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今年も自由研究・・・

 さて、交流会以降、校内は警戒態勢継続中ではあるが、残念なことに宿題は無くならない。

 ということで、自由研究をまたやらなければならない。


 昨年は誤って聖剣を抜いてしまい、今や愛剣と化しているが、今年こそは騒ぎを起こさないようにしたい。



「しかし、昨年のニコラス君の自由研究は将来に活かせない結果になったねえ。」

「そんなことないさ。騎士団でも役に立てて見せるぜ。それを言うならドウェインの筋肉こそ活かせねえぜ。」

「学者や政治家には必要ないなあ。」

「別にアサガオやメダカの観察でもいいんだろ?」

「それ、去年もいたけどB組に落ちてたよ。」

「それが原因じゃないと思うけどね。」

「ああ、アイツは俺と同じ匂いがするな。」

 確か、伯爵家の一人息子だったか・・・


「それで、二人は何するの?」

「俺は騎士団の馬を借りて、育て方の改良を研究する。」

「それ、一ヶ月でできるようなものなのかい?」

「餌や運動量を変えてみる。その変化は必ず出るはずだから、成功は間違い無いな。」

「ドウェイン君は?」

「僕はここ最近の国の収支を研究するよ。」

「随分実用的だけど、王家の者としては何だか結果を見たくないような題材だね。」

「そんな深刻に考えるほどの結果にはならないと思うよ。」


「そういう殿下は何をするんだ?」

「魔族についてだね。」

「文献が少なくて謎が多いよね。」

「そうなんだよ。意図的に隠されているのかなあ。」

「あれに遭遇して生き残る人間は少ないと思うぜ。」

「そうかもね。」

「じゃあ、僕たちも手伝うよ。」

「ドウェイン君はともかくニコラス君のは私に付き合ってる暇なんて無いんじゃない?」

「そうでもないぞ。団長に頼めば喜んで協力してくれるさ。」

「我が父ながら、その単純さには呆れるよ・・・」


 ということで、私たちは王宮図書館に足を運ぶ。

 しかし、秘密文書の棚を見てもめぼしい書物は見当たらない。


「伝承やおとぎ話以上のものは見つからないねえ。」

「どのくらい昔の話なんだ?」

「前回、魔王が復活したのは600年前で、魔族だって数十年に一度のレベルさ。」

「600年前というと、ウィンスロット王国ができる前ですよね。」

「前王朝が倒れたときに資料が散逸してしまったのかもね。」

「教会で調べた方がいいと思いますよ。」

「そうだよねえ。聖女様だって教会所属だし。」


「聖女様と魔王って何か関係があるのか?」

「魔王を封じることができるのは聖女だけだよ。聖剣で倒しても封じないと辺り一面死の大地だ。」

「へぇ、聖女様ってお飾りじゃなかったんだな。」

「超重要人物であることは間違い無いよ。」

 そして教会に行き、枢機卿から魔王と魔族について話を聞くことにした。


「これは殿下、ようこそお越し下さいました。先日は大変でしたな。」

「ええ、聖女様にも賊の鎮圧にご協力いただき、感謝しております。」

「それで、本日は魔族についてお話しすればよろしいのですかな。」

「はい。」

「実は教会にもさしたる文献が残っている訳ではないのです。ただ、この神殿には伝家の宝刀が保管され、討伐された魔王は体を切り裂き5箇所に分けて封印し、魂はコルビー神殿に封じております。」


「体を封じた場所は離れているのですか?」

「国内5箇所、いえ、1箇所は今はバレッタ王国領となっておりますな。」

「ああ、ウィンスロット王国成立前でしたものね。」

「それぞれ祠を建てたのですが、内乱時に所在不明になったものが2箇所あり、現在教会で管理しているものはバレッタのものを含めて3箇所となっております。」


「一番近いのはどこになりますか?」

「バレッタ王国にあるシャスタール山の中腹にある祠です。ここに魔王の装備品が封じられています。」


「ちなみに、他の祠にはどういったものが封じられているのですか?」

「コルビー神殿に魂と心臓、その近くにあるエルムズゲートに利き腕が封じられております。他に頭とその他の部分を封じた2箇所があったはずです。」

「なるほど、シャスタールの方がコルビー神殿より近いのですね。」

「はい。神殿はバレッタにほど近いのですが、街道からは外れており、お世辞にも便の良い所ではありませんからね。」

「分かりました。では一度、シャスタール山に出向いて見ることにします。」


 今のままでは研究成果があまりに乏しいため、私はバレッタに向かうことにした。


 しかし、滞在が長引くと始業式に間に合わないなあ・・・


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