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気が合わない二人

 やっと一仕事終わって後は家に帰るだけね。


 男4人に私だけが紅一点の旅。

本当は嫌でしょうがなかったけど、教会からの命令には刃向かえないし、これが聖女の仕事だって言われると言い返せない。

 本当に正論をドヤ顔で言う人嫌い。じゃあ自分でやってみろよと言いたくなる。


 それだけに仕事終わりの今、疲れがどっと出てきた。

 もうすぐ麓だ。帰りはアタシだけ別の馬車がいいなあ、何て思っていると・・・



「しかし、ローランドも無茶するよな。」

「一応これでも王子だからな。バレッタ国内のことならどうにでもなる。」

「暴君一直線だな。」

「残念ながらそんなものに興味はねえな。俺の目標はハーレム王だ。」

「どっちにしてもバレッタの将来は暗いな。」

「そう言うなよ。明るく楽しい国を作ってみせるぜ。」


「しかし、本当にこの山だけはげ山なんだよなあ。」

「今でも呪いが残ってるってことなんだよねえ。」

「それなら参拝客にも悪い影響が出てるんじゃねえか?」

「そんな話は聞いたこと無いな。」

「じゃあ何が問題なんだろうな。」

「そうだね。植物は動物なんかと違い、呪いみたいなものの影響を受けそうにないけど。」

「それでも浄化する必要はあるのかもね。」


 アタシはその間、ずっと黙ってた。

 聖女の役割を果たすのは仕事として仕方無いことだけど、彼らと仲良くなる必要はないからね。


「じゃあ、せっかく聖女様がいるんだから、ここでやってもらえばいいじゃないか。」

「へっ?」

「確かにそうだな。麓の村には畑だってあったし、やってできないことはないんじゃないか?」

「ちょっと待ってよ。歴代の聖女だってできてなかったんだよ?」

「だからできないと決めつけるのは早いぜ。」

 全く、さっきの無茶といい、何で男子は無駄に軽いかなあ・・・


「ルシア嬢、狭い範囲でいいので、一度試してみてはいかがでしょう。」

「ミッチェル殿下までそうおっしゃられるのであれば、やってみましょう。」

 アタシもさすがに土地の浄化なんてやったことないけど、試すだけならいいよね。


 その場に跪いて祈りを始める。

 すると体から大量の魔力が吸い取られるような感覚に襲われた。

 辺りは先ほどと同じように光り輝いてくるけど、魔力の消費がハンパないわ。

 さすがは地球ね。人の小ささを実感したわ。


 実際にこの祈りで解呪ができるのかは分からないし、そもそも呪いかどうかも知らないけど、魔王復活による災禍に対する解決策の一つになってくれたら嬉しいわね。


 そう思いつつ麓に至り、馬車に乗って王都ブランドンを目指す。

 残念ながら、行き同様、男子と相乗りね。


「今年もいい自由研究になりそうだよ。ルシア嬢、ありがとう。」

「お役に立てて光栄です、殿下。」

「しかし、聖女の力って凄いんだな。実際に見たのは初めてだが、あれはとんでもない力だ。」

「そんなにか?」

「魔術のことならジェームズなんかじゃなく俺に聞いてくれよ。あの魔力量と密度、ハンパないレベルだぜ。」


「そうか、ローランド殿下は魔術も得意だったんだな。」

「おいおいニコラス。確かに魔術は女の次に得意なものに過ぎないが、それでもバレッタでは三本の指には必ず入るんだぜ。」

「女性に躊躇無く近付く厚かましさは圧倒的一位のようですね。」

「おいルシアちゃん。それはちょっと口が悪いぜ。」

「毎週、合コンと銘打っていかがわしい集まりを催していると聞きました。」

「単なるお茶会だよ。それにしても聖女様は見た目通り潔癖症なんだな。」

「私は潔癖というほどではございませんわ。ただ、あまりに不潔なものには目を背けたくなってしまいます。」


 ちょっと言い過ぎている自覚はあるけど、真正面に座るこの王子の存在は私の心に不快感を与え続けてるから、苛立ちが言葉に出てしまったのね。


「まあまあお二人とも。」

「そうだよ、王都に着くまでこの調子じゃ、堪らないよ。」

「そうだな。ミッチェル殿下やドウェインでなくても、痴話喧嘩は勘弁して欲しいぜ。」

「ニコラス様、痴話ではございません。教義に反する愚行への批難です。」

「前からヒシヒシ感じてたんだけど、ルシアちゃん結構俺に対して辛辣じゃない?」

「そりゃあ、皆さん大人ですからある程度は自己責任だと思います。でも、あなたの毒牙にかかる女性があまりに多い現状に、苦言を呈さない訳にはまいりませんわ。」

「毒牙ってことはないぜ。みんな楽しんでるし泣いてる子なんていない。」

「そうは言っても、そのほとんどは殿下の卒業とともに捨てられる運命なのですよね。」

「それを選ぶのは彼女たち自身だ。」

「皆、あなたの一人になりたい方ばかりではないのですか?」

「そういうご令嬢は多いだろうな。だが俺は一人に絞るつもりはないぜ。」


「最初から側妃を何人も抱えるつもりの殿下と一緒に居て、幸せを感じる女性などいるでしょうか。誰も幸せにできないのに、多くの女性を抱えることは、多くの女性の将来を奪っているのに等しいと思います。」

「全くしょうがねえ嬢ちゃんだな。そんな潔癖なことを気にしてたら、男女の関係なんて生まれないし育たねえぜ。」


「全くもって無秩序、倫理観皆無の堕落した思想ですね。」

「もう少し大人の余裕を持てってことだよ。」

「10代半ばの女性が皆、そういう考えならいいですね。」

「まあまあ、確かにローランド殿下はちょっとあんまりだと思うけど、王族と貴族家のご令嬢の間には、大なり小なり利害や思惑が絡むものだし、殿下と一緒になりたければ隣国に移住するっていう低くないハードルだってある訳だから。」

「そうだよルシアさん。あまり無体なことをしないように殿下には言っておくから、そのくらいで勘弁してやって下さい。」

「分かりました。ミッチェル殿下とドウェイン様がそこまでおっしゃるなら、ここは退きます。」


 アタシが空気を悪くしちゃったお陰で、馬車の中は無言になっちゃったけど、少なくとも尻軽殿下のルートは消したかったから丁度良かったわね。



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