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心の準備

 ようやく夏休み。


 婚約解消が決まって以降、両親との関係は以前のようにはいかないけど、私も前世では大人だったから、それほどダメージはない。

 むしろ、今の両親が家族だという実感の方が薄いのだ。それに何より、断罪の危機が去ったことによる安堵感の方が遥かに上回っているわ。


 夏休み中にもお妃教育は組まれているけど、もう形ばかりのものなので、スケジュールにはかなり余裕がある。

 そして、今まで避けていた行事への出席もこれからは安心して参加することができる。

 むしろ、ミッチェル殿下の新たなお相手が決まるまでは、政治的混乱を避けるために、蜜月をアピールすることが、私に出来るせめてもの償いだと思って気持ちを新たにしているわ。


 でも、卒業後に修道院に入ると決めたからには、みんなと共に過ごせる時間は一年半しか残されていないから、この長期休暇はとても重要なの。


 両親に対する思い入れはあまり無いけど、今まで迷惑ばかり掛けてきたブレンダ、メアリー、ドロシーに対してはそうじゃないわ。

 彼女たちには最大限、恩返ししないとおけないと思ってるの。

 明日は修道院の視察を行う予定だけど、今日は私たち四人でピクニックよ。

 とは言っても、安全上の理由から、カーリー子爵邸の庭だけどね。



「ここに来るのは何年ぶりかしら。」

「初めてお嬢様にお会いしてすぐくらいに、一度お見えになったことがございますね。」

「そうね。あなたもご家族と離れることを余儀なくさせて、随分寂しい思いをさせてしまったわね。」

「いいえ、良き想い出ばかりです。メアリーさんもドロシーさんも座って下さい。」

「ありがとうございます。ブレンダ様。」


 今日は公爵邸で料理を準備しましたが、温かい飲み物は子爵邸で準備していただきました。

 夏の日差しはとても強いですが、木陰に入ると爽やかです。

 酷暑の東京とは比較にならないくらい、ここブランドンの夏は毎日ピクニック日和です。


「お嬢様、準備は私がやります。」

「ドロシー、今日は私にさせてちょうだい。」

「それはあまりに恐れ多いことです。」

「みんなで楽しく。これが今日のモットーです。とにかく良い思い出を一つでも多く作りたいのです。」

「それにしても豪華ですね。」

「そうですね。メイドではとてもこれほどのお料理を食す機会はございません。」

「遠慮してはなりませんよ。美味しい食事をし、それを皆で語り合うのもまた、楽しい事なのですから。」


「さあ、ブレンダもこれを。」

「お嬢様がお作りになられたサンドイッチですね。」

「腕によりを掛けましたの。さあ、召し上がれ。」


 料理と言うには何ともおこがましい気もしますが、これでも一人暮らしの経験がありますので、簡単な料理くらいはできます。


「お嬢様とこうしていられる時間が限られているというのは、とても寂しいことでございます。」

「メアリー、それはまだ秘密ですからね。」

「申し訳ございません。気を付けます。」

「今は良いのよ。じゃあ、楽しみましょう。」


 楽しむと言ってもみんなで流行のスイーツやアクセサリーの話をするだけなんだけど、今はこういうのが楽しいし、とてもありがたいと思う。



~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/~/ 


「はぁーっ、もう2年の夏休みかぁ。」

 そうぼやきたくなるのも仕方無いわ。

 ここまで自分的には上手く事を運んできたつもりだけど、これから先が問題なのよねえ・・・


 既に春に戦争が起きたわ。

 予兆として起きるはずの疫病は何故か起きてないけど、これからヒロインと攻略対象をくっつけるための強制ストーリーが誰かのルートに入るまで続くと考えた方がいいわね。


 起こるのは三つ。疫病と戦争、そして魔王復活ね。

 戦争はかなり早いタイミングで起こってしまったけど、起こるタイミングは一定では無いはずだから、こういうパターンもあるのね。


 魔王復活に関しては、冬休みに神殿の巡礼と封印の強化を行ったわ。

 本当は全ての祠を巡礼して封印の儀を行うべきだけど、それぞれが遠方だし、所在不明の祠が2箇所あるって聞いたわ。

 多分、先回りして舞おう復活イベントを阻止させないための仕掛けね。


 疫病もどのタイミングで起きるかは分からないけど、必ず原因不明の病に冒される人が少しづつ出てくるはじだから、この予兆をキャッチすれば大きな被害は出ないはず。


「でも、3年間誰のルートにも入らないってことが本当に可能なのかしら・・・」

 ゲームならバッドエンド、若しくはノーマルエンドになるんだけど、現実に同じ事が可能なのかは正直わからないわ。

 アタシだって死にたくは無いし、この世界を実際に生きている一人の人間に過ぎないから。


 でも、選択肢が狭いのよ。実質尻軽王子とJだけなんだから。

 そりゃあ、命を落とすよりは彼らとゴールする方がマシなんだけど、それって幸せと言えるの?なんて考えがどうしても頭から離れない。


 もし3年間上手く状況をコントロールしてノーマルエンドにたどり着けば、その後は聖女としての平穏な暮らしが約束されているんだろうから、どうしてもそちらを夢見てしまう。


「でも、世界が破滅しないように、ある程度は攻略対象に協力しないとだね。」

 本当に気が進まない。もう思春期に入ってると思うけど、未だに男子に対してコイ語頃なんて抱けないし、ぶっちゃければキモい。


 そんな相手に、少し間違えればルートに入ってしまうような講堂を起こすのはかなり勇気がいることなのよ。みんなも分かってくれるでしょ?


「さあて、次は何がくることやら・・・」


 ちょっと気持ちがサゲ気味だけど、心構えだけは必要ね。

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