放課後の日常
本来、この学校の放課後は、アタシと攻略対象のためにある時間なの。
校舎内の各教室、屋外の訓練場や校舎裏、寄宿舎に至るまで、様々な場所に様々なイベントが隠されているのよ。
キャラクターごとにどこに出没するか、その頻度まで事細かく設定されていて、例えば宰相様のご子息が訓練場で鍛錬するなんて、とてもレアなの。その代わり、そんなレアなイベントに運良く遭遇できると、ラブラブゲージが大きく上昇するって感じかな。
攻略対象ごとに攻略の難易度も違うし、一番オーソドックスな王子様ルートは悪役令嬢が一番強烈に邪魔してくるから、ヒロインにとっては一番過酷なルートよね。
じゃあ、実際の学校はどうかというと、生徒会以外の生徒はさっさと帰宅してしまうみたいね。
特にご令嬢方はお茶会にご執心のようで、意中の相手を落とそうと躍起になってるわ。
そして、家を継ぐご令息や、その立場が微妙な人は予習復習に余念が無い感じかな。
アタシは教会でお勤めすることが多いけど、たまに自由な時間を楽しむこともある。
今日は、イリアと街でお買い物を楽しんでるわ。
「どう、学校は慣れた?」
「何とかなってるみたい。でも、イリアちゃんと同じクラスが良かったなあ。」
「私もルシアちゃんと一緒ならいいわね。」
「来年は同じクラスになれるかなあ。」
「でも、ルシアちゃんと同じって事は、Aクラスだから、相当難しいのよ。」
「そうなの?アタシ、別に何にもしなくても今のクラスなんだけど。」
「そりゃあ、聖女だからね。」
「聖女はBクラスになれないの?」
「歴代聖女はみんなAクラスで王族と婚約してるわよ。ルシアちゃんは興味無いの?」
「無理無理、絶対イヤ!」
「でも、ミッチェル殿下って評判いいわよ。」
「お城なんて自由が無いし、王子様に近付くってことは、漏れなくジェニファー様が付いてくるんでしょう。」
「そりゃそうだけど・・・」
「あんな凶暴な人、殿下に引き取ってもらわないと、他の殿方じゃ制御不能よ。」
「ルシアちゃん、言うわね。」
「さあ、そんなことよりお買い物よ。アタシ、可愛いアクセサリー買いたいんだけど。」
「それなら良い店知ってるわよ。付いて来て。」
イリスに紹介された店でキャッキャと騒ぎながら品定めする。
こういう店はそうしても年相応に騒いじゃうわね。
「ルシアちゃん、決めた?」
「うん。このブローチと髪飾りがいい。」
「じゃあ、私もブローチはお揃いにするね。」
「いいの?」
「もちろん。友達の印だよ。」
「さすがイリスちゃん。ありがとね。」
「じゃあ、次はお菓子食べに行こ。」
「行く行くっ!」
訪れたのは、ここブランドンの街で最近評判のカフェ。
「今日はすぐに座れてラッキーだったね。」
「いつもはもっと混んでるの?」
「酷いときは2時間待ちよ。ところで何食べる?」
「アップルパイ食べたい。」
そう、アタシは転生してから何でも食べられるようになったの。そりゃあ、手作りの料理を攻略対象に振る舞うイベントがあるくらいだから、アタシに食べちゃいけない物があるのは設定上、問題よね。
だから気にせず何でも食べてるの。特に今は小麦にハマってるのよ。
「ホント、ルシアちゃんいい顔してるね。」
「ありがと。これからもスイーツ巡り、付き合ってね。」
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ここは貴族学校の訓練場。
最近、放課後になるといつもここで一人、鍛錬してる。
本当はミッチェル殿下のお付きなんだから、殿下と共にいるべきなんだろうけど、ここで時間を潰して遅く帰宅すると、家での夜の鍛錬の量が減るから好都合なんだ。
ここなら父や騎士の目を気にする必要ないし・・・
それにしても、何故ここに足が向いてしまうのか、最初は不思議でならなかった。
何せ、鍛錬は心底嫌いなんだから。
でも、今は本当に良い場所を見つけられたなと思ってる。
無心で剣を振って、嫌な事を忘れて・・・
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俺の最近の日課はご令嬢とのお茶会だ。
所謂貴族版パリピってヤツだ。
今日は、一つ先輩のアリス・シートン嬢のお招きにあずかり、伯爵邸にお邪魔してる。 彼女も例に漏れず、なかなかの美女だから、ほんとテンション上がる。
「このような小さな屋敷に、殿下のような貴公子にお越しいただけるなんて、本当に天にも昇る気持ちです。」
「私も、見目麗しいアリス嬢にお誘いいただき、嬉しいのですよ。できれば、これからも親しくお付き合いいただければと思っております。」
「まあ、どうしましょう・・・私、まだまだ未熟ではありますけど、誠心誠意、最高のおもてなしをいたしましわ。」
「まあ、そこは気を楽にしてトークを楽しんでいただけるとありがたい。私のことも気軽にローランドと呼んで欲しい。」
「まあ・・・」
目の前のご令嬢が仰け反る。どうやら貧血か意識を失ったようだ。
ホント、俺様って罪深いよな。でも、このルックスならしょうがないか。
今日、頭ピンクレディちゃんに声を掛けたら、ちょっとビミョーな顔されたが、それ以外の20人ほどはすべて脈アリの反応だった。
とにかく、この調子で女友達100人できるかなチャレンジだ。