初めての授業
さて、今日から本格的な授業が始まります。
事前に予習をしたのですが、レベル的には中学校程度だと感じました。
ゲームの対象年齢からも、妥当な設定だと思います。
でも神学やピアノなど、現代人には馴染みの無い教科も多く、いくら元のジェニファーに素養があるといっても、私には初めての体験ですので、気を引き締めて取り組まないといけません。
そして、記念すべき最初の授業は、デラニー先生の担当する国史です。
「では、この前王国歴6年に起こったサハドールの戦いについて、誰か説明できる者はいるかね。」
さすがに初日最初の授業、初っぱなの質問に手を挙げる者はいない。
「では、誰も手を上げないようだからジェニファー君、答えられるかね。」
「はい、ブラン王朝末期、コーネル4世の圧政に耐えかねた市民が一揆を起こしたことが発端となり、現王室の祖であるジルヴァン・アーネット将軍が軍と民衆を糾合し、ブラン王国軍と戦いました。この一連の戦乱の趨勢を決した戦いです。」
「さすがですね。端的に答えてくれました。そうです。これにより、現在の王国が成立した。およそ200年前のことです。」
良かったです。及第点の答えだったようです。
これも、前のジェニファーがきちんと勉学に励んでいた結果でしょう。
その後も、結構なペースで授業が進んでいきます。油断していると大変ですね。
と思っておりましたら、斜め前の生徒が寝ています。
胆力のある方だなと思っていましたら、どうやら宰相様のご子息、ニコラス・ラトリッジ様です。
攻略対象の中では知的で紳士的な方だと存じ上げていおりましたが、体調が優れないのでしょうか。
隣の席に座るドウェイン様も心配そうです。
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初日最後の授業は、魔法基礎学ね。
アタシが教会で光の魔法を使っているように、生徒の中にもすでにある程度、魔法が使える子もいるはず。現にあのキモ王子だって設定上は天才魔術師ってことだし。
でも、ほとんどの子はまだあまり魔法を使えないから、まずは座学ってことね。
アタシは神父さんに基礎を習っているから、大丈夫だと思うけどね。
今は、黒板に大きく描かれた魔方陣の説明をジェームズ先生が行っている。
「では、この魔法式について、キャロライン嬢、ここに来て説明できますか?」
随分、生徒に質問する先生ね・・・
「はい。この外周の円は効力の大きさを表し、大きいほど強い魔法です。中は必要な術式で、色は魔法属性を現します。」
「では、術式の中身については分かるかな?」
先生はキャロライン嬢の後ろに回って何かを教えている。
「これは・・・私の知らない術式ですので、恐らく火以外のものです・・・」
「そうだね。これは風属性の術式だ。キャロライン嬢が直接知っておく必要は無いものだよ。では、席に戻っていいよ。」
何だろう、この違和感。
ジェームズ先生って、冷静な大人の教師って感じで、結構好感度高めのキャラだったのに、実物の先生はクソ田村そっくりのエロジジイ教師の予感がする。
「では次に、この術式の詠唱方法について、ルシア君、説明できるかな?」
「ゲッ!最悪・・・」
小さいながらつい、声が出てしまった。
ヤだなぁ、何で女子しか当てないのよ、このスケベ!
「さあ、こちらに来て、術式を差しながら説明できるかな?」
もちろん、私は魔法を常用してるから知ってる。でも、そこに行くのはヤダ。
「は・や・く!」
もう何なのよ、コイツ。
仕方無く教壇に行き、魔方陣の説明をする。
「実際は、発動後からゆっくり時計回りにまわってるけど、この上に描かれているのが属性と色彩、次の単語が魔法の形状、後は威力、効果の及ぶ範囲、効果を除外する条件、発動完了後の条件、最後が発動のトリガーです。」
「う~ん、完璧ね。どこで習ったのかな?」
「教会です。」
「もしかして、聖女?」
「そう呼ぶ方もいます、ね・・・」
「さすがだね。これからもよろしく。」
嫌です。
久しぶりに虫唾が走った。
クラスで一番キモかったアイツの10倍濃縮くらいゾッとした。
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「ニコラス君、疲れてるの?」
「いや、絶好調だぞ。」
「なんか、授業中ほとんど寝てたような気がするんだけど。」
「人間、眠たくなくても寝られるし、寝られる時に寝ておかないと、いざというとき無理が利かないぞ。」
「戦場の兵士みたいなことを言うね。」
「長距離輸送の馭者なら常識だと思うぜ。」
「まあ、次期宰相には必要な能力かも知れないねえ。」
「だが、宰相なら部下をこき使えばいいだけじゃないか?」
「お父上はそうじゃないみたいだよ。」
「トップは人を使うものだ。」
まあ、そうとも言うが、もう少し授業中は起きてた方がいいと思うぞ。