな。いい加減な策をあっさり返された上に、外交でも大失策の末、このような屈辱を味わうことになりましたからな。」

「ああ、いずれは私が王位を奪って見せるが、今はまだ水面下で動く段階だと思っているからな。」

「御意。」


「では、その二つの策を同時進行で行う。くれぐれも慎重に、先走らぬように。」

「ご期待あれ。」


 こうして、追い詰められたロフェーデ王国の企みは次の段階に進む。


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