対応策協議
その後、騎士団から取り調べの状況について情報が提供された。
やはり、彼らは雇われただけのごろつきで、依頼者は分からないようだった。
彼らは王都やその近辺を荒らす窃盗団やまちのごろつきで、今回集められた烏合の衆とのこと。
しかし、本校生徒を監禁し、見せしめに王族を含む何人かは殺害しても良いことと、金品の強奪は自由に行って良いという指示が出ていたようだ。
現在、王宮や騎士団で王都全体の警備体制の強化を検討しており、今日は学校でも緊急職員会議が行われている。
そして私たち生徒会も情報の整理と対応策を検討している。
「ローランド殿下は帰省の予定があったのに申し訳ない。」
「いや、俺的にはこの国の方が地元感覚だから問題無い。」
「まずはみんな、先日は協力してくれてありがとう。それと、夏休みなのにこんなことで呼び出してしまい申し訳ない。」
「構いませんわ。学校を、社会を遠因するのが私たち高貴な者の責任ですもの。」
「夏休み中というのは都合がいいのか最悪と言っていいのか微妙だね。」
「そうだな。寮生は管理が簡単だが、通学生は予定が把握できない。」
「通学生は各家の騎士が護衛するよね。」
「街中には騎士団も増えているし、貧民地区の巡回もかなり小まめにやってるそうだよ。」
「治安の向上と不審者の把握が何より重要だからね。」
「俺も明日から騎士団候補生として見回りに参加することになったぜ。」
「僕もさすがに団長の息子だから、行く事になった。」
「しかし、あの規模の賊を壊滅させたんだ。そんな急に勢力を取り戻して再度襲撃なんてことにはならないだろう。」
「でも油断は禁物だよ。」
「生徒会としてどうする?」
「生徒への周知は必要ないくらい、みんな身につまされているだろうからねえ。」
「それでも、危険回避のマニュアルづくりくらいはできますわ。」
「おおっ?今日はドリル以外の部分が回転してるじゃないか。」
「あら、成績はあなたを遥かに凌駕しておりますわよ。」
「世の中には勉強だけができる馬鹿ってのがいてだな」
「まあまあ二人とも。」
「キャロライン嬢の案はとても良いと思うよ。外出時、夜間、街中の危険地区、怪しい者に遭遇した際の対応などを再確認することは効果あると思う。」
「警備は騎士団がやってくれるそうだが、王都全体で厳戒態勢を敷くなら、そうは期待できないぜ。」
「そこはミントやテンコーたちに強力してもらおうか。」
「アイツら年中無休24時間営業だからな。」
こうして、生徒会から提案する内容がまとまっていく。
「それで、帰省する生徒は多いのかな。」
「逆に親御さんが王都に出てくるケースが増えると思うぞ。」
「旅の危険性が劇的に上がってるし、下級貴族家だと兵力しのものが心許ない。」
「王都の方がまだ安全と判断する家の多いだろうね。」
「特に貴族街は厳重に守るだろうからな。」
「それなら逆に、寮に残る生徒は少ないね。」
「ところで、黒幕は誰だと思う?」
「貴族に不満を持つ者か、我が国もしくはバレッタの継承問題か、はたまたロフェーデの悪事か。」
「どれもなかなか単純な相手じゃないな。」
「心当たりが多過ぎるしな。」
「しかし、王位継承争いはあまり考えられないな。両国とも現王は健在だし、今回襲撃された生徒にはいろんな派閥の者がいただろ?」
「でも殿下の殺害は指示されていたようだよ。」
「ローランド殿下もだがな。」
「そうだね。私とローランド殿下の両方を害したら、最早継承権争いどころの話じゃなくなってしまう。下手すればウィンスロットは滅亡するよ。」
「単純に身代金目的という線も考えられるぞ。」
「どうせなら大きな商人を襲った方がリスクは低いよね。
「そうだな。政治的な絡み抜きに犯行をするならば、警護の緩い貴族家を狙い撃ちした方が成功率が高い。」
「王制に反対する者は?」
「そういう主張をする人間が普段から活動している実態にあるならだけど、現状でそうれを動機に活動する組織は無いと考えているよ。」
「なら、残るはロフェーデだな。」
「あそこは武装解除後に軍備が大幅に縮小されたし、賠償金の支払いで窮地に立ってるから動機は十分だけど、やり方が雑過ぎない?」
「様子を見ただけじゃないか?」
「今回はこちらの対応力を見ただけということかい?」
「今回、生け捕りにしたのは使い捨て同然の男たちだし、黒幕がいるのは確実だからね。」
「もし、次があるなら・・・」
「ああ、そして今回よりはるかに用意周到に来るなら、それは平民ごときで何とかなる組織力じゃないってことだよ。」
「そうなれば、貴族や他国の関与が疑われるレベルになるということだね。」
「まあ、最初からその想定で動いて損は無いけどね。」
「分かった。絶対に油断できない相手だと思って対応して欲しい。」
「分かった。」
こうして、夏休み中も校内の警戒を解かない方向で決まった。